動画像プロセッサとアルゴリズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 06:10 UTC 版)
「榎本忠儀」の記事における「動画像プロセッサとアルゴリズム」の解説
プログラム方式プロセッサ動画像プロセッサ 1987年、動画像符号化プロセッサ(Video Signal Processor; VSP)を世界に先駆けて開発し、その実用化に成功した。VSPは動画像を実時間で符号化・復号化するプロセッサで、今日の4K・8Kテレビ放送や移動通信システム(スマートフォーン、等)に必須のデバイスである。本VSPはProgrammable VSP(P-VSP)と呼ばれ、様々な規格、方式、応用に対応するため、プログラム方式が採用されている。また、 P-VSPには多様な符号化処理に必要な回路がフル搭載されている。本P-VSPは予測符号化を処理する3段パイプライン加算系ユニットおよび変換符号化を処理する2段パイプライン積和系ユニットで構成されている。パイプラインの1段目は絶対値演算機能付きALU(米国特許 第4,849,921号)、(カナダ特許第1,257,003号)、乗算回路、正規化回路、2段目は累算回路、シフタ、3段目は最小値検出回路で構成される。さらにデータメモリ(RAM、ROM)、等も搭載されている。12個のP-VSPを搭載したモジュールを3台用いてビデオ信号処理プロセッサシステムを構築した(1987年)。本システムを14.3 MHzで動作させると、H.261に準拠するテレビ会議用CIF画像を実時間処理できる。P-VSPの発表を機会に多数の企業がVSP開発に参入し、ディジタルマルチメディア時代が始まった。 動画像プロセッサの高速化 1989年、変換符号化に必須な畳み込み演算を効率よく処理するため、SSSP(Super high Speed Signal Processor)を開発した。本SSSPの開発に当たり、冗長二進数高速積和演算回路(米国特許 第4,985,861号)を発明し、3次のブースデコーダを用いた乗算回路や微細Bi-CMOSプロセス技術を採用した。この結果、本SSSPは当時の世界最高速度(200MHz)で動作することに成功した。1991年、動画像符号化処理に必要な回路をフル搭載したS-VSP](Super-high-speed VSP)を開発した。上述のSSSP、PLLクロックドライバ、ダブルバッファ方式の2ポート画像メモリ、等を搭載することにより、大量画像データの高速ベクトル演算を可能にし、250MHz動作を達成した。本S-VSPを2個もちると、上述のビデオ信号処理プロセッサシステムが構築できる。 並列・パイプライン符号化処理方式動画像プロセッサ 動画像符号化は画素ブロック(m画素×n画素)毎に処理される。従来の符号化は、1個の画素ブロックに対して、まず予測符号化を施し、次に変換符号化を施していた。時系列プロセスなので、処理に時間が長かった。これを解決するために、1個の画素ブロックに予測符号化を施している時、これと並列に1個前の画素ブロックに変換符号化を施し、かつそれぞれの処理をパイプライン化するブロック単位の「並列・パイプライン符号化処理方式」(米国特許 第5,394,189号)(1995年) (特開平05-300494)を開発し、VSP3(Video Signal Parallel Pipeline Processor)に適用した(1993年)。本方式はVSPを構築する上で避けることができない基本特許であり、業界標準技術として広く定着している。本方式の導入により、VSP3の符号化処理時間は大幅に短縮され、動作速度は大幅(300MHz)に高速化された。。なお、VSP3を1個で、前出のビデオ信号処理プロセッサシステムが構築できる。 高速化符号化アルゴリズムと動画像プロセッサ 「全探索法」による動きベクトル検出の課題を解決するため、最適動きベクトルが検出された時点で探索を自動的に停止させ、VSPを高速化する「中断法」(特開平10-271514)(1998年)を世界で初めて開発し、MPEG-2対応のVSPに適用した。中断法は探索処理を停止すると同時に、電源も停止できるので、VSPの低電力化に有効である。中断法は2000年代初頭に国内各社が開発した携帯TV電話向けVSPに採用され、VSPの急速な普及に貢献した。対象画素ブロックに対して本中断法を複数回繰り返す「多重中断法」(2007年)を開発することにより、動きベクトル検出をさらに高速化した。「動的電圧・周波数スケーリング方式 (Dynamic Voltage and Frequency Scaling Technique; DVFST)」を有効活用できる「適応的中断条件算出法」(特開2005-130424)(2005年)を発明し、低消費電力VSPを開発した。4K、8Kテレビ放送に向けVSPを超高速化するために、探索ポイント数を極限まで削減した「高速サブサンプリング法」(2009年)を開発した。さらに本アルゴリズムを改良した「帯状探索窓法」(特開2013-026966)(2013年)および多入力差分絶対値和回路を開発した。帯状探索窓法は、処理測度を「全探索法」の約400倍に高速化し、回路の消費電力を全探索法の1/16,000に削減した。さらに、処理測度を帯状探索窓法より約2倍高速化した「額縁形探索窓法」(2013年) も開発した。
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