小銃擲弾
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/03 00:29 UTC 版)
小銃擲弾(しょうじゅうてきだん、英語: Rifle grenade)は、小銃を用いて発射する擲弾[1][2]。
来歴
小銃擲弾は、第一次世界大戦での塹壕戦に起源を有する。西部戦線が構築されると、投擲のため身を晒さずに敵の塹壕に手榴弾を投射できる手段が求められるようになった。これに応じて開発されたのが小銃擲弾であった[3][4]。
このときには、小銃の銃口部にカップ型の発射機を装備して、ここに手榴弾を入れて空砲で射出するもののほか、手榴弾に棒をつけて銃口に差し込み空砲で射出するものなどが開発された[4]。ただし大重量の擲弾を射出する必要から、通常よりも薬室圧力が上昇するため、反動が激しく、肩付け射撃ができないため射撃精度が低いという問題があった。また小銃本体の消耗も激しいことから、戦間期には、ドイツ国防軍の5 cm leGrW 36や大日本帝国陸軍の八九式重擲弾筒のように、専用の小型迫撃砲が志向されることになった[3]。この時期、イタリア王国では特殊部隊用のカルカノM1891/28カービンに装着して使用する38mm口径の擲弾発射器であるMod 28「トロンボンチーノ」が開発されており、後のXM148やM79に影響を与えた可能性が指摘されているが、この時点では普及しなかった[5]。
その後、第二次世界大戦では、小銃の銃口部に簡単な管を装着して、これにロケット型の擲弾を差し込んで、空砲で射出する方式が登場し、こちらは大戦後も長く命脈を保つことになった[注 1]。現代では、特別な発射管すら必要とせず、銃身先端の消炎器にそのまま装着して、実包で発射できるものが主流となっている[4]。このため、西側諸国の小銃では消炎器の外径を22mmに統一し、共用化を図っている[6]。小銃擲弾を発射できる自動小銃では、通常よりも高い圧力によって機関部が激しく作動することを避けるために、自動機能を手動で停止できる製品もある。ガス圧作動式の自動小銃であれば、発射ガスの経路を遮断する部品を設けることで、擲弾発射に対応できる。
種類
- 対戦車用
- 成形炸薬弾を用いた対装甲・トーチカ用のもの。ただし小銃に装着する必要から大型化に制約があり、戦車の装甲性能の向上に追随できなくなっており、下記のように、主目標を軽装甲車両や対人用にしたものが主流となりつつある[2]。
- 対軽装甲・対人用
- 成形炸薬弾による装甲貫徹効果とともに、破片効果による対人効果を付加したもの[2]。
- 戦闘支援用
- 照明弾、発煙弾など。暗視装置に対応した赤外線照明弾も登場している[2]。またイスラエル・エアロスペース・インダストリーズ社では、カメラと送信機を収容した、偵察用のインテリジェント弾も製作した[7]。
- 低致死性
- ゴム弾、催涙弾、閃光発音弾などが用いられている。また特殊用途として、扉破壊用のSIMON ライフルグレネードもある[2]。
従来の小銃擲弾は、専用の擲弾薬筒(空砲あるいは木製弾頭付き)を小銃に装填・射撃することによって射出されていた。
フランス陸軍が1916年に採用したVB式小銃擲弾は通常の小銃実包をそのまま使えるバレットスルー方式で、小銃弾は擲弾の中心に設けられた貫通孔を通過して飛び去り、次いで発射ガスが擲弾を射出する。日本陸軍が1940年に採用した一〇〇式擲弾器もやはり通常の小銃実包を使うが、バレットスルー方式ではなく、小銃銃身の軸線と平行に配置されたカップ型発射器に発射ガスを導く構造だった。
その後、実包による発射に対応した弾丸トラップ方式が登場し、現代ではこちらが主流となった。これは発射筒部に設けられた弾丸トラップで小銃弾を受け止め、この作用と発射ガスの作用によって、飛翔体部を射出するものである。また陸上自衛隊の06式小銃てき弾では、更に分離飛翔方式の採用により、射手に有害な後方飛散物の発生を防いでいる[2]。
なお上記の通り、小銃擲弾は小銃による射出を前提としているが、フランキ社では、2連装・3連装の専用発射機も試作した[8]。
主な機種
- 甲号擲弾銃(大日本帝国陸軍:スティック型)
- 九一式擲弾器(大日本帝国陸軍:ソケット型)
- 一〇〇式擲弾器(大日本帝国陸軍:カップ型)
- 二式擲弾器(大日本帝国陸軍:カップ型)
- 三式擲弾器(大日本帝国陸軍:ソケット型)
- リュシェール・モデル 40mm(フランス軍)
- バック RW704(ドイツ国防軍)
- MPiK カップ・グレネードランチャー(国家人民軍(ドイツ民主共和国)
- フランキ AP/AV700(イタリア軍)
- デザメット GNPO(ポーランド軍)
- ツァスタバ M60 ライフルグレネード(セルビア軍)
- 06式小銃てき弾(陸上自衛隊(日本):ソケット型)
- S&W リボルバー・グレネード(アメリカ軍)
- M31 HEAT ライフルグレネード(アメリカ軍)
- ENERGA ライフルグレネード(ベルギー軍)
- AC58 ライフルグレネード(フランス軍)
- APAV40 ライフルグレネード(フランス軍)
- SIMON ライフルグレネード(イスラエル国防軍)
脚注
注釈
出典
参考文献
- 防衛省 (1971年). “防衛省規格 弾薬用語” (PDF). 2018年7月8日閲覧。
- 防衛省 (1992年). “防衛省規格 火器用語(小火器)” (PDF). 2018年7月8日閲覧。
- 弾道学研究会 編 『火器弾薬技術ハンドブック』防衛技術協会、2012年。 NCID BB10661098。
- 田村尚也 『WWII戦術入門』イカロス出版、2021年。 ISBN 978-4802210751。
- 床井雅美 『現代サポート・ウェポン図鑑』徳間書店〈徳間文庫〉、2008年。 ISBN 978-4198928360。
- ワールドフォトプレス 編 『世界の重火器』光文社〈ミリタリー・イラストレイテッド〉、1986年。 ISBN 978-4334703738。
- Rottman, Gordon L. (2017). U.S. Grenade Launchers: M79, M203, and M320. Osprey Weapon Series. Osprey Publishing. ISBN 978-1472819529
関連項目
擲弾発射器
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擲弾発射器(てきだんはっしゃき、英語: Grenade launcher)は、擲弾を発射するための火器[1][2]。通常、口径20mm以上の火器は砲として扱われるが、擲弾発射器は運用上・形態上などの問題から小火器として扱われることが多い[3]。
来歴

擲弾発射器の歴史は、フリントロック式のマスケット銃の時代まで遡る。当時、手榴弾の投擲を担当する兵科として擲弾兵があったが、攻城戦の場合、人力では投擲距離が足りないことが多かったため、専用の発射器 (Hand mortar) が開発された。これは小銃の口径を拡大し、手榴弾を装填できるようにしたもので、小銃弾よりも遥かに重い手榴弾(擲弾)を発射する圧力に耐えられるように、銃身を思い切って短縮するかわりに火砲並みの分厚いものとなった。この極端に短い銃身により初速はかなり遅くなったが、これにより、擲弾は放物線を描いて飛翔することになり、防壁越しの射撃には適することから、一時期ヨーロッパでは多用された。しかし低初速ゆえの命中精度の低さが問題になり、戦闘形態の近代化が進むにつれて使われなくなっていった[4]。
第一次世界大戦で西部戦線が構築されると、敵の塹壕に手榴弾(擲弾)を投射する必要から、再び擲弾発射器が注目されることになった。このときには、フリントロック式発射器と同様の発想で、小銃の銃口部にカップ型の発射機を装備して、ここに手榴弾を入れて空砲で射出するもののほか、手榴弾に丸棒をつけて銃口に差し込んで空砲で射出するものなどが開発された[4]。ただし、特に小銃を使用して投射する小銃擲弾は、大重量の擲弾を射出する必要から、通常よりも薬室圧力が上昇するため反動が激しく、肩付け射撃ができないため射撃精度が低く、また小銃本体の消耗も激しいという問題があり、戦間期には、ドイツ国防軍の5 cm leGrW 36や旧日本陸軍の八九式重擲弾筒、イギリス陸軍のSBML 2インチ迫撃砲のような専用の小型迫撃砲・コマンド迫撃砲が志向されることになった[5][注 1]。なおこの時期、イタリア王国では特殊部隊用のカルカノM1891/28カービンに装着して使用する38mm口径の擲弾発射器であるMod 28「トロンボンチーノ」が開発されており、後のXM148やM79に影響を与えた可能性が指摘されているが、この時点では普及しなかった[7]。
第二次世界大戦では、小銃擲弾や小型迫撃砲のような対人兵器のほか、対戦車兵器としての擲弾発射器も登場した。これは、従来の徹甲弾であれば高初速が必要だったのに対し、モンロー/ノイマン効果を用いた成形炸薬弾の場合、むしろ低初速の対戦車擲弾のほうが適しているためであった。またベトナム戦争では、視界の悪い熱帯雨林での戦闘に対応して、薬莢に薬室をもたせたハイ・ロー・プレッシャー弾を使用することで、個人携行できる擲弾発射器(いわゆる「擲弾銃」)が開発された[3][4]。
擲弾発射器
擲弾発射器の方式には、手動式および自動式の2種類の基本方式がある[3]。軍用としては40mmグレネードが一般的である一方[8]、37/38mmグレネード (37 mm flare) は催涙弾やゴム弾など警察用の低致死性弾薬として広く用いられており、アメリカ合衆国では、連邦火器法 (NFA) による取締から特に除外されている[9]。通常、このような低致死性兵器は個人携行火器として用いられるが、例外的に、軍用車両が自衛用として大口径の煙幕弾(発煙弾)を投射するための擲弾発射器(発煙弾発射機)を搭載する場合がある[10]。
手動式
手動式は、装填・閉鎖・撃発・排莢など一連の動作をすべて手動で行うものであり、更に下記のように分類される[3]。
- 元折れ式(中折式)
- 肩撃ち式を基本とする擲弾専用銃である。特に軍用の場合、手動式単体の擲弾銃の使用は減少し、下記の小銃装着式に移行している[3]。
- 小銃装着式(英語: add-on grenade launcher[2])
- 小銃の銃身下部に固定する方式が多い。弾薬は1発ずつ銃身の後方から装填され、また銃身の後方には撃発機構が付されている[3]。
- 回転弾倉式
- 同一円周上で、等間隔に複数の薬室を有する円柱状の弾倉をもつ方式。1930年代末にはマンビル・ガン (Manville gun) が開発されたものの、多弾数を追求した結果かさばって操作性が悪く、普及しなかったことから[4]、現代では6発装填としたものがほとんどである。なお弾倉の回転は、手動式のほか、ぜんまいばねを利用するものもある[3]。
- 主な機種
-
- 元折れ式
-
- M79 グレネードランチャー(アメリカ軍)
- H&K HK69(ドイツ連邦軍)
- ブリュッガー&トーメ GL-06(スイス軍)
- フェデラル ライオットガン
- 小銃装着式
-
- M203 グレネードランチャー(アメリカ軍)
- H&K HK79(ドイツ連邦軍)
- H&K AG36/M320 グレネードランチャー(ドイツ連邦軍)
- GP-25/GP-30(ソビエト連邦軍、ロシア軍)- 弾薬を銃身の前方から装填する構造を採用している
- SIG GL5040(スイス軍)
- CIS 40 GL(シンガポール軍)
- ベレッタGLX160 (イタリア軍)
- Steyr Mannlicher SL40(オーストラリア軍)
- FN40GL(ベルギー軍)
- チューブ弾倉式(ポンプアクション)
-
- GM-94
- チャイナレイク グレネードランチャー
- その他
-
- アーウェンACE - アーウェン37を単発式にしたモデル。弾薬を挿入し、引き代が長い引き金を操作すると、全装填・発射・排莢までが自動的に行われる。
-
回転弾倉式のダネルMGL
自動式

自動擲弾銃(英語: Automatic grenade launcher)は、連射できる擲弾銃[2]。自動機構としては、ブローバックやガス圧作動方式、反動利用式があるが、構造が単純なブローバック式が多用されている[3]。なおアメリカ軍では重機関銃のカテゴリに含めて扱っている[11]。
なお、半自動式の擲弾発射器をアサルトライフルと一体化したXM29 OICWの開発が試みられたが、実用化には至らなかった[注 2]。
- 主な機種
-
- M75 グレネードランチャー(アメリカ軍)
- Mk19 自動擲弾銃(アメリカ軍)
- Mk.47(アメリカ軍)
- XM25 IAWS(アメリカ軍)
- 96式40mm自動てき弾銃(陸上自衛隊(日本)
- H&K GMW(GMG)(ドイツ連邦軍)
- LAG 40(スペイン軍)
- AGS-17(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- AGS-30(ロシア軍)
- AGS-40(ロシア軍)
- K4 グレネードランチャー(大韓民国国軍)
- デネル Y3(南アフリカ国防軍)
- ダネル ネオパップ PAW-20(南アフリカ)- 専用の20x42mm榴弾を肩撃ち姿勢で発射する
- UAG-40(ウクライナ軍)
- 87式グレネードランチャー(中国人民解放軍)
- 11式グレネードランチャー(中国人民解放軍)
対戦車擲弾発射器

擲弾発射器の性格上、運動エネルギー弾ではなく成形炸薬弾などの化学エネルギー弾が使用される。装甲貫徹力と命中精度を向上させるため、ロケット推進を導入した対戦車ロケット弾の採用が一般的になっているほか、一部では、発射機に無反動砲の原理を導入しており、擲弾発射器というよりは、ロケットランチャーあるいは無反動砲とも考えられる[3]。
- 主な機種
-
- パンツァーファウスト(ドイツ国防軍)
- パンツァーファウスト44(ドイツ連邦軍)
- パンツァーファウスト3(ドイツ連邦軍)
- RPG-2(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-7(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-16(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-18(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-22(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-26(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-27(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-28(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-29(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-30(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- RPG-32(ソビエト連邦軍、ロシア軍)
- 試製66mmてき弾銃(陸上自衛隊(日本); 試作のみ)
- PF-89(中国人民解放軍)
脚注
注釈
出典
- ^ 防衛省 1971, p. 39.
- ^ a b c 防衛省 1992, p. 23.
- ^ a b c d e f g h i 弾道学研究会 2012, pp. 830–836.
- ^ a b c d 床井 2008, pp. 88–93.
- ^ ワールドフォトプレス 1986, pp. 54–62.
- ^ 田村 2021, p. 28.
- ^ Rottman 2017, pp. 6–8.
- ^ 床井 2008, pp. 94–177.
- ^ アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局 (1995). 37/38mm Gas/Flare Guns with Anti-Personnel Ammunition are Defined as NFA Weapons (Report).
- ^ 弾道学研究会 2012, pp. 532–533.
- ^ “MCWP 3-15.1 Machine Guns and Machine Gun Gunnery”. U.S. Marine Corps. 2021年4月24日閲覧。
- ^ “50発射撃すると爆発する韓国のK11複合型小銃、開発の失敗を認め「開発中止」提案”. grandfleet.info (2019年5月29日). 2022年11月25日閲覧。
参考文献
- 防衛省 (1971年). “防衛省規格 弾薬用語” (PDF). 2018年7月8日閲覧。
- 防衛省 (1992年). “防衛省規格 火器用語(小火器)” (PDF). 2018年7月8日閲覧。
- 弾道学研究会 編『火器弾薬技術ハンドブック』防衛技術協会、2012年。 NCID BB10661098。
- 田村尚也『WWII戦術入門』イカロス出版、2021年。 ISBN 978-4802210751。
- 床井雅美『現代サポート・ウェポン図鑑』徳間書店〈徳間文庫〉、2008年。 ISBN 978-4198928360。
- ワールドフォトプレス 編『世界の重火器』光文社〈ミリタリー・イラストレイテッド〉、1986年。 ISBN 978-4334703738。
- Rottman, Gordon L. (2017). U.S. Grenade Launchers: M79, M203, and M320. Osprey Weapon Series. Osprey Publishing. ISBN 978-1472819529
関連項目
ライフルグレネード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 14:45 UTC 版)
「銀河鉄道999の停車駅」の記事における「ライフルグレネード」の解説
地表は見渡す限りの荒野で、コンバット・モルモットと呼ばれる奴隷による本物の戦争をホテルの宿泊客に見せては観光収入を得ている。
※この「ライフルグレネード」の解説は、「銀河鉄道999の停車駅」の解説の一部です。
「ライフルグレネード」を含む「銀河鉄道999の停車駅」の記事については、「銀河鉄道999の停車駅」の概要を参照ください。
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