ユーロコプター EC 135
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/08 02:03 UTC 版)
EC135
ユーロコプター EC 135(英語: Eurocopter EC 135)は、ユーロコプター(現エアバス・ヘリコプターズ)が生産する双発の汎用ヘリコプターである。警察、救急や輸送など多目的に使用される。計器飛行に対応しており、航法訓練にも利用できる。
開発

EC 135の開発は、ユーロコプター社が構成される前に遡る。メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム(MBB)社で1980年代半ばにBo 108の名称で開発が開始されている[1]。それまでのMBB Bo 105と比較し、機内容量も拡大されている[1]。
2基のアリソン250-C20R/1ターボシャフトエンジンを備えた技術実証機('V1')は、1988年10月17日に初飛行し、2番目のBo 108 ('V2')は、1991年6月第5週に完成した。V2は、2基のチュルボメカ アリウス TM319-1Bを備えていた。この両機は、従来型のテールローターを採用した。
その後、MBBとアエロスパシアルのヘリコプター部門が合併してユーロコプター社になるのにあわせ、1992年末、テールローターにフェネストロンが採用された。これは従来のヘリコプターとは違ってヴァーチカルフィン内に回転翼が収められており、接触事故の危険性は減った。安全で静かなテールローターシステムと広々とした室内空間とが組み合わされる事により、EC 135は航空医療用途に普及した。
2機の試作機が生産され、1994年2月15日から4月16日にアリウス2B とプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社のPW206B(en)エンジンが試験された結果、古くて非力なアリソン 250エンジンは不採用となった。3機目のヘリコプターは1994年11月28日に完成した。
2014年には、テイルローター部分の設計を一新し、水平尾翼の位置を変更、メインローターブレードを低騒音のブルーエッジに交換したとみられる改良型が確認された[2][3]。
エアバス・ヘリコプターズへの社名変更に伴い、現在はH135と改称されている[4]。
運用

EC 135は、1995年1月にラスベガスのヘリエキスポでデビューした。1600飛行時間を達成したあと、1996年6月16日にヨーロッパのJAAの型式証明を、7月31日にはアメリカ連邦航空局(FAA)の型式証明を受けた。翌8月1日には機体の引渡しが始まり、ドイツ救急飛行隊に2機が納入された。
1999年6月のパリ航空ショーでは量産100号機がバイエルン州警察に引き渡された。この時点では全世界合計で3万飛行時間を越えていた。
2008年には650機以上が生産され、総飛行時間は100万時間に達している。
派生型
- EC 135 P
- プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW206B(621軸馬力)を搭載するモデル。後期型はセンターパネル・ディスプレイシステム(CPDS)を搭載する。最大離陸重量は当初2,631kgだったが、後のモデルで2,721kgに、その後さらに2,835kgへと増加された。
- EC 135 T1
- チュルボメカ アリウス2B1/2B1A/2B1A1(583軸馬力)を搭載するモデル。その他の仕様はP1に準ずる。
- EC 135 P2
- 片発停止時(OEI)出力を向上させたPW206B(621軸馬力)を搭載するモデル。P1の後継として2001年8月に生産が開始された。
- EC 135 T2
- 片発停止時(OEI)出力を向上させたアリウス2B2(652軸馬力)を搭載するモデル。T1の後継として2002年8月に生産が開始された。
- EC 135 P2+
- FADECを更新したPW206B2(667軸馬力)を搭載するモデル。最大離陸重量が2,910kgになり、オーバーホール間隔が延長されている。生産はドイツとスペインで行われている。
- EC 135 T2+
- FADECを更新したアリウス2B2(634軸馬力)を搭載するモデル。その他の仕様はP2+に準ずる。海上自衛隊がTH-135の呼称で、練習機として15機導入した[5]。
- EC 135 P2i
- P2+の販売名称を変更したモデル。
- EC 135 T2i
- T2+の販売名称を変更したモデル。
- EC 135 P3
- FADECを更新したPW206B3(708軸馬力)を搭載するモデル。最大離陸重量は2,980kgに増加した。2014年より市場導入。
- EC 135 T3
- FADECを更新したアリウス2B2プラス(660軸馬力)を搭載するモデル。それ以外の仕様はP3に準ずる。
- EC 635(en)
- EC 135の軍用モデル。内装を簡素化し、より多彩な装備や武装を搭載可能にした。ヨルダン、イラク、スイスが採用。現在はH135Mと改称されている。
- H135 ジュノー(Juno)
- イギリス軍の国防ヘリコプター飛行学校(en)に訓練用として採用された機体の名称。
-
EC 135 T1
-
グラスゴーシティ空港でのボンドヘリコプターが運用するEC 135 T2
-
北海道警察ぎんれい2号
-
東北エアサービスのEC 135 P2+
-
海上自衛隊のTH-135(EC 135 T2+)
-
スイス空軍のEC 635
運用国
軍用
ガボン - 2024年時点で、ガボン空軍が1機のH135を保有[6]。
ヨルダン - 2024年時点で、ヨルダン空軍が11機のH135Mを保有[7]。
モロッコ - 2024年時点で、モロッコ空軍が6機のH135Mを保有[8]。
日本 - 2015年時点で、海上自衛隊が練習機として15機のTH-135を保有[9]。
タイ - タイ王国空軍の練習ヘリコプターとして2020年に6機のH135を発注し、2021年から受領開始[10]。タイ王国空軍では「タイプ13」と呼ばれている[10]。
スペック(EC135 P2+/T2+)

出典: Eurocopter web site[11], Eurocopter EC135 2008 Tech Data book
諸元
- 乗員: 1名
- 定員: 最大7名または2名と患者2名
- 全長: 10.20m (33ft6in)
- 全高: 3.51m (11ft6in)
- ローター直径: 10.20m (33ft6in)
- 空虚重量: 1,455kg (3,208lb)
- 有効搭載量: 1,455kg (3,208lb)
- 最大離陸重量: 2,910kg (6,415lb)
- 動力: チュルボメカ アリウス2B2 または プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW206B ターボシャフト、アリウス 473kW/PW206 498kW (634/667軸馬力) × 2
性能
- 超過禁止速度: 259km/h=M0.21 (140knots, 161mph)
- 巡航速度: 254km/h=M0.21 (137knots, 158mph)
- 航続距離: 635km (342nm, 393mi)
- 実用上昇限度: 3,045m (10,000ft)
- 上昇率: 1,500ft/min (7.62m/s)
脚注
出典
- ^ a b 世界航空機年鑑 2007-2008 酣燈社 P310 ISBN 978-4873572703
- ^ Airbus Helicopters заподозрили в модернизации вертолета EC135
- ^ Airbus Helicopter Using German Expertise To Update Product Line
- ^ エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン株式会社 ニュース 製品名の変更について 2015年03月11日
- ^ “エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン、海上自衛隊へTH-135 2機を納入”. エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン (2015年12月16日). 2018年9月17日閲覧。
- ^ IISS 2024, p. 493.
- ^ IISS 2024, pp. 365.
- ^ IISS 2024, pp. 375–376.
- ^ “海上自衛隊、TH-135全15機の配備を完了 鹿屋航空基地で記念式典”. FlyTeam. (2015年12月5日) 2025年4月9日閲覧。
- ^ a b Alessandra Giovanzanti (2021年10月6日). “Royal Thai Air Force begins receiving H135 training helicopters”. janes.com. 2025年7月8日閲覧。
- ^ “EC135 Technical Data”. Eurocopter. 2009年7月24日閲覧。
参考文献
- The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) (英語). The Military Balance 2024. Routledge. ISBN 978-1-032-78004-7
関連項目
外部リンク
ユーロコプター EC 135
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/23 07:44 UTC 版)
「コーンウォール救急航空機」の記事における「ユーロコプター EC 135」の解説
EC135は、世界中の多くの場所で救急機として広く使用されています。スムーズな飛行を確保するために4つのローターブレードがあり、特に頭や脊髄の怪我に苦しむ患者にとって有益であることが証明されました。ツインタービンエンジンは時速260マイル(260 km/h)の巡航速度で飛行し、スキッド着陸装置はあらゆるタイプの地形にも対応可能です。そのコンパクトなサイズにより、限られたスペースに着陸することができ、2人のストレッチャー患者を運ぶ余地がありました。最前線の救急機にあるすべての機器に加え、その他にも特別な装備が含まれています。
※この「ユーロコプター EC 135」の解説は、「コーンウォール救急航空機」の解説の一部です。
「ユーロコプター EC 135」を含む「コーンウォール救急航空機」の記事については、「コーンウォール救急航空機」の概要を参照ください。
「ユーロコプター EC 135」の例文・使い方・用例・文例
- いつもBOSCO TECHの商品をお引き立ていただき、ありがとうございます。
- BOSCO TECHは今後も製品の品質と革新に専心して参ります。そして、それこそがスマートフォンから薄型テレビまであらゆるものを保護する製品、MEGA GELでお伝えするものです。
- 例えばNECのブランドステートメント、「発明こそが推進力」は、この電子機器メーカーの最先端技術への絶え間ない探求姿勢を表している。
- OPEC加盟国はプライスバンド制により原油の生産量を調整している。
- EC 域内では 10 以上の通貨が流通している.
- OPECは、油の価格を上げた
- OPECは油を独占したがっている
- サウジアラビアの石油大臣で、OPECを設立した中心人物(1930年生まれ)
- 開発援助委員会という,OECDの下部機関
- ECU金貨という,ベルギーの金塊型金貨
- EC委員会という,欧州共同体の行政機関
- EC委員会という,欧州共同体の行政機関の会議
- OECD開発センターという,OECDの調査研究機関
- 欧州通貨基金という,EC内における金融機関
- 拡大ECという国際機関
- グリーンレートという,農産物についてのEC各国でのみ使用される通貨換算レート
- OECDという国際機関
- みどりのレートという,農産物についてEC各国で使用される通貨換算レート
- 情報電算機通信政策作業部会という,OECDの委員会
- OECD農業保護指数という,先進諸国の農業保護の度合いを示す指数
固有名詞の分類
ヘリコプター |
ユーロコプター EC 725 ユーロコプター EC 135 ウエストランド ウエストミンスター シコルスキー S-58 ベル 212 |
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