代表資格ルールの策定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/24 14:56 UTC 版)
「サッカー選手の代表資格」の記事における「代表資格ルールの策定」の解説
2004年1月、FIFAは代表資格に関する新たなルールを定めた。具体的には、選手が21歳の誕生日の前に申請した場合に限り、選手が代表資格の対象国を変更することを可能とするというもので、このルールを最初に申請したのは、2004年アテネオリンピックのサッカー男子予選を兼ねたU-21欧州選手権予選でU-21フランス代表(英語版)として活動した経験を持つ、アルジェリア代表のアンター・ヤヒアだった。近年この要件に基づき代表資格の変更を申請した選手の例としては、 U-19イングランド代表の経験を持つナイジェリア代表のソーン・アルコや、U-21イングランド代表の経験を持つスコットランド代表のアンドリュー・ドライバーがいる。 2004年3月、FIFAは代表資格に関するより広範な方針を変更した。これは、カタール代表やトーゴ代表など、ブラジル等の別の国で生まれ育ち、新たに(元々のルーツを持たない)別の国の市民権を得た上でその国に帰化させて代表入りさせる傾向が高まっていることに対応していると報じられている。 FIFAで緊急に行われた委員会での評決では、選手が出生地でない国の代表資格を得るためには、選手とその国との間の「明確なつながり」を示すことができなければならないと規定した。具体的には、 選手にその国生まれの親もしくは祖父母がいること 選手がその国に少なくとも2年間の居住歴を有していること のいずれかを満たすことを条件として示している。 2007年11月、FIFA会長(当時)のゼップ・ブラッターはBBCの取材に対し、「この茶番劇を止めなければ、ブラジルからヨーロッパ、アジア、アフリカへの選手流出に対処しなければ、2014年または2018年のワールドカップに参加する32チームのうち、16チームにはブラジル人選手が所属することになってしまう」と述べている。 ルーツを持たない選手が代表資格を得るための居住要件は、代表チームが関与する競技の完全性を維持するためのブラッターの取り組みの一環として、2008年5月のFIFA総会で2年から5年に延長された。 現在のFIFA規約では、III.代表チームでプレーする資格 (Eligibility to play for representative teams) の第7条「新しい国籍の取得」(Acquisition of a new nationality) として、第1項に次のように記されている。 Any player who refers to art. 5 par. 1 to assume a new nationality and who has not played international football in accordance with art. 5 par. 3 shall be eligible to play for the representative teams of the new association only if he fulfils one of the following conditions:a) He was born on the territory of the relevant association; b) His biological mother or biological father was born on the territory of the relevant association; c) His grandmother or grandfather was born on the territory of the relevant association; d) He has lived on the territory of the relevant association:i) for players that began living on the territory before the age of 10: at least three years; ii) for players that began living on the territory between the age of 10 and 18: at least five years; iii) for players that began living on the territory from the age of 18: at least five years. 規約第5条第1項の規定に基づき新たな国籍を取得し、第5条第3項の規約に基づいて国際大会に出場したことのない選手は、以下のいずれかの条件を満たす場合にのみ、新たな代表チームでプレーすることが出来る。 a) その選手が当該協会の当該協会の管轄区域で生まれたとき b) その選手の実の父親または実の母親が当該協会の管轄区域で生まれたとき c) その選手の祖父または祖母が当該協会の管轄区域で生まれたとき d) その選手が、当該協会の管轄区域において、以下の居住歴があると認められるときときi) 10歳に達する前から居住歴がある選手:少なくとも3年 ii) 10歳以降18歳に達する前から居住歴がある選手:少なくとも5年 iii) 18歳以降に居住歴がある選手:少なくとも5年 — FIFA、FIFA STATUTES September 2020 edition、p.76 なお、2016年時点での規約では、上記のd)のうち、i 及び ii の規定は存在しなかった。 この基準に従えば、それまで代表経験のない(あるいは育成年代でのみ代表経験のある)選手はいくつかの代表チームを選択することが可能であり、代表チームのスタッフ(監督やスカウト)が勧誘に動くことも珍しくない。例えば、2011年6月には、スコットランド代表監督(当時)のクレイグ・レヴェイン(英語版)は、スコットランド人の父親を持つU-17アメリカ代表(英語版)のジャック・マクビーン(英語版)にスコットランド国籍を選択するよう勧誘していたことが明らかになっている。また、ガレス・ベイルは、祖母がイギリス人であることからイングランド代表として活動できるか尋ねられたが、最終的には彼の生まれた国であるウェールズ代表として活動することを選択している。 2009年6月、FIFA総会で、代表資格変更に伴う育成年代での代表活動経験に関する年齢制限規定を削除する動議を可決した。この議決は、FIFA規約の適用を変更する規定の第18条に記載されている。 国際親善試合への出場は、選手を特定の国の代表として活動を縛り付けるものではない。例えば、ジャーメイン・ジョーンズはドイツ代表として国際親善試合数試合に出場したが、2010年にアメリカ代表としてデビューしている。また、ティアゴ・モッタは、ブラジルの育成年代の代表として活動し、招待チームとしてU-23代表が参加したCONCACAFゴールドカップにも出場経験があるが、その後はイタリア代表として活動を続けた。ジエゴ・コスタはブラジル代表として国際親善試合2試合に出場した が、スペイン代表のオファーを受けて2013年に出場資格を変更 、2014年と2018年のFIFAワールドカップにはスペイン代表として活動した。ギリシャ生まれで幼い頃にオーストラリアに移住し、両国で育成年代の代表経験を持つアポストロス・ギアンヌは2015年にギリシャ代表としてトルコとの親善試合に臨み(UEFA EURO 2016予選にもギリシャ代表として招集されたが、出場機会は無し)、その後2016年3月にオーストラリア代表としてデビューした 。FIFAの常任委員会である選手ステータス委員会 (FIFA Player's Status Committee) がこれらの判断を下す責任を負っている。 FIFA規約での「両親・祖父母の出生歴」に基づく代表資格は生物学的な子孫に限定されており、養子縁組は考慮されていない。一方で、ラグビーユニオンの国際競技連盟であるワールドラグビーは、選手が関係国の法律に基づいて合法的に養子縁組された場合、養子縁組の親を通じて子孫を追跡することを規定している。この規定は、選手本人は養子縁組されていないものの、一方または両方の(生みの)親が養子縁組された場合にも適用される。
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