クロイツナハIIIの麻薬密売組織捜査
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「銀河英雄伝説の戦役」の記事における「クロイツナハIIIの麻薬密売組織捜査」の解説
宇宙暦795年/帝国暦486年11月。アルレスハイム星域の会戦の後日談。この原作小説である「汚名」は、当初は通常の単行本に収録されていなかったが、西暦2002年3月発行の徳間デュアル文庫「銀河英雄伝説外伝1・黄金の翼」に収録された。外伝シリーズの中でも比較的早い時期に制作されている。なお、現行のBlu-rayリマスター版では、この「汚名」が全編の最終エピソードとなっている。 第4次ティアマト会戦とアスターテ会戦の間に、ラインハルトとキルヒアイスは休暇をとる事が出来た。ローエングラム家の家督を相続する各種手続きが必要なラインハルトの勧めで、キルヒアイスは先に一人で観光地クロイツナハIIIに赴いたが、滞在先のホテルで老人を襲う暴漢と遭遇し、これを撃退した。そしてキルヒアイスは、その老人が帝国暦483年にアルレスハイム星域で惨敗した愚将の汚名高いカイザーリング退役少将だと知り、伝えられるような暗愚さが相手に無い事を奇異に感じる。 その一方でキルヒアイスは、暴漢が正気を無くしている事にも気がついたが、事情聴取のため赴いた現地警察のホフマン警視から、暴漢が現役の軍人でサイオキシン麻薬中毒患者であると説明され得心が行った。だがサイオキシン麻薬の取引があるという密告があったのでその捜査に協力しろという申し出には納得が行かずに断ろうとしたものの、警察と軍隊との軋轢の存在を訴えられ、さらに麻薬中毒患者から生まれた奇形児の写真を見せられ、義憤にかられたキルヒアイスは協力の申し出を受諾した。 カイザーリングから招待された夕食の席で、キルヒアイスはバーゼル中将夫妻の話を聞かされ、バーゼルの妻ヨハンナの立体写真を見せられた。老人だが美しいと感じられるヨハンナに対するカイザーリングの気持ちと明哲な態度を知ったキルヒアイスは、なおさらアルレスハイム星域会戦の敗北の理由が分からなくなった。店を出た帰り道、ホフマンの出迎えを受けたキルヒアイスは、麻薬中毒の暴漢がかつてカイザーリング艦隊所属の兵士だった事を聞かされた。その夜、キルヒアイスに暗殺の手がのび、カイザーリングへの疑惑は一層増したが、その一方でバーゼル夫妻が予定より早くクロイツナハIIIに到着している事を知り、それがカイザーリングに伝わっていない事にキルヒアイスは不審を感じる。翌朝、カイザーリングの紹介でバーゼル退役中将と会ったキルヒアイスは、その人間性にやや不信を感じて到着日時の虚偽を改めて確認し、疑っている事を敢えてバーセルに気づかせた。その後、キルヒアイスは展望レストランで様子がおかしい男を見つけて尾行し、逆にフライングボールの競技場に誘い込まれてナイフを持った男達に襲われた。キルヒアイスはフライングボール特有の低重力フィールドで苦心しながらも反撃し、さらにシャッターを開けてその流血沙汰を外部にさらして野次馬に警察を呼ばせ、窮地を脱した。 その直後、ホフマンからキルヒアイスは、バーゼルがアルレスハイム星域会戦の時にカイザーリングの下で補給を担当しており、最初にカイザーリングを襲った麻薬中毒の暴漢がその補給部隊の兵士で、しかもバーゼル自身が会戦の直前に憲兵隊から麻薬不法所持の件で取調べを受け、カイザーリングの証言で無罪になっていた事を聞いた。そしてキルヒアイスは、バーゼルこそが麻薬組織の元締で、その麻薬禍によって中毒患者の将兵が暴発したというアルレスハイム星域の会戦の真相に気がつき、その証拠を得る決意でカイザーリングを訪ねて証言を促したが、ヨハンナに対するカイザーリングの想いがそれを拒んだ。アンネローゼに対する自分の想いと重ね合わせたキルヒアイスは、それ以上は何も言えなかった。 ホフマンの手引きでヨハンナと面会したキルヒアイスは、密告したのがヨハンナで、しかも匿名でバーゼルにも忠告したものの、それが逆効果となってバーゼルはカイザーリングが自分を裏切ったと考えて命を狙った、という構図を聞かされた。しかしそれでもなおバーゼルを愛するヨハンナは証言を断り、キルヒアイスとホフマンは、最後の手段としてバーゼルが自白するようにしむけた。策にかかったバーゼルはキルヒアイスを買収しようと試み、それが失敗するとキルヒアイスを殺そうとしたが、一連の発言がすべてホフマンによって録音されており、バーゼルは諦めた様子でヨハンナに事情を伝えたいと電話を入れた。それが証拠隠滅を命じたものだと気がついたキルヒアイスは、ヨハンナの部屋に駆けつけた。ヨハンナはバーゼルの意に沿って資料を暖炉で燃やそうとしており、キルヒアイスの説得にも耳を貸さず、彼女を止めるには撃つより他になかったがキルヒアイスは撃てなかった。しかし、後方から現れたカイザーリングがヨハンナを撃ち、自分を撃ったのがカイザーリングだと気づいたヨハンナは微笑みながら死んでいった。事件は解決したが、キルヒアイス自身には考えるべき問題がいくつか提起された。 そして、ようやく到着したラインハルトに羽を伸ばせたかと聞かれたキルヒアイスは、「私の羽は、ラインハルト様のおそばでこそ伸ばせるのです」という感慨深い一言を述べた。
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