一つ目小僧とは? わかりやすく解説

ひとつめ‐こぞう【一つ目小僧】

読み方:ひとつめこぞう

額に目が一つしかない妖怪関東東北地方では事八日(ことようか)の夜に来るといって、目の多いかごを門口高く立てて追い払う行事をする。目一つ小僧大眼(だいまなこ)。


一つ目小僧

読み方:ヒトツメコゾウ(hitotsumekozou)

目が一つしかない小僧姿の妖怪


ひとつめこぞう 【一つ目小僧】

日本の妖怪伝承一つ一つ目一本脚で、山野通りすがりの人を脅かすと恐れられるが、柳田国男は、祭祀一般人区別するため片目つぶして神の一族とした時代名残とする。山の神鎮守神片目のことがあり、やがて神から妖怪変わっていったともする。→ 片目

一つ目小僧

作者舟崎克彦

収載図書舟崎家の怪談
出版社パロル舎
刊行年月1996.7


一つ目小僧

作者岡本綺堂

収載図書半七捕物帳 巻の4 〔詳註愛蔵版
出版社筑摩書房
刊行年月1998.9

収載図書半七捕物帳 2 半鐘の怪
出版社春陽堂書店
刊行年月1999.11
シリーズ名春陽文庫

収載図書半七捕物帳 3 新装版
出版社光文社
刊行年月2001.11
シリーズ名光文社時代小説文庫


一つ目小僧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/13 16:00 UTC 版)

水木しげるロードに設置されている「一つ目小僧」のブロンズ像

一つ目小僧(ひとつめこぞう)は、日本妖怪の真ん中にが一つだけある坊主頭の子供の姿をしている。

概要

妖怪かるた「した出し小僧のとうふなめ」の絵札[1]

一般にこれといって危害を加えるようなことはなく、突然現れて驚かすだけという、妖怪の中でも比較的無害な部類に含まれる。そうした意味では性格的にも行動的にもからかさ小僧に通じていると言える。特に悪さを働かない故か、絵として描かれるときも、多くの場合はかわいらしい、もしくはユーモラスなデザインになる。

妖怪かるたには、一つ目小僧が豆腐を持っている絵の描かれているものがあるが、これは妖怪研究家・多田克己によれば、「豆粒(まめつぶ)」が「魔滅(まめつ)」に通じることから、一つ目小僧がを嫌うと伝承されていたはずが、いつしか一つ目小僧の好物が豆腐だという伝承にすり替わってしまったものとされる。また、これが豆腐小僧の伝承に繋がったともいう[1]

小僧(修行中の)の姿であるのは、第18代天台座主良源の化身とされる比叡山の妖怪・一眼一足法師に由来するとの説がある(一つ目入道を参照)[2]

古典の一つ目小僧

黄表紙における一つ目小僧。北尾政美夭怪着到牒[3]

江戸時代の怪談、随筆、近代の民俗資料には一つ目小僧の名が多く見られるが、特に平秼東作による『怪談老の杖』にある以下の話がよく知られる。江戸四谷に住んでいた小嶋弥喜右衛門という男が、所用で麻布の武家の屋敷へ赴き、部屋で待たされていたところ、10歳ほどの小僧が現れて、床の間の掛け軸を巻き上げたり下ろしたりを繰り返し始めた。弥喜右衛門が悪戯を注意したところ、小僧が「黙っていよ」と振り返り、その顔には目が一つしかなかった。弥喜右衛門は悲鳴を上げて倒れ、に驚いた屋敷の者により自宅へ運ばれた。その後に屋敷の者が言うには、その屋敷ではそのような怪異が年に4、5回はあるが、特に悪さはしないとのことだった。弥喜右衛門も20日ほど寝込んでいたものの、その後は元気を取り戻したという[4]

一つ目小僧は屋内より屋外に現れることが多いという。『会津怪談集』によれば、会津若松の本四ノ丁付近である少女が8、9歳ほどの子供に出会い、「お姉さん、お金欲しい?」と聞かれて「欲しい」と答えると、子供の顔には目が一つしかなく、一つ目に睨まれた少女はそのまま気絶してしまったという[5]。また『岡山の怪談』によれば、岡山県久米郡久米南町上籾今井谷に一口坂という坂道があるが、かつてにそこを歩くと青白いとともに一つ目小僧が現れ、腰を抜かした者を長いで一口嘗めたといい、これが一口坂の名の由来とされる[6]

また、兵庫県丹波篠山市に伝わる伝承「篠山の怪談七不思議」では、晩秋のの夜に番所橋に顔の真ん中に丸い一つ目が光る身の丈3尺足らず(約90センチ)の小僧が現れ、これに遭遇すると武士でも怖気がするという怪談が伝えられている。この怪談は「酒買い小僧」の名称で伝わる[7]

百怪図巻』『化物づくし』『化物絵巻』などの江戸時代の妖怪画には、「目一つ坊」の名で描かれている[8]。また、奥州では、「一つまなぐ」と呼ばれていたとされる[9]

落語にも一つ目の人々(子供も含む)の語りは登場し、『一眼国(いちがんこく)』の演目では、江戸から120、130里ほど北の原っぱに一つ目の人を目撃したと聞いた香具師が「捕まえて見世物に出せば、儲けになる」と出発し、一つ目の子を見つけて連れて帰ろうとするも、騒がれ、大勢の人々に取り囲まれ、逆に捕まってしまう。全て一つ目の人々であり、「こいつ不思議だねぇ、眼が二つある」、「早速、見世物に出せ」といった落ちで終わる[注 1]

民間信仰の一つ目小僧

佐脇嵩之百怪図巻』より「目一つ坊」

関東地方では旧暦2月8日12月8日事八日の夜に箕借り婆と共に山里から出てくるという言い伝えがあり、目籠を軒先に掲げて追い払う行事をする。また地方によっては籠にヒイラギを刺すが、これは一つ目を突き刺す意味とされる[10]。この事八日はかつては物忌として仕事をせず、家に籠もっている地方が多かったが、この祭事の家籠もりがいつしか、化け物が現れるから家に籠もると解釈されるようになり、その化け物が一つ目小僧や箕借り婆だという説もある[11]

また関東地方の伝承では、一つ目小僧は事八日に毎年帳面を持って家々を回り、戸締りが悪い、行儀が悪いなどの家の落ち度を調べ、家族の運勢を決める[12]、または疫病神へ報告して災難をもたらすともいう[13]。この際、一つ目小僧は12月8日に家の落ち度を帳面に記入して道祖神に一旦預け、2月8日にそれを受け取りに来るとされることから、この帳面を焼き払う行事として、神奈川県横浜市瀬谷区では道祖神の仮の祠を作って1月14日どんど焼きで燃やし[14]静岡県伊豆地方では正月15日の道祖神祭で道祖神像を火の中に入れて焼くなどの風習がある[12]。こうすることで、一つ目小僧が2月8日に道祖神のもとへ帳面を受け取りに行くと、預けてあったはずの帳面がなくなっているので、災難から逃れられるのだという[12][13]

異形の神

民俗学の泰斗、柳田國男は「妖怪とは神が零落したもの」という考えをベースに、一つ目小僧は山の神の零落した姿であると説いた。『妖怪談義』によると、「山の神は眇(すがめ=斜視、やぶにらみの意)である」という伝承を持つ地域があり、眇は俗に「目が一つ」という言い方をされることから、これも山の神霊を起源とするものであるという[15]。また、古の神祭の生贄として供された片目片足を損じられた者の存在も示唆しており、猟師きこりによって山中に祀られた自然神にまつわる伝承には一つ目一本足の異形の神の姿形が垣間見える。他に、たたら製鉄に従事する者に、炉を見続けることによって片目を失った者が多くいたことから、製鉄従事者が信仰する単眼神、天目一箇神との関連を指摘する説もある。

単眼症

先天的な奇形単眼症と呼ばれるものがある。母胎のビタミンA欠損などにより、大脳が左右に分離することができず、これに伴い眼球も1つとなる。神経系、呼吸器などの異常により胎内もしくは生まれてまもなく死亡する症状である。ビタミンAは緑黄色野菜のほか、動物性の食物に多く含まれ、もともと食肉文化の少なかった日本ではビタミンAの不足は珍しいことではなかったのかもしれない。こうした背景にくわえて、一つ目小僧が子供の姿であることや小坊主の衣装であることなどから、単眼で生まれた赤子をこう呼んだものが始まりとも考えられる[16][17]

神奈川県座間市では、1932年(昭和7年)に市内の墓地から、眼窩が一つしかない頭蓋骨が掘り出されたことがあり、行き倒れの末に野犬の襲撃などで命を落としたものと推定され、供養のために「一つ目小僧地蔵」が建造され、一つ目小僧の伝承と結び付けられて後に伝えられている[18]。この頭蓋骨の主も、同様に単眼症の者とする見方もある[17]

脚注

注釈

  1. ^ なお、地理上、江戸から北に120里=約470キロは、岩手県秋田県にあたる。

出典

  1. ^ a b 多田 (1998), p. 49.
  2. ^ 多田克己 著、京極夏彦、多田克己 編『妖怪図巻』国書刊行会、2000年、164-165頁。ISBN 978-4-336-04187-6 
  3. ^ アダム・カバット校注・編『江戸化物草紙』小学館、1999年、43頁。 ISBN 978-4-0936-2111-3 
  4. ^ 平秼東作 著「怪談老の杖」、柴田宵曲 編『奇談異聞辞典』筑摩書房ちくま学芸文庫〉、2008年(原著宝暦年間)、551-552頁。 ISBN 978-4-480-09162-8 
  5. ^ 川口芳昭編『会津ふるさと夜話』 2巻、歴史春秋社、1978年、28頁。 
  6. ^ 佐藤米司『岡山の怪談』日本文教出版〈岡山文庫〉、1979年、42頁。 NCID BA7625303X 
  7. ^ 『日本怪異妖怪事典近畿』笠間書院、2022年、216頁。 
  8. ^ 村上 (2005), p. 5.
  9. ^ 柳田國男『日本の伝説』(15版)角川文庫、1977年(原著1953年)、65頁。 NCID BN11519610 
  10. ^ 村上 (2005), pp. 274–276.
  11. ^ 村上 (2005), p. 310.
  12. ^ a b c 柳田 (1933), p. 86.
  13. ^ a b 多田 (1990), p. 281.
  14. ^ 瀬谷区の民話と昔話 第十五話:一つ目小僧”. 横浜市瀬谷区 区政推進課. 2008年12月25日閲覧。
  15. ^ 柳田 (1977), p. 180.
  16. ^ 山田敏之 (2007年6月29日). “第2回 『一眼国』と複眼思考 解説編”. 落語に学ぶ. ソニー教育財団. 2007年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年12月5日閲覧。
  17. ^ a b まめこぞうの旅 座間の歴史探検 第34話 一つ目小僧地蔵”. あなたの知らない座間がある 0462.net. 座間市商店会連合会 (2007年1月8日). 2009年12月5日閲覧。
  18. ^ 座間市文化財調査委員会執筆編集『座間市文化財調査報告書』 第9集、座間市教育委員会、1984年、96-97頁。 NCID BN03631400 

参考文献

関連項目


一つ目小僧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 01:49 UTC 版)

時間エージェント」の記事における「一つ目小僧」の解説

『HEIBONパンチDELUXE1965年11月掲載

※この「一つ目小僧」の解説は、「時間エージェント」の解説の一部です。
「一つ目小僧」を含む「時間エージェント」の記事については、「時間エージェント」の概要を参照ください。

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