シュール
「シュール」とは、フランス語のシュルレアリスムの略で「現実離れ」や「超現実的」「奇抜な」といった日常生活で目にすることのない並外れた様子のことを意味する表現。シュールレアリスムの略。シュールレアリズム、シュールリアリズムなどと表記されることもある。近現代では現実感を無視した作風への傾倒として用いられたが、日本において特に若者が使用する際は、明らかな奇抜さだけではなく、ちょっとした違和感や独特な雰囲気に対して用いることがある。
シュールの語源
シュールの語源は、日本で「超現実的」と訳されるフランス語である。この言葉を最初に使ったのは、フランスの詩人ギヨーム・アポリネールであるといわれている。1917年に上演されたコクトーによる前衛バレエ作品「パラード」のプログラム序文で使用したとされ、1918年に上演されたアポリネール自身の戯曲「ティレジアスの乳房」は、シュールレアリスム演劇の先駆けといわれている。シュールレアリスムの語が有名になったきっかけは、1924年に刊行された、フランスの作家アンドレ・ブルトンによる「シュールレアリスム宣言」という書物にある。第一次世界大戦中にブルトンは、当時のフランスではあまり有名ではなかったフロイトの心理学に触れ、「人間にとって意識は氷山の一角にすぎない」「夢こそが願望の充足である」というその深層心理学に大きな影響を受ける。そしてブルトンは、理性によって支配された現実世界ではなく、夢・幻想など潜在意識的な世界を表現することで人間の開放を目指すという思想を「シュールレアリスム宣言」として発表した。
シュールレアリスム宣言に影響を受けた多くの画家が、現実を無視したかのような絵画を発表するようになり、いつしか「シュールレアリスム」は芸術運動の名前となっていった。まるで夢の中を見ているような非現実感のある芸術作品を発表したサルバドール・ダリ、マックス・エルンスト、ルネ・マグリットなどがシュールレアリスムを代表する画家として知られる。また、ピカソも後にシュールレアリスムに傾倒したという。そうして、シュールレアリスムに影響を受けた芸術家たちは「シュールレアリスト」と呼ばれた。
シュールとダダイズム
シュールレアリスム宣言は、第一次世界大戦中から大戦後にかけて欧米で起こった「ダダイズム」という芸術運動にも影響を受けているが、戦争に対する抵抗感や虚無感を抱えたまま、常識を攻撃したり、破壊するような、いわば「現実を否定」していたダダイズムに対し、シュールレアリスムは「現実を超える」ものであった。シュールレアリスム宣言は日本の芸術家たちにも影響を与えることになる。西脇順三郎や友部正人といった詩人がシュールレアリスム宣言に影響を受けた詩を発表。小説では安部公房、漫画ではつね義春の「ねじ式」などにシュールレアリスム的な表現が見られた。画家では、古賀春江、福沢一郎、北脇昇、写真家では山本悍右などが影響を受けたとされる。
しかし、現在の日本では「シュールレアリスム」という単語ではなく、「シュールな」という形容詞として使われることが多い。バラエティ番組で、お笑い芸人の現実的ではない発言に対して「シュールなボケ」、ありえない設定のコントに対して「シュールな設定」など、ただただ現実離れしているという意味で使用されることが多い。まさしく「シュールレアリスム」から「レアリスム」がなくなったような状態である。本来の「シュールレアリスム」とは別の意味を持つ言葉になっており、「あの光景シュールだったね」「シュールな漫画だった」など、大人から若者まで幅広く使われるようになっている。
近年の日本で一般的に「現実離れしている」という意味で使われる「シュール」という言葉の反対語は「現実」といえる。また、本来のシュールレアリスム「超現実」の反対語も「現実」と考える向きもある。
シュルレアリスム
【英】:SURREALISM
【別称】:超現実主義 シュールレアリスム
超現実主義。20世紀の芸術思潮のひとつ。1924年にアンドレ・ブルトン(フランスの詩人、1896〜1966)の「シュルレアリスム第一宣言」により「シュルレアリスムとは口頭、記述、その他あらゆる手段で思考の真の過程を表現しようとする純粋な心的オートマティスムである」と定義された運動。美術、詩、文学、政治など広い範囲にわたって、想像力の解放と合理主義への反逆を唱え、人間自体の自由と変革を目指した。初期は、ダダを受け継ぎ、フロイトの心理学の影響を受け、オートマティスムの方法で夢、幻覚などに現われる意識下の非合理な領域に踏み込んだ。この時期を代表する画家にコラージュ、フロッタージュ、デカルコマニーの手法で不安な幻覚を定着したエルンストがいる。1930年頃から、政治への参加をめぐって運動は分裂する。後期の代表的作家には、偏執狂的批判的方法で幻想の即物的な表出を表現したダリがいる。また、第二次大戦中アメリカに亡命したシュルレアリストたちは、抽象表現主義の誕生に影響を与えた。
シュルレアリスム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/09 18:54 UTC 版)
シュルレアリスム[注 1](仏: surréalisme[注 2]、英: surrealism[注 3])は、戦間期にフランスで起こった作家アンドレ・ブルトンを中心とする文学・芸術運動である。すでに1919年から最初のシュルレアリスムの試みである自動記述が行われていたが、1924年にブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表し、運動が本格的に始まった。ブルトンはこの宣言でシュルレアリスムを「口頭、記述、その他のあらゆる方法によって、思考の真の動きを表現しようとする純粋な心的オートマティスム。理性による監視をすべて排除し、美的・道徳的なすべての先入見から離れた、思考の書き取り」と定義した[1]。シュルレアリスムはジークムント・フロイトの精神分析とカール・マルクスの革命思想を思想的基盤とし、無意識の探求・表出による人間の全体性の回復を目指した。ブルトンのほか、ルイ・アラゴン、ポール・エリュアール、フィリップ・スーポー、バンジャマン・ペレらの詩人を中心とする文学運動として始まったが、ジョルジョ・デ・キリコ、マックス・エルンストらの画家やマン・レイらの写真家が参加し、1920年代末頃からスペインやベルギーからもサルバドール・ダリ、ルイス・ブニュエル、ルネ・マグリット、カミーユ・ゲーマンスらが参加。分野もダリとブニュエルの『アンダルシアの犬』に代表される映画などを含む多岐にわたる芸術運動に発展した。
- 1 シュルレアリスムとは
- 2 シュルレアリスムの概要
固有名詞の分類
- シュルレアリスムのページへのリンク