タイ・カダイ語族とは? わかりやすく解説

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タイ・カダイ語族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/13 14:58 UTC 版)

タイ・カダイ語族
話される地域中国南部、海南島
インドシナ, 北東インド
言語系統世界の基本となる語族の一つ。オーストロネシア語族やシナ・チベット語族との類似点が提唱されている。
下位言語
ISO 639-2 / 5tai
タイ・カダイ語族の分布図

タイ・カダイ語族(タイ・カダイごぞく、Tai-Kadai languages)またはクラ・ダイ語族(クラ・ダイごぞく、Kra-Dai languages)は、東南アジアタイラオスベトナム)から中国南部で話される言語語族であり、代表的なものとしてタイ語ラーオ語があり、その他多数の少数民族の言語を含む。

タイ・カダイ諸語(カム・タイ語群とも)をシナ・チベット語族シナ語派およびチベット・ビルマ語派、ならびにミャオ・ヤオ諸語(ミャオ・ヤオ語族)と合わせて、シナ・チベット諸語と呼ぶこともある[1][2]

中国南東部で特に多様性があり、この付近が故地と考えられる。タイ・ラオスには歴史時代に入ってから雲南省方面から住民が移住したのであり、それまでこの付近はオーストロアジア語族住民で占められていた。

基本的に単音節的孤立語声調言語であり、語順はSVO型で、修飾語は被修飾語のあとにつくのが普通である。これらの性質は中国から東南アジア大陸部の広い範囲の言語と共通するが、これは系統的な性質というより、地域特性(言語連合)と考えられる。

ベトナム語も似た性質を持っているが、基本的にはオーストロアジア語族である(タイ・カダイ語族の強い影響を受けて変化した[要出典])と考えられている[誰?]

分類

Edmondson & Solnit(1997)による分類を以下に掲げるが、確定した分類ではない。

話者数

言語名 話者数 備考
タイ語(泰語) 4600–5000万人 方言:北タイ語 600万人
ラーオ語(寮語) 約3180万人
チワン語(壮語) 1800万人
シャン語(撣語) 330万人
プイ語(布依語) 265万人
トン語(侗語) 150万人
タイー語(岱依語) 148万人
リー語(黎語) 70万人
黒タイ語またはタイ・ダム語(傣擔語)(en) 約70万人
タイ・ルー語(傣仂語)(en) 67万人
オンベ語(臨高語)(en) 60万人
タイ・ヌア語(傣哪語)(en) 36万人
スイ語(水語)(en) 34万6千人

他の語族との系統関係の仮説

タイ・カダイ語族の逆移住起源の仮説 (ロジャー・ベンチ英語版, 2018)[3]
オーストロ・タイ語族
複数の学者によってオーストロネシア語族との関連性が提示されている[4]。両語族の核となる語彙には、同根語がある。Ostapirat (2013)は両者は姉妹語であるとし[5]ロジャー・ベンチ英語版 (2018) はオーストロネシア語族話者が台湾フィリピンから大陸に逆移住したことでタイ・カダイ語族を生じたとしている[3]
シナ・タイ語族
タイ・カダイ語族はかつては、語彙の多くが類似していることから、シナ・チベット語族の一員と考えられていた。しかし、それらに基礎語彙は含まれず、タイ・カダイ語族の全ての系統で見いだせるわけではないため、古い借用語と考えられている[6]
モン・ミエン語族
Kosaka (2002)はタイ・カダイ語族とモン・ミエン語族の関連性を論じた。加えて、オーストロネシア語族との関連性や、さらに古い祖先(東アジア祖語)についても論じた[7]
日本語族
Vovin (2014)は日本語族原郷を中国南部に想定した。Vovinは、日本祖語が単音節のSVO構文であり、タイ・カダイ語と同様の孤立語であった可能性を示す類型論的証拠を示した。ただし、これらの共通特徴は遺伝的関係ではなく、激しい言語接触によるものとしている[8]

関連項目

脚注

  1. ^ 『講座 言語 第6巻 世界の言語』北村甫編、橋本萬太郎ら共著(大修館書店)
  2. ^ 『世界の言語と国のハンドブック』下宮忠雄(大学書林)
  3. ^ a b Blench, Roger (2018). Tai-Kadai and Austronesian are Related at Multiple Levels and their Archaeological Interpretation (draft). https://www.academia.edu/37593287/Tai-Kadai_and_Austronesian_are_related_at_multiple_levels_and_their_archaeological_interpretation. "The volume of cognates between Austronesian and Daic, notably in fundamental vocabulary, is such that they must be related. Borrowing can be excluded as an explanation" 
  4. ^ Sagart, Laurent (2004). “The higher phylogeny of Austronesian and the position of Tai–Kadai”. Oceanic Linguistics 43: 411–440. http://halshs.archives-ouvertes.fr/docs/00/09/09/06/PDF/THE_HIGHER_PHYLOGENY_OF_AUSTRONESIAN.pdf. 
  5. ^ Ostapirat, Weera (2013). Austro-Tai revisited. Paper presented at the 23rd Annual Meeting of the Southeast Asian Linguistics Society, 29-31 May 2013, Chulalongkorn University.
  6. ^ Ostapirat, Weera. (2005). "Kra–Dai and Austronesian: Notes on phonological correspondences and vocabulary distribution", pp. 107–131 in Sagart, Laurent, Blench, Roger & Sanchez-Mazas, Alicia (eds.), The Peopling of East Asia: Putting Together Archaeology, Linguistics and Genetics. London/New York: Routledge-Curzon.
  7. ^ Kosaka, Ryuichi. 2002. "On the affiliation of Miao-Yao and Kadai: Can we posit the Miao-Dai family." Mon-Khmer Studies 32:71-100.
  8. ^ Vovin, Alexander (2014). Out Of Southern China? --some linguistic and philological musings on the possible Urheimat of the Japonic language family-- XXVIIes Journées de Linguistique d'Asie Orientale 26-27 juin 2014.






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