上総掘りの技術とは? わかりやすく解説

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上総掘りの技術

名称: 上総掘りの技術
ふりがな かずさぼりのぎじゅつ
種別1: 民俗技術
保護団体名: 上総掘り技術伝承研究会
指定年月日 2006.03.15(平成18.03.15)
都道府県(列記): 千葉県
市区町村(列記): 上総地方
代表都道府県 千葉県
備考 上総掘り用具類は、昭和35年平成7年追加指定)に重要有形民俗文化財指定された「上総掘り用具」(258点)の一部構成している。
解説文:  上総掘りの技術は、千葉県の上地方考案され掘り抜き井戸掘削技術で、細長い鉄管とそれを地中の孔に吊す竹製ヒゴ基本的な用具とし、用具自重利用しながら専ら人力頼り地下掘り進み帯水層にある地下水掘り当てる技術である。この技術は、上総地方職人によって日本各地広められたことから、一般に上総掘り呼ばれており、道具立て技術習得容易さから、従来掘り抜き井戸掘削技術に代わって短期間のうちに広く普及した
 上総地方は、豊富な地下水有する関東地下水盆の東南部位置し地層的にも岩盤含まない比較掘りやすい地質構造であるが、河岸段丘発達した地形によって耕地流水面との高低差著しく十分な灌漑用水得られなかったため、慢性的な農業用水の不足に悩まされてきた。こうした自然の制約克服し地下水取水利用する技術として考案されたのが上総掘りである。この技術成立背景には、当地方の人たちの水田作り農業経営安定化への強い願いがあり、この技術習得した一般農民層から、経験積んで技術習得した者たちがしだいに専業職人となって輩出し各地赴いて井戸の掘削活躍した
 上総地方では、昭和三十年代半ばころまで、小糸【こいと】川や小櫃【おびつ】川をはじめ、湊川養老川など上総地方主要河川流域で、井戸掘り専業とする職人たちが活動しており、数多く灌漑用飲料用井戸設けられた。近代的な水道発達ボーリング技術発展普及するに伴い上総掘りはしだい衰退余儀なくされたが、小資本簡便な地下水掘削には今日でもその技術活用されている。
 上総掘り成立以前掘り抜き井戸掘削技術は、高い組み長くてい鉄棒を梃子【てこ】などを使って引き上げた後に急激に落下させ、その重量衝撃地面突き抜くという方法であった鉄棒用いた井戸の突掘り技術は、近世関西地方盛んに用いられていた技術であり、近世後期には江戸経由して上総地方にも伝えられた。しかし、この方法は多く労力日数を必要とし、掘削できる深度二〇間(約三六メートル程度浅くまた、鉄棒落下に伴う事故頻繁に生じるなどの欠陥があった。そこで、鉄棒代えて軽量棒を利用する掘り技術考案され、さらに、こうした従来技術改良加えて考案されたのが上総掘りである。
 上総掘りは、鑿【のみ】を先端に付け鉄管割竹製の帯状ヒゴ使用し人力のみで地面突いて細い竪穴掘っていくものである鉄管は、ホリテッカン(掘り鉄管)と呼ばれ長さ六~八メートル、径九~二寸ほどの細長い鉄管加工したのである。ホリテッカンの先には、サキワと呼ばれる円筒形鉄製の鑿が付けられ反対側にはヒゴ接続される。このヒゴ部分に付けられたシュモク呼ばれる取っ手握り、ホリテッカンを突き下ろす動作繰り返し、孔底を突き崩しながら掘り進んでいく。ヒゴ孟宗竹を幅二センチメートルほどに割ったもので、掘り進む深度合わせて次々と繋いで延長していく。掘削時にはネバミズと呼ばれる粘土を孔に注ぎ入れ地面柔らかくして掘削時の先の熱を冷やしたり、掘屑を溶かしてその回収容易にするとともに、孔壁に吸着させて崩壊を防ぐ。ホリテッカン先端内部には、コシタ呼ばれる弁が装着されている。鉄管突き下ろすとこのコシタの弁が開き作業中に生じる掘屑が管内回収される。掘屑がいっぱいになると、ヒゴ巻き上げて鉄管内の掘屑を地上排出させるとともに、ホリテッカンをスイコ呼ばれるトタン製の筒に代えて中に溜まった掘屑を浚【さら】い出す。この作業繰り返しながら、目的帯水層まで掘り進んでいく。を含む層はシキといい、このシキ層の見分け重要な技術であり、掘屑に混じる砂の色や含水性をみて水の良否や帯水量判断する掘削進度は、個人差があるが、一日に約三間(約五・四メートル程度といわれている。
 このような掘削方法は、一見単調にみえるが、掘り進む地質によってさまざな技術使い分けられている。固い地層や礫層を掘る場合は、サキワの種類を輪一【わいち】や一文字いちもんじ】と呼ばれる横刃を付けたに付け替えたり、タタキボリと称して鉄管を孔底に強く打ちつける方法用いられ砂地を掘る場合は、孔底に鉄管突き当たる直前突き上げ、孔中で砂を煽【あお】るように掘るスクイボリと呼ばれる方法が採られるなど、微妙な加減を必要とする手掘りならではの独特な技術みられるまた、掘削作業労力軽減するため、ハネギ呼ばれる竹にヒゴ連結してその弾力利用するとともに鉄管スイコ引き上げたり、孔中に下ろすときには、ヒゴグルマと呼ばれるヒゴ巻き取る車輪状の木枠用いる。



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