ルネサンス期から19世紀までのグリモワール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 07:33 UTC 版)
「グリモワール」の記事における「ルネサンス期から19世紀までのグリモワール」の解説
『ソロモンの鍵』(Clavicula Salomonis) ソロモンに帰せられる魔術書の中でもイタリアやフランスで最も広く流布したもの。知られている最古のものは15世紀に書かれたギリシア語版であり、『ソロモンの魔術論』または『ヒュグロマンテイア』(水占術)と呼ばれている。その後ラテン語版とイタリア語版が作られた。ヘブライ語版から翻訳されたとも称されているが、17世紀より古いヘブライ語版の存在は確認されていない。17世紀から19世紀にかけて出回っていた「ソロモンの鍵」と称するさまざまなバージョンの写本は数知れない。今日よく知られているマグレガー・マサース編の『ソロモン王の鍵』(The Key of Solomon the King、1889年)は、大英博物館所蔵のフランス語とラテン語の複数の写本から悪魔的夾雑物を排して再構成したものである。 『レメゲトン』(Lemegeton) 「ソロモンの小鍵」(Clavicula Salomonis)という副題の下に四種または五種の魔術書をまとめた、いわばソロモン魔術の選集。17世紀に出回ったとされ、大英図書館スローン文庫に17世紀の英語写本数点が保管されている(同ハーリー文庫には18世紀の写本がある)。構成は「ゴエティア」「テウルギア・ゴエティア」「パウロの術」「アルマデル(Almadel)の術」「アルス・ノトリア」となっている。 「ゴエティア」(Goetia) 『レメゲトン』の第一部で、ソロモン王が使役したという72の悪霊の説明を主な内容としている。各悪霊のシジルが収録されているのも大きな特徴である。「ゴエティア」は20世紀初頭にアレイスター・クロウリーによって『ソロモン王のゴエティアの書』(The Book of Goetia of Solomon the King)という題で出版された。これはマグレガー・マサースが大英博物館で転写したものが基になっており、英訳と称されているが実際には原本も英語で書かれている。 『アルマデル奥義書(英語版)』(The Grimoire of Armadel) 天使と悪魔を含む多数の精霊のシジルを収めた、17世紀のキリスト教的魔術書。パリのアルスナル図書館所蔵のフランス語写本(MS 88、ラテン語原題 Liber Armadel)を基にマグレガー・マサースが英訳したもので、訳者の死後60年以上経た1980年に出版された。Armadel が何を指すのか今となっては不明だが、当時の魔術において権威ある名前の一つであったようである。17世紀には魔術の種類にトリテミウスの術、パウロの術、ルルスの術などと並びアルマデル(Armadel)の術を挙げる者がおり、Armadel の名を冠する魔術書はいくつか存在する。その一つは大英図書館所蔵の『アルマデルによる真のソロモンの鍵』 で、フランス語版の『ソロモンの鍵』の一種である。なお、『レメゲトン』の第四部「ソロモンのアルマデル」の Almadel は上述の Almandel の異形であるが、Armadel の一字違いであり、日本語においては Armadel と混同されやすい。 『隠秘哲学第四書』(Fourth Book of Occult Philosophy) 『隠秘哲学』(第一書「自然魔術」、第二書「天界魔術」、第三書「儀礼魔術」)において自然魔術を論じたネッテスハイムのハインリヒ・コルネリウス・アグリッパは、儀式魔術について具体的な記述を残さなかったが、後にアグリッパの『隠秘哲学』の第四書と称する儀式魔術書が『遺作集』に収録された。これをアグリッパが悪霊と関わる儀式魔術を行っていた証拠と考える者もいたが、若い頃アグリッパの弟子であった医師ヨーハン・ヴァイヤーはこれを偽書と断言した。 『アルバテル(英語版)』(Arbatel) 『アブラメリンの書』(The Book of Abramelin) 『大奥義書』(Le Grand Grimoire) 『真正奥義書』(Grimorium Verum) 『教皇ホノリウスの奥義書(英語版)』(Le Grimoire du Pape Honorius) 『教皇レオの手引書(エンキリディオン)(英語版)』(Enchiridion Leonis Papæ または L'Enchiridion du Papa Léon) 『大アルベール(英語版)』(Le Grand Albert) 『小アルベール(英語版)』(Le Petit Albert) 『ネクロマンティア』(Necromantia) ロジャー・ベーコンに帰せられる魔術書。 『ヘプタメロン』(Heptameron) アバノのピエトロに帰せられる魔術書。魔法円の準備や天使の召還について書かれている。マルグリット・ド・ナヴァルの同名の著作(エプタメロン)とは別の書物である。 『ルキダリウス』(Lucidarius または Lucidarium Artis Nigromantice) アバノのピエトロに帰せられる魔術書。土占いに関する記述が含まれている。12世紀にドイツで書かれた同名の書物(ルシダリウス)およびその基となったホノリウス・アウグストドゥネンシスの著作(エルキダリウム)とは別の書物である。 『百王』(Centum Regnum) 書名の人数については「四十三」(The Forty-Three Kings of Spirits)または「五十」となっている場合もある。 『黒い雌鶏(英語版)』(The Black Pullet) 『モーセ第六・第七の書(英語版)』(Sixth and Seventh Books of Moses) 『モーセの剣(英語版)』(The Sword of Moses または Harba de-Mosha) 『マアセ・メルカバ(英語版)』(Ma'aseh Merkabah) 『ガルドラボーク』(Galdrabok) 近世アイスランドの魔術書 『自然魔術と非自然魔術』(Magia Naturalis et Innaturalis または Faust's Höllenzwang) ファウストに帰せられる魔術書。ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタの『自然魔術』とは別の書物である。 『ヌクテメロン』(Nuctemeron) エリファス・レヴィ『高等魔術の教理と祭儀(英語版) 祭儀篇』に補遺として収録されていた魔術書(日本語訳版では省略されている)。テュアナのアポロニオスに帰されている。
※この「ルネサンス期から19世紀までのグリモワール」の解説は、「グリモワール」の解説の一部です。
「ルネサンス期から19世紀までのグリモワール」を含む「グリモワール」の記事については、「グリモワール」の概要を参照ください。
- ルネサンス期から19世紀までのグリモワールのページへのリンク