医学における「自主権」と「自己決定権」とは? わかりやすく解説

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医学における「自主権」と「自己決定権(身体的自主権)」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 09:15 UTC 版)

オートノミー」の記事における「医学における「自主権」と「自己決定権身体的自主権)」」の解説

医療倫理#自主尊重原則」および「生命倫理#原則」も参照 医学的には、患者個人的な自主性自己決定権オートノミー)を尊重することは、医学における多く基本的な倫理原則医療倫理生命倫理研究倫理参照)の1つとされている。自主オートノミー)とは人が自分自由な意思決定をすることができるべき、というものである。この自己決定権オートノミー)を尊重することは、インフォームド・コンセントシェアード・ディシジョン・メイキング中心的なコンセプトである。しかしながら今日医学実践において不可欠であると考えられてはいるものの、この考え方過去第二次世界大戦後数十年ほどの間に発展したのである。トム・ビーチャム(英語版)とジェイムズ・チルドレス(英語版)は、「Biomedical ethicsの諸原理Principles of biomedical ethics 1979)」(現「生命医学倫理」)において、「4つの原則患者自主尊重原則respect for a patient's personal autonomy) - 個人として尊重し、その自己決定権尊重する患者自分治療拒否または選択する権利がある。 与益原則(善行)(beneficence) - 医療者患者最大利益のために行動すべきである。 無加害原則(無危害)(non-maleficence)- 害悪加えない。または、"実用的には" - 害よりも善を促進する公平・正義原則(justice/equality)- 乏しい健康資源分配、および誰がどの治療を受けるかの決定に関する平原則。 を提唱したその本では、ナチスドイツ後の、ニュルンベルク裁判は(T4作戦ほか)人体実験非倫理的な人体実験)の被験者身体的インテグリティ個人的自主権オートノミー)を侵害した恐ろしく搾取的医学的ナチス・ドイツの人体実験」の詳細説明している。これらの事件は、医学研究への自発的参加重要性強調したニュルンベルク綱領のような医学研究における保障措置要求促すものとなったニュルンベルク綱領は、研究倫理に関する現在の多く文書ヘルシンキ宣言リスボン宣言ベルモント・レポート等々)の前提となっていると考えられるようになった患者自主性尊重強調する動きは、医療において自主性損なわれやすく、構造的に患者脆弱性生まれる事を指摘された事から生じたのである。そして、患者自主尊重医療組み込まれるようになり、患者は受ける医療サービスについて個人的な決定下すことができるようになっていった。ただ、自主性はいくつかの側面と、医療運営影響与え課題残されている。患者扱われる方法は、患者主体性自主性弱体化させる可能性があり、このため患者とのコミュニケーションが非常に重要なものとなる。患者医療従事者との間の良好な関係は、患者自主性尊重されることを確実にするために、明確に定義され指針などの文書かを図る必要がある人間人生の他の状況同じように、患者としても他の人の管理下に置かれることを本来は望まないのです。 患者自主性研究文脈においてのみ適用されるわけではない医療を受ける患者は、医師支配されるではなく自主性尊重して治療を受ける権利持っている。これを父権主義パターナリズム)の問題と呼ぶ。父権主義患者にとって全体的に良いのであることを意図してはいるものの、患者自主大いに、容易に妨げことがある。そのため、確立された「治療的関係(英語版)(Therapeutic relationship)」を通して患者医師の間の思慮深い対話通じたコミュニケーションが、患者意思決定への参加者とし、より良い結果もたらすもとなる。 自主性オートノミー)にはさまざまな定義があり、その多く社会における個人文脈置いている。また、「関係自主性relational autonomy)」は、人は他人との関係を通して定義されることを示唆するものです。また、支持され自主性supported autonomy)」 は、特定の状況において長期的に自主性を守るために一時的に妥協すべきことがあることも示唆している。他の定義では、その人権利いかなる状況下でも妥協されるべきではない封じ込められたそして自給自足的存在としてその人イメージするものなどである。 現代医療がより大きな患者自主性移行するべきか、それとも伝統的な父権主義的(パターナリスティック)なアプローチ固守べきかについても、異なる見解存在する例えば、現在行われている患者自主性尊重は、治療における誤解文化の違いといった欠陥悩まされているということ、そして専門知識を持つ医療専門家は、父権主義に基づくべきである、とする医療者側から議論などである。他方患者自主性改善させていくためには、患者医療従事者との間の関係理解増加させていく必要がある、というアプローチ提示されている。 トム・ビーチャム(英語版)とジェイムズ・チルドレス(英語版)はインフォームド・コンセント7つ要素として、しきい値要素能力自発性)、情報要素開示推奨理解)と同意要素決定承認)を提示した。ただ、ハリー・フランクフルトのような何人かの哲学者ビーチャムとチルドレスの基準は不十分で、意図的に行動する上で自己の欲求について高次価値観形成する能力行使する場合においてのみ、その行動自主的オートノミー)なものである考えることができると主張している。 特定の特殊な状況では、政府は、人の命と幸福を維持するために、身体的インテグリティ保護する権利一時的に無効にする権利有する場合がある。このような制度は、「支持され自主性supported autonomy)」の原理用いて説明することができる。一例として、メンタルヘルスにおけるユニークな状況記述するために開発され概念(例としては、強制摂食死亡者摂食障害拒食症、または一時的な治療精神病性障害のある人の抗精神病薬による治療物議を醸す場合もあるが、「支持され自主性supported autonomy)」の原則は、市民の命と自由を守るための政府の役割一致している。Terrence F. Ackerman はこれらの状況での問題強調し医師または政府がこの一連の行動をとることによって、患者自主性対す病気制約効果として価値矛盾誤って解釈する危険を冒す主張している。 アメリカ合衆国においては1960年代以来医者医学部にいる間に医師生命倫理学コース受講するという要件を含む、患者自主尊重する意識高め試みなされてきた。しかしながら患者自主尊重促進することへの大規模な取り組みにもかかわらず先進国における医学対す国民不信残ったまである

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