言語連合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/23 13:35 UTC 版)
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言語連合(げんごれんごう、独: Sprachbund、英: Sprachbund, linguistic area、露: языковой союз)は、系統にかかわらず共通の文法的・音韻的特徴を示す言語群をさす用語である。ある言語連合の中で共有された特徴は、地域特徴 (areal feature)と呼ばれる[1]。典型的な言語連合の例として、バルカン言語連合がある。
概要
語族が同一の祖語から分かれた言語群であるのに対し、言語連合は、必ずしも系統的に関連のない言語同士が、同一の共通語文化圏に属したり、話者が同一地域に混住したり、また共通の基層言語の特徴を残存したりといった原因により、それぞれの言語の言語学的特徴が顕著な類似をもつにいたった言語群である。
したがって、ある言語が複数の語族に属することはあり得ないのに対し、複数の言語連合に属することがあり得る。また、特定の言語はいくら遡っても1つの語族に属するのに対し、特定の時期以前にはその言語連合に属していなかったり、以前にある言語連合に属していた言語が、その後それらの特徴を失っていったということがあり得る。
言語連合の認定は、複数言語間の地理的な近接性のみを根拠に行われるわけではない。言語連合の内部では一定の音韻的・形態的・統語的特徴および言語変化 (音変化、文法化) が共有されているが、そうした地域特徴は以下の観点により特定される[2][3]。
- 当該地域の大部分の言語がそれを持つ。
- 当該地域の隣接地帯の言語はそれを持たない。
- 語族は同じでも、当該地域の外部で話されている言語には、それが見られない。
- 世界の大部分の言語には、それが見られない。
研究史
「言語連合」はニコライ・トルベツコイによる用語である[4]。
言語連合の例
関連項目
参考文献
- Haspelmath, Martin (2001). “The European linguistic area: Standard Average European”. Language Typology and Language Universals. De Gruyter. pp. 1492–1510.. doi:10.1515/9783110194265-044. ISBN 978-3-11-017154-9
- Panov, Vladimir (2020). “Final particles in Asia: Establishing an areal feature”. Linguistic Typology 24 (1): 13–70. doi:10.1515/lingty-2019-2032. ISSN 1613-415X.
- Velupillai, Viveka (2012). An Introduction to Linguistic Typology. Amsterdam: John Benjamins Publishing Company. doi:10.1075/z.176. ISBN 978-90-272-1198-9
- 後藤斉 「エスペラントとヨーロッパ諸語の類似について」『エスペラント』第55巻(1987)9月号, pp. 7 - 8。
- 田口善久(著)「言語連合」。斎藤純男、田口善久、西村義樹(編)『明解言語学辞典』三省堂、2015年、75頁。
- ^ Velupillai 2012, p. 411.
- ^ Haspelmath 2001, p. 1493.
- ^ Panov 2020, p. 15.
- ^ 田口 2015.
言語連合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/04 06:49 UTC 版)
「言語連合」を参照 借用またはその他の手段で獲得された言語特徴の「共有革新」は、遺伝的とは見なされず、語族の概念とは関係が無い。たとえば、イタリック語派(ラテン語、オスカン語、ウンブリア語など)で共有されるより著しい特徴の多くは、「地域的特徴」である可能性が高いと主張されている。(ただしこれに類似した現象である西ゲルマン語群内におけるの長母音システムの変化は、祖語の革新と考えられる段階よりも大幅に遅れて起こっているものの、英語と大陸西ゲルマン語は地域的に分離しているため「地域的特徴」であると容易に見なすことはできない)。同様に、ゲルマン語派、バルト語派、スラブ語派にも同様の特異的な革新が数多くあり、一般的な祖語から受け継がれた特徴というよりも、地域的な特徴である可能性がはるかに高い。しかし、共有された革新が地域的特徴であるか、偶然であるか、共通祖先からの継承であるかについて意見が一致しなければ、大規模な語族における下位系統の分類不一致が生じることになる。 言語連合は、共通の言語構造を特徴とするいくつかの言語を持つ地理的領域である。これらの言語間の類似性は、偶然や共通の起源ではなく、言語接触によって引き起こされ、言語族を定義する基準として認識されていない。言語連合の例として、インド亜大陸が挙げられる。
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