ハイランド地方
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ハイランド地方(ハイランドちほう、英語:Highlands, スコットランド・ゲール語:A' Ghàidhealtachd, スコットランド語:Hielans)は、ハイランド境界断層北側および西側の荒れた山がちな地域を含むスコットランドの一部であるが、正確な境界は、特に東側で厳密には定まっていない。グレート・グレン峡谷をはさんで、グランピアン山脈と北西ハイランドに分かれ、うち北西ハイランドはユネスコ世界ジオパークに指定されている[1]。スコットランド高地地方、あるいは単にハイランド、スコットランド高地、高地地方などとも訳す。
一般に人口はまばらであり、山脈が多く、そのなかにはブリテン諸島最高峰であるベン・ネヴィス山がある。ハイランドは、19世紀以前には現在よりもずっと多くの人口を擁していたが、スコットランドでのジャコバイトの台頭に続くハイランドの伝統的な方式の非合法化などの要因が複合した、悪名高き土地清掃[2](ハイランド清掃)と、産業革命期の都市部への大量移入の結果、現在ではヨーロッパで最も人口密度の低い地域の一つとなっている。ハイランド地方および北部諸島の平均人口密度はスウェーデン、ノルウェー、パプアニューギニア、アルゼンチンよりも低い。1975年以来の島嶼部を含む行政区画「ハイランド&アイランズ」では、面積はスコットランド全体の32.7%、人口は約4%に過ぎない[3]。
ハイランド地方の大部分を担当する行政体はハイランド・カウンシルであり、インバネスコートの語源となったことで知られるインヴァネスに行政の中心がおかれている。ハイランド地方の行政区分はこの他にアバディーンシャー、アンガス、アーガイル・アンド・ビュート、マレー、パース・アンド・キンロス、スターリングがある。アラン島は行政的にはノース・エアシャーに属するが、アラン島北部は一般的にはハイランドの一部とみなされている。
文化
ハイランド地方の文化は、早くからイングランドの影響が大きく、産業化も進んだローランド地方とは大きく異なっている。全体が山地地帯であった上にローランド地方とは断層線のために自然的条件・地理的条件から交流にも障害が多かった。ハイランド地方のほとんどはゲール圏(ケーアルタハク)に属し、ここ百年間はスコットランド・ゲール語が用いられていた。ケーアルタハク(Gàidhealtachd)とゲールは区別なく用いられる語であるが、それぞれの言語では異なる意味を有している。ハイランド英語も用いられている。
ハイランド地方とアイルランドには文化的共通項がある。ゲール語、スポーツ(シンティやハーリング)、ケルト音楽などはその例である。
宗教
ローランド地方で始まったスコットランドでの宗教改革は、ゲール語圏であるハイランド地方では当初は部分的に成功しただけであった。カトリック教会は、文化的にも民族的にも関係の深いアイルランド系のフランシスコ会伝道師がミサのために定期的にハイランド地方を訪れていたこともあって、ハイランド地方の大部分で勢力を保っていた。ハイランド地方は、しばしば大ブリテン島カトリックの最後の砦といわれ、モイダート、モラール、サウス・ウイスト島、バラ島などに主要拠点があった。ハイランダーの強いカトリシズムはプロテスタントであるイングランド人に対する歴史的な反感へとつながった。これは、ローランド地方のスコットランド人のほとんどがプロテスタントに改宗し、イングランドと連合してグレートブリテン王国を形成するのに積極的だったのとは対照的である。一方、アウター・ヘブリディーズ諸島の一部 (ルイス島やハリス島など) では、スコットランド自由教会やスコットランド長老教会に多数の住民が属していた。
歴史地理
伝統的なスコットランドの地理では、ハイランド地方はダンバートンとストーンヘイヴンを結ぶ直線的なハイランド境界断層のスコットランド北西側を意味している。しかし、ネアンシャー、マレー、バンフシャー、アバディーンシャーの平坦な沿海部は、ハイランド地域に特有な地理的ならびに文化的特徴がないとしてしばしば除外される。ヘブリディーズ諸島は通常ハイランド地方に含まれるが、ケイスネスの北東部もオークニー諸島、シェトランド諸島同様に、しばしばハイランドから除外される。ハイランド地方の定義はローランド地方とは言語と伝統において異なり、アングロ化後も数世紀に渡ってゲール語とその文化が保存されている点にある。このことは14世紀終わりごろにはハイランダーとローランダーの文化的隔絶として認識されるようになった。ディー川沿いにあるディネットの集落には、A93道路の脇に'You are now in the Highlands'(ハイランド地方入口)という石碑がある。但しこの東側にもハイランド地方の要素を有する地域がある。
スコッチ・ウイスキー産業はハイランド地方をずっと広く定義している。ハイランド・シングル・モルトはダンディーとグリーノックを結ぶ仮想的な境界の北側で生産されると定義されており、従ってアバディーンシャーとアンガス全域が含まれている。
インヴァネスは伝統的にハイランド地方の中心地と見なされているが、アバディーンシャー、アンガス、パースシャー、スターリングシャーのハイランド地域ではその度合いは低く、むしろアバディーンやダンディーをはじめ、旧スコットランド王国の首都が置かれたこともあるパースやスターリングといった都市を商業中心地として捉えている。ハイランド地方を広義に捉えればアバディーンこそハイランド地方最大の都市とも考えられるが、狭義のハイランド地方に典型的な、近年のゲール文化を欠いている。
行政単位
ハイランド・カウンシル(Highland Council)はスコットランドの行政区分として創設され、1996年以降はユニタリー・カウンシルである。この行政区画にはハイランド地方の南部および東部の広い地域ならびにアウター・ヘブリディーズ諸島が含まれない一方、ケイスネスが含まれる。行政区分の名称として、Highlands and Islands Fire and Rescue Service(ハイランド及び諸島消防救命隊)に見られる様に、Hilandsが用いられることもある。Northern Constabulary(北部警察)の様に、Northernという語が消防救急管区の名称として用いられる場合もある。この場合、ハイランドカウンシルの他にオークニー諸島、シェトランド諸島、アウター・ヘブリディーズ諸島が含まれる。
ハイランド地方および北部諸島
ハイランド地方はハイランド地方および北部諸島と大幅に重なりあっている。スコットランド議会の選挙区は「ハイランド地方および北部諸島」と呼ばれ、これにはハイランドカウンシル地区の他にオークニー諸島、シェトランド諸島、アウター・ヘブリディーズ諸島ならびにアーガイルアンドビュートとマレーの大部分が含まれる。「ハイランド地方および北部諸島」という呼称の意味するところは前述の様に文脈により様々である。
出典
- ^ “NORTH-WEST HIGHLANDS UNESCO GLOBAL GEOPARK (United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)” (英語). UNESCO (2021年7月28日). 2022年10月20日閲覧。
- ^ リチャード・キーレン著/岩井淳・井藤早織訳『図説スコットランドの歴史』彩流社(2002) ISBN 4-88202-772-0
- ^ 『スコットランド 歴史を歩く』岩波書店、2004年、17頁。
外部リンク
ハイランド地方
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ハイランド地方の古い習慣では、ホグマネイを家庭や家畜の「サイニング(スコットランド語で「守り」「祝福」の意)」と共に祝う。この習慣が残っている地域は少ないが、今後復活する可能性もある。1月1日の早朝、一家の主人が、「死者と生者の浅瀬」から汲んで来た「魔法の水」を口にし、また家の周囲に撒く。(この浅瀬とは、生者や、死者の魂が行きかう地元の川と思われる)すべての部屋、ベッド、そして住人にまで水をまいた後、家の窓や戸をしっかりと締め、ビャクシンの枝に火を点けて、家や牛小屋の中を持って回る。鼻水や咳が出るくらいにまで燻した後、窓やドアを開け放ち、新年の冷たくて新鮮な空気を入れる。家の女性は、元気づけのためにウィスキーを食卓に出し、家族は新年の朝食の席に着く。 ストーンヘヴン 北東部のアバディーンシャーのストーンヘヴンでは火の球転がしが行われる。この行事では、地元の人々が金網に、古新聞や、棒や、ぼろ布や、その他燃えやすい材料を詰めて、直径60センチほどにして、ひとつひとつに約1メートルの針金や鎖、不燃性のロープを付け、火の球を作る。旧市庁舎の鐘が新年を知らせると、球に火が点けられ、参加者が、自分の頭のまわりで火の球を転がしながら、ハイ・ストリートを練り歩き、そして引き返す。最後に、まだ燃えている火の球を港に投げ捨てて終わる。この祭りは多くの人々の楽しみであり、見物客の人だかりができる。2007年から2008年にかけての祭りでは、1万2千の見物客があった 。最近では、これに付随する呼び物として、夜中まで待つ見物客のために、「火の踊り」や、「バグパイプバンドの行進」、そして海に火の球を投げ入れた後に、花火大会が行われる。この催しは、インターネットで中継もされている。 ルイス島 アウター・ヘブリディーズのルイス島では、少年たちが幾つかのグループに整列し、それぞれのリーダーがヒツジの皮をまとい、他のメンバーは袋を持って、村の家から家へと移動して、ゲール語の詩を暗誦する。家の中に招待されると、リーダーは火の回りを時計回りに歩き、他のみんなが杖で、リーダーの着ているヒツジの皮を叩く。少年たちは、次の家に移動する前に、家の人からバノック(干し果実が入ったパン)をもらう。 シェトランド諸島 アップ・ヘリー・アーと呼ばれる火祭りが、1月の最後の火曜日に行われる。これは1800年代の初期に始まったものだが、ここでは町の人々がヴァイキングの格好をして、ヴァイキングの船(ロングシップ)のレプリカを燃やす儀式が行われ、その後かなり大きな歓声が上がる。かつてヴァイキングに侵略された歴史が、今はホグマネイの目玉となっている。 フォークランドとセントアンドリュース ファイフのフォークランドでは、夜中が近づくと、地元の男性が、たいまつ行列に参加してローモンドの丘に行く。セントアンドリュースのパン屋ではホグマネイの祝日用にケーキを焼いて、子供たちに与える習慣がある。このケーキを焼く日をケイクデイ(Cake day)と呼ぶ。
※この「ハイランド地方」の解説は、「ホグマネイ」の解説の一部です。
「ハイランド地方」を含む「ホグマネイ」の記事については、「ホグマネイ」の概要を参照ください。
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