北海道仕様車(500番台)
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「国鉄キハ54形気動車」の記事における「北海道仕様車(500番台)」の解説
キハ54 519(台車交換済)の走行音 釧網本線4726D列車川湯温泉駅 - 緑駅間(2011年12月31日) この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。 酷寒地で使用する区分で、1986年に29両 (501 - 529) が製作された。過酷な気象条件の中での運用に備え、随所に耐雪、凍結対策が施される。排雪走行や動物との衝突などに備え、運転台下にはスカートが装備される。 製作の経緯 北海道の非電化路線は冬期の積雪と列車頻度などの条件により、走行する列車自身が線路上の積雪を除去する、排雪走行の能力が要求される。国鉄時代には北海道向けの2機関搭載両運転台車は長く製作されず、キハ22形、キハ40形などの1機関搭載車を地域輸送に使用していた。これらの形式は出力に余裕がなく、冬季は冗長性確保のため、2両以上の編成で運行する対応がとられた。輸送実績に比しコストが過大となることから、この運用方法の解消は長年の課題であった。 1986年には、急行列車の削減で余剰となったキハ56形を改造した2機関搭載の両運転台車、キハ53形500番台が深名線などに投入された。しかしこれは、種車の経年等からも、長期の使用を想定しうるものではなかった。 仕様 客室窓は小型の一段上昇式で、車内側にFRP枠の内窓を備えた二重窓である。客室扉は 850mm 幅の引戸で、凍結対策として、ドアレールとステップに機関廃熱利用の温水ヒーターを装備する。開閉はドア横の押しボタンによる半自動仕様である。ドアチャイムはドア付近の天井に設けられ、閉まるときのみ鳴動する仕様である。 車体には赤16号を主体として下部にクリーム10号と灰茶8号の細線を配したテープを貼付する。 一般仕様車(501 - 526)の製作当初の座席配置は、出入台付近を四国仕様と同一のバケット式ロングシートとしたセミクロスシートとして長距離乗車に適応させた。クロスシート部はバス用座席に類似するヘッドレスト独立型の軽量設計である。モケットの色はオレンジ色が基本であるが、所々に黄色を点在させてアクセントとしていた。 長距離運用に備え、トイレを設置する。当初はFRP製ユニット式(和式)の垂れ流し式であったが、後に洋式便器を使用する循環式に改造され、汚物タンクは床下に設置するスペースがないため床上に追設された。水タンクは屋上に設置され、圧縮空気やポンプを使用しない重力給水式である。 冷房装置は装備せず扇風機のみを室内に設置し、屋上には押し込み式通風器を配置する。暖房装置は機関冷却水を利用した強力な仕様である。 駆動系は、1台の機関を停止し、1機関での走行も可能な仕様とされた。これは排雪対策を要しない夏季の運用コストに配慮した仕様であったが、使用線区の線路条件に鑑み、実際の運用では通年にわたって2機関を使用する。台車は軸ばねにゴム被覆を施したDT22F形で、コイルばねへの雪噛みによるばね機能喪失(線間密着)を防止する。 急行仕様 (527 - 529) 旭川 - 稚内間の宗谷本線急行「礼文」専用車として製作され、0系新幹線電車の廃車発生品である転換クロスシートを当初から装備した。窓割りは一般仕様車と同じなので、窓と座席が合っていない。車内の座席番号表示はない。識別のため、窓上に赤帯が追加されている。 この3両は「礼文」での運用を主とし、間合いで快速・普通列車運用にも充当されたが、2000年3月ダイヤ改正で「礼文」が廃止され、以後は他のキハ54形500番台同様に運用されている。
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