不正投球
不正投球
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 21:54 UTC 版)
日本球界では2000年6月のブライアン・ウォーレン投手を巡る騒動のように激しく糾弾される不正投球だが、メジャーリーグベースボール (MLB) ではルール上の厳しい罰則は規定されているものの、実際の適用に関しては甘い。 古くから下記のような不正投球は禁忌とされるほどの行為でなく「見破れなかった相手が悪い」「やるならバレないように使うのが礼儀」程度に認識されており、不審を感じた相手チームから激しい抗議があろうとも、審判が現行犯で証拠を押さえない限り、退場処分が下ることは滅多に無い。同じ不正行為でもドーピング問題のそれとはファンや関係者たちからの扱いにも大きな温度差がある。 最も顕著な例として、ゲイロード・ペリーは以下で述べるスピットボール、エメリーボールの常習者として現役時代から非常に有名な選手だったが、両リーグでサイ・ヤング賞を受賞した史上初の投手となり、野球殿堂にも表彰され、2005年にはサンフランシスコ・ジャイアンツ時代の背番号36が球団の永久欠番となった。他にも、2008年に引退を表明したトッド・ジョーンズも現役時代から「自分は松ヤニを使っている」と公言するなど、メジャーリーグにおいて不正投球はしばしば行われている。 エメリーボール(emery ball) 砂・やすり等の道具や爪等でボールに傷を付けて投げる。滑らなくなることで激しい回転がかかり、空気抵抗にも影響し大きく曲がるようになる。 スピットボール(spit ball) 指やボールに唾を付けるなどして投げる。唾の代用として、帽子の庇に塗るなどで隠し持った松脂や髭剃りクリーム、自らの後ろ髪等に多めに付けた整髪用ジェル、耳たぶの中や裏に隠し塗ったワセリン、口内に仕込んだ歯磨きペーストなどの粘液などを付ける。滑ることでナックルボールのような無回転状態に近くなって不規則な変化が起きたり、直球と逆の回転をさせて下方向の揚力を生み、大きく落ちる変化をつけられる。 MLBでは当初不正ではなかったが、スピットボールによる死亡事故が発生したことにより、1920年から禁止とされた。ただしその時点で持ち球としていた選手(バーリー・グライムスなど)には例外的に認められた。 日本でも慶應義塾大学などで活躍した新田恭一が1930年頃、このスピットボールを投げていたと古い文献に記述されている。竹中半平著『背番号への愛着』には、新田を「日本では最後であり唯一であったかも知れぬスピット=ボール投手」と書かれている。 マッドボール(mud ball) グラウンドの土を付け、これを滑り止めとして投げる。マッドボールを投手に与えないよう捕手にワンバウンドキャッチされたボールは速やかに交換されるが、わずかに付いただけの場合は捕手が主審に判断を求め、問題なしと判断されれば土を拭って使用続行となる。 シャインボール(shine ball) 使いすぎて磨り減りピカピカになったボールの事で、試合中にたびたび新しいボールへ交換するようになった現在のプロの試合では見られない(ファウルボールはスタンドに飛び込んだもの以外、全てボールパーソンが回収する)。ボールが磨り減ると空気抵抗が変わるため奇妙な変化をすることがある。
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