アニメ版の特色
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「宇宙海賊キャプテンハーロック」の記事における「アニメ版の特色」の解説
りんたろうやメインライター上原正三らのアニメスタッフにより大幅な脚色が加えられ、地球側やマゾーン側に原作では登場しないキャラクターが多数登場することとなった。これによりトチローの娘「まゆ」が創作され、このまゆの存在がハーロックが地球を守る理由付けになっている。これは「ハーロックの哲学」に関わる問題であり、この「改変」をめぐって、原作者である松本零士とスタッフとの間で激論が行われたという逸話が残る。結果的には、アニメスタッフ側の熱意に松本が折れる形で承認を取り付けたという。ハーロックが地球を守る理由を示す「まゆ」と共に、ハーロックに歯向かう気骨ある軍人として登場する敵役の切田長官もアニメオリジナルキャラクターとして加えられ、原作よりさらに視聴者に理解しやすい作劇の作品となった。また、エメラルダスは版権の問題から登場させることができず、彼女に相当するキャラクターとしてエメラーダが創作され、ハーロックがトチローと共に過ごした日々を回想する30話と31話でまゆの母として登場することとなった。 「母星を失い、長い流浪の旅の果てに地球へ移住し、第二の母星とする」というマゾーンの目的も明確に描かれた。原作終盤でハーロックによって提示され、明確な答えが出ていなかった「移住の目的地がなぜ地球なのか」という問いに対しても、アニメ版では26話で移住先を決めるマゾーン達の会議においてラフレシアが地球を提示すると、それに賛同したテシウスの「ふるさとがある以上はふるさとを目指すべきであり、祖先が今日を見越して残した第二のふるさと地球に移り住むのは我々の使命」という主張に周囲が同調する形で決定したという描写となっている。 「ハーロックと台羽という2人の男を通じて40代の男と若い20代の男の価値観の違いを表現できたらと考え、2人の男のタイプの違いをもっと作中に出したかった」とするりんの意図により、ハーロックは「自分の死に場所を求めて生きる男」として描写されているのに対し、台羽は「なにがなんでも、これから生きていく若者」として描写されている。また企画の田宮武は後年、本作をやっていた当時を振り返って自分がマニアに目がいってしまっていたことを述懐している。 ビジュアル面での大きな変更点としては、アルカディア号の船体色が原作のカラーページや関連イラストなどでのミリタリー風の緑からアニメ版では青に変更されていることが挙げられる。これはマーチャンダイジングを前提としたスポンサーサイドや制作側の意向に沿った変更である。また原作が艦載機は戦闘機スペースウルフが主として描写され、あとは偵察隊が使用の大型戦闘機コスモバットや台羽救出の際に登場する探査艇風の機体くらいしか艦載機らしきものは登場していないのに対し、アニメではタカラから発売する玩具を増やすための措置として戦闘機「ボレット」、ボレット支援のための中型輸送艇「コスモウイング」も登場した。原作でもアニメの設定を反映してボレットやコスモウイングの名称はセリフ中に挙がりはするものの、結果的にはその機体が描かれていない。 未完の原作に対してアニメ版は多くのエピソードが追加され、アルカディア号クルーの過去を取り上げた話のほか、長い旅の中でのマゾーン同士の政策対立や集団脱走なども描かれた。ラストはまゆや台羽ら若者に地球復興を託し、ハーロックはミーメ以外の乗員を降ろしてトチローの心が宿るアルカディア号で地球を去るという形で終わっている。乗員を降ろし、大切な人物の心を持った船と共にハーロックが宇宙の彼方へ旅立つというラストは『プレイコミック』1975年11月13日号掲載の「宇宙戦艦デスシャドー」(短編集『帰らざる時の物語』収録)で松本自身の筆で既に描かれているが、この作品に登場する主役メカのデスシャドウ号は「死んだ親友の心を宿した船」ではなく、「恋人の生首をケーブルで機械的に接続した船」となっている。ラストシーンには太宰治の小説「右大臣実朝」からの一文が引用されている。この引用についてりんは「解釈は観た人にお任せします。深い意味はないけど、僕自身の中ではあれが出ないと終わらないという思いがあったのです。」と述べている。 原作肯定派、アニメ肯定派という形にも分かれたようで、「松本零士のハーロックではない」という評価も一方では受けており、松本本人もインタビューで「私の描くハーロックと少し離れた感じはありますね」と述べているが、りんと上原の解釈によるハーロック像を生んだともいえ、松本零士のヒーロー像とは異なる、もう一人のハーロック像を築きあげている。
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