体育会系と日本の社会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/15 23:22 UTC 版)
公務員組織においては特に顕著に見られ、国家公務員・地方公務員ともに上司の職務上の命令に忠実に従わなければならないことが公務員法で明確に規定されており、公務員には上司の適法な職務上の命令に服従する義務があることから、公務員組織は厳格な上意下達型の命令系統を重視する体育会系の組織文化である。学生生活における体育会系的な文化は日本の一般社会においても顕著である。日本における職業高校(商業高校、工業高校など)が公立高校であっても野球を始めスポーツ大会で好成績を収めている理由の一つに「(上下関係の大切さと強靭な肉体と精神力を鍛える)運動系部活動を推奨し企業にとって役に立つ人材を輩出する」ことを第一としているとみられる(他に全県1学区であり県内であればどこからでも入学可能という実情もある)。日本の企業もやはり年功序列を基礎としているため、体育会系的な価値観の者は「礼儀正しい」、「強い精神力がある」、「目上の者を立てる」などの好印象を持たれることが多く、古くから組織の構成員として好まれ、採用されてきた。ただし、自ら考えることなく監督やコーチ、上級生の言うことに唯々諾々と従い、大学や高校などの学校組織に守られながら学生生活を送る体育会系学生の中には精神的に弱い者も多いという評価もあり、近年は“体育会系である”という要素がプラスに働く傾向が1970年代から1980年代の頃に比べて弱まってきているという見方がある一方、まだまだ体育会系学生は企業から根強い人気があり、体育会限定の合同企業説明会も開催されている。特にブラック企業と呼ばれる会社組織では、指示された達成困難な非常に高い目標に従順に向かっていく体育会系気質が好まれている。 体育会系は肉体的かつ精神的タフさ、打たれ強さ、忍耐力を備え、さらに「上下関係をわきまえ、たとえ本心では嫌だと思う命令でも従う忍耐力」をもち、勝ちパターン、成功パターンをつかんでいると肯定的に評価する人もいる。一方、時には社会規範を超えてすら上司や組織に対する忠誠心は高いこと、同僚や部下に対する配慮が体育会系以外の社員より意識が低いことから、社内環境を悪化させる危険因子にもなり得ると指摘するひとも多い。そういった背景から、さまざまな価値観の人たちと協力、広い視野で客観的に判断して、ゼロから何かをつくりあげるといった、創造性やクリエイティビティに対する高い資質を求めるようなところには不適格であると判断されるケースが目立つ。また経営学者で組織論が専門の太田肇・同志社大学教授は、そのような組織や上司に従順かつ忠実で、しっかり序列を守るような体育会系の人間を「イヌ型人間」と表現している。 不条理な精神論がまかり通り、ルールや上の命令には絶対服従といった「体育会系」の体質をもつ組織が存在する。 運動能力のほかに特筆する能力のない人材が集まりやすいといった傾向がある。そうした組織では部下が酷使され、短期的な生産性は向上するものの、末端の構成員が「成績を上げるためだけのコマ」になってしまう可能性が高く、「すぐに結果が出せないコマ」は潰されることになる。そのため、長期的観点でみると、生産性が下がるケースも往々にしてある。部署内においても、体育会系の上司の下で働く部下は「上の命ずる業務を遂行するだけのコマ」にされる傾向がある。しかし、その一方で優秀な部下があらわれると、「空気が読めない」など理不尽なレッテルを貼りたがる。結果主義を謳いながら、優秀な人材な人材があらわれると潰しにかかるといった、会社にとって不利益な他罰主義は、体育会系特有の二面性といえる。結果、仕事環境が悪くなり、優秀な人材ほど退職していき、社会問題となっているブラック企業の体質形成の温床となる。 体育会系のなかでも、学業成績優秀者のグループは、体育会系と同じ括りで扱わずに、一般社会では文武両道のエリートとして採用される場面がある。これらの人材は、体育会系に多くみられる価値観とは反するもの、多様性の理解、革新的な内容でも抵抗感なく受け入れるなどといった、建設的思考に長けている傾向がある。特に優良企業と言われている会社では、このような人材を指す意味として便宜上、「体育会系」という言葉を使用する。これは会社に残存する、保守的な体育会系に配慮しているという側面もある。中小企業でも根性論や結果重視といった、昔ながらの体育会系の気質が強い人材は、会社のメリットよりも、会社が被るデメリットのほうが看過できない時代背景となっており、採用を見合わせるケースが増えた。現在では、体育会系への優遇措置を撤廃した企業も多く、このような人事である場合、文武両道の人材は体育会系には含めず(社風や人事判断によって含まれる場合もある)、エリート、キャリア採用などとされる。 「ブラック企業」も参照
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