代表詞作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/28 05:30 UTC 版)
巫山一段雲白文書き下し文訳文春去秋來也 春去り 秋来たるや 春は去り秋がやって来た 愁心似醉醺 愁心(しゅうしん) 酔醺(すいくん)に似たり 物寂しい気持ちは酔いが身に沁(し)むよう 去時邀約早回輪 去る時 約(やく)を邀(むか)えて 早(つと)に輪(りん)を回(かえ)す 別れる時に、また会う約束をすると、早々と車輪を返して去って行く 及去又何曾 去るに及(およ)びて又(ま)た何ぞ曾(かつ)てせんや あなたが去る時に今まで何かこんなことってあったかしら 歌扇花光黦 歌扇の花光 黦(えつ)たり わたしが歌舞に使う扇の花柄は黝(くす)んで色(いろ)褪(あ)せ 衣珠滴淚新 衣珠(いしゅ) 滴(したた)って 涙 新たなり 服に縫い付けた珠飾(たまかざ)りが滴り落ちるように涙もまた新たに滴り落ちる 恨身翻不作車塵 恨(うら)むらくは 身(み) 翻(ひるがえ)って車塵と作(な)り 残念なのは、変身してその車輪に付く土ぼこりとなって 萬里得隨君 万里 君に随(したが)うを得ざらんことを 万里の長途(ちょうと)、ずっとあなたに付いて行けないこと 注釈 ^ 「巫山一段雲」は題名ではなく詞調名(詞牌)。 ^ a b 「也」で「秋が来た!」と強調している。 ^ a b 「醺」は字義通りには「ほろ酔い」だが、ここでは「酔醺」で、酔ってふらついて気分が悪いことを言うようだ。 ^ a b 「邀約」で「(また会う)約束をする」。 ^ a b 反語。「今までこんなこと何もなかったのに!」。 ^ a b 黒ずんだ黄色。黒ずみ色(いろ)褪(あ)せた様子。 ^ a b 残念な気持ち。心残りな気持ち。 ^ a b 「身翻」で、生まれ変わる。または変身する。 ^ 付き従う。付いて行く。 ^ 長い道のり。 南郷子白文書き下し文訳文畫舸停橈 画舸(がか) 橈(かい)を停(とど)む 彩られた船が櫂を停める 槿花籬外竹横橋 槿花(きんか) 籬外(りがい) 竹(たけ) 横たわる橋 槿(むくげ)の花咲く垣根の外、竹を架け渡した橋のあたり 水上遊人沙上女 水上の遊人 沙上の女 水上の船に乗った旅人に河原の砂の上の女性が 迴顧 迴顧(かいこ)し 振り返り 笑指芭蕉林裏住 笑って指さす 芭蕉(ばしょう) 林裏(りんり)に住めり、と 笑いながら芭蕉の林を指をさす、あの中に住んでいる、という様子で 注釈 ^ 「南郷子」は題名ではなく詞調名(詞牌)だが、「江南の郷村」という意味に解せば、内容と一致している。このような場合を「本意」と呼ぶ。 ^ 「舸」は大きな船。 ^ 『歴代名詞選』(1965年), pp.116-117では“槿の花咲く垣根の外の竹の生えている辺りに「よこたわ」って架けられた橋”としているが、『全唐五代词释注』(1998年), pp.1139-1140 (籍成山 撰稿)では“槿の花咲く垣根の外に「竹を架け渡して作った橋」”としている。 春光好白文書き下し文訳文花滴露 花 露を滴らせ 花はしとどに露を滴らせ 柳搖煙 柳 煙(けむり)に揺(ゆ)る 柳は霞(かすみ)の中で揺れる 艷陽天 艶陽(えんよう)の天 日の煌めく麗らかな春の空 雨霽山櫻紅欲爛 雨 霽(は)れ 山櫻(さんおう) 紅(くれない) 爛(らん)せんと欲し 雨が上がって晴れた空に、山桜が灼(や)けるように真っ赤に咲き乱れて 谷鶯遷 谷鶯(こくおう) 遷(うつ)る 鶯(うぐいす)は谷渡りする 飮處交飛玉斝 飲む処 交〻(こもごも)玉斝(ぎょくか)を飛ばし 飲み会では、玉(ぎょく)の盃を投げ交わすように乾杯し合い 游時倒把金鞭 遊ぶ時 倒(さかしま)に金鞭(きんべん)を把(と)る 遊ぶ時は、気ままに黄金(こがね)なす鞭を手に騎(の)り回す 風颭九衢楡葉動 風は九衢(きゅうく)に颭(そよ)いで 楡葉(ゆよう) 動き 四方八方に広がる街角の至る所に、風がどっと吹きつけ楡(にれ)の葉が揺さぶられ 簇靑錢 青銭を簇(むら)がらす 緑青ふいた銅銭のような青い楡の実を吹き溜(だ)まらせる 注釈 ^ 「春光好」は題名ではなく詞調名(詞牌)だが、「春の明るい景色の麗らかさ」という意味に解せば、内容と一致している。このような場合を「本意」と呼ぶ。 ^ a b 「山桜」と訳すが、元より日本の山桜ではなかろう。赤い花が美しい山に生えるバラ科の植物であろう。 ^ 谷間の鶯。鶯(うぐいす)と言っても日本のウグイスではなくコウライウグイス。黄鸝(こうり)・倉庚(そうこう)・黄鶯(こうおう)・黄鳥(こうちょう)などとも呼ぶ。 ^ 谷間を行き来する。 ^ ウグイスが鳴きながら谷間をあちこち行き来する事を指す表現。本来、日本のウグイスに対して使い、コウライウグイスのことではないが、同様の動きを指しているので、使用してみる。 ^ 「〻」は踊り字(繰り返し記号)の1種で、二の字点や揺すり点などという。 ^ 「斝」は古代の酒器、杯の1種。ここでは、「玉斝」で杯の美称。 ^ 「金鞭」は、鞭の美称。「倒に金鞭を把る」というのは、思い思いに鞭を手に馬を騎り回す様子を表す。 ^ 楡は良く街路樹として植えられる。 ウィキソースに欧陽炯の作品の日本語訳があります。
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