タイ・カッブが生んだ野球とプレースタイル
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「タイ・カッブ」の記事における「タイ・カッブが生んだ野球とプレースタイル」の解説
握りの部分(グリップエンド)が根元に近づくにつれて円錐状に太くなっているバットを発案し、愛用していた。日本では、そのようなバットを「タイ・カッブ(タイカップ)型バット」と呼ぶことがある。また、1907年からはネクストバッターズサークルで黒いバットを使い始めた。実際に試合で使ったのはシーズンの最初だけだったが、カッブはそのバットを「魔法のバット」と呼んでおり、同年の結婚式でも持ち出している。 右手と左手を離してバットを握り、そのまま構えるという独特のフォームをとり、体調に合わせてバットの重さを変えていた。両手をあけてバットを握るため、「ボールに十分『力』が乗らないのでは」との声もあったが、カッブは「単に『力』のみが強い打球を生み出すものではない」と言い、そのグリップで剛速球をたたいて、外野にまで飛ばし奥深く守っていた右翼手のグローブをはじきとばした上にその選手の指を折ってしまったこともあったという。 基本的にシングルヒット狙いで、安打では特にバント安打を好んだ。柵越えを狙わないため、通算本塁打の半分近くがランニング本塁打であり、本塁打王を獲得したときも全てがランニング本塁打である。1920年代に入ると、ベーブ・ルースの出現で時代は本塁打偏重に傾き、「ルースはスラッガーだが、カッブは単打しか打てない」と揶揄され、ルースの豪打ばかりが持て囃されるようになった。それに対しカッブは、38歳になった1925年5月のブラウンズ戦前で、囲んだマスコミ陣に対し、「明日、明後日の試合で見せたいものがある。よく見ておきなさい」と宣言した。カッブは翌日のブラウンズ戦で文句なしの柵越えの本塁打を3本に二塁打を含む6打数6安打を記録し、翌々日の同カードの試合でも本塁打を2本、フェンス直撃の二塁打を2本放った。そしてルースには「ホームラン狙いをやめれば、打率4割も打てるのにな」と進言したという(これに対するルースの反論は#逸話を参照)。また、その話を聞いた警官が、自動車のスピード違反でカッブを捕まえた際、「今日の試合でホームランを2本打てば違反はなかった事にしよう」と言ったところ、カッブは本当に本塁打を2本打ち、約束どおりに違反は取り消しになったという逸話もある。 投手が3球投げる間に、一塁から二盗、三盗、本盗に成功するなど、エキサイティングな選手としても評価されていた。「ベーブ・ルースが本塁打を打つよりも、カッブが四球で出塁した時の方が興奮した。なぜなら本塁打は柵越えすればそこで終了だが、カッブは出塁した時からが興奮の始まりだからだ」と評されたこともある。 走塁においては、二塁に滑り込む際にタッチを避けるためになるべくベースから遠ざかって爪先をひっかけることでセーフ判定を狙う「フック・スライディング」を考案・実践した。走塁時には野手の目の動きに注目し、ボールを見なくとも走りながら野手の視線を見ることで、ボールのコースや位置を確認していた。それによって滑り込む際の角度やタイミングを変えていたという。ベースランニングの際にはベースの内側を踏み小さく回る走塁、三塁に走り込む際には送球線上に身体を持っていき背中で返球を妨害するなど、近代野球の基礎となる戦術を実践していた。さらに二塁へ進む際、ダブルプレーをとられないよう相手内野手に足を向けて滑り込んでゆく「ゲッツー崩し」を積極的にしかけたのもカッブが初めてである。また、鉛をつめて普通の3倍も重くした靴を履いて走塁の訓練をしていたという。球場にあるカッブの銅像は滑り込んでいる姿やスライディングの姿が非常に多い。 相手投手の投球フォームやクセの観察によって弱点を見つけたり、攻撃時や守備時に外野へ吹く風を計算に入れたりするという戦術を最初に取り入れた。足に関してはそれほど速くはなかったと自身も語っており、クセを見つける戦術によって盗塁数を稼いでいた。1イニングで二盗、三盗、本盗を決めるサイクル・スチールを通算4度、1年に2度達成している。また、安打を放った際、走りながら外野手が利き腕でボールを取っているかを確認し、ボールから眼を離した隙に進塁することでジャッグルを誘うなど、高度な走塁技術を確立していた。 弁護士を介した文書を使った契約を史上初めて導入した選手である。当時の球界はオーナーの意向によって契約が決まることがほとんどで、選手が不利益を被ることが多かった。カッブはそれを打破し、選手の権利という概念を主張した最初の選手である。そのためか、オーナー達からは良く思われておらず、この対立から前述の八百長疑惑に発展したとする意見もある。 守備では主に中堅手を務めた。外野手としての392補殺はメジャー歴代2位である。外野の三つのポジション以外にもファースト、セカンド、サード、さらには投手として3試合に登板している。
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