『プー横丁にたった家』
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「クマのプーさん」の記事における「『プー横丁にたった家』」の解説
『プー横丁にたった家』(1928年)は、『クマのプーさん』と同じく前書きにあたる文章と10編のエピソードから構成されている。前書きにあたる部分は「コントラディクション」と題されており、本文では今作で物語が終わりになることが示唆されている。今作では『クマのプーさん』とは異なり、語り手とクリストファー・ロビンが語り合う場面は描かれていない。表題の『プー横丁にたった家』は、本編の最初のエピソードに由来している。この章では雪の降る寒い日に、プーとピグレットはイーヨーのために「プー横丁」と名付けた場所に家を建ててやろうとするが、その家を建てるために使った材料は、イーヨーがすでに自分で建てた家であった。しかし「プー横丁」のほうが場所柄がよかったために、イーヨーは不審に思いながらも満足する。 今作の第2章からは、新たなキャラクターとして虎の子供のティガーが登場する。夜中にプーの家の前に迷い込んできたティガーに、プーはなにか食べ物を与えようとするが、自分のハチミツをあげても、森の仲間たちを訪ね歩いていろいろなものを与えてもどれもティガーの気に入らない。しかし最後に幼いルーが食べていた麦芽エキスが好物だったと判明する。第4章では、ティガーは見得をはってルーとともに木の上に登ったところ降りられなくなってしまう。2匹はクリストファー・ロビンの機転によって、みんなで広げた彼の上着の上に着地することで助けられるが、イーヨーはティガーの下敷きになってしまう。第6章では、イーヨーは川を流れてきて、ティガーから跳ね飛ばされて川に落ちたと主張する。言い合いになった彼らに対して、クリストファー・ロビンはプーが発明した「プー棒投げ」という棒流し遊びをみんなですることを提案し、この遊びを通じて事態は丸く収められる。しかしこのようなティガーの「はねっかえり」な態度が目に余ったラビットは第7章において、彼の態度を正すために、プーたちといっしょに森の中に誘い込んでそこにティガーを置き去りにするという計画をたてる。しかしその過程で自分たちが森の中で迷子になってしまい、ラビットは逆にティガーによって助け出されることになる。 今作ではまた前作とつながりのあるエピソードが第3章に置かれている。ここではプーとピグレットは、前作中で「ヘファランプ」を捉えるために自分たちで掘った落とし穴の中に誤って落ちてしまう。ピグレットは穴の外から声をかけてきたクリストファー・ロビンを「ヘファランプ」と勘違いしておびえ、そのために恥じ入るが、しかし行方不明になっていたラビットの親戚(カブトムシ)をプーの背中に発見して面目を保つ。後半の第8章はピグレットのより大きな活躍が語られている。ここではプーとピグレットは、オウルの家を訪問中、大風によってその家が倒壊したために家の中に閉じ込められてしまう。しかしピグレットは、プーに鼓舞されながらひもを伝って郵便受けから脱出し、プーたちのために救援を呼ぶことに成功する。続く第9章では、家をなくしてしまったオウルのために皆で新しい家を探すが、イーヨーがピグレットの家を空き家と勘違いして報告しにくると、ピグレットは勇気を出してオウルにその家を譲り、以降はプーといっしょの家に住むことに決める。 一方、中盤の第5章には、クリストファー・ロビンが成長しつつあることを示唆するエピソードが置かれている。ここでは森の仲間たちは、クリストファー・ロビンの家の前に張られていた謎の張り紙に困惑するが、後日正しく綴られた張り紙が貼られたことによって、クリストファー・ロビンが午前中勉強をしに出かけているのだということが判明する。やがてクリストファー・ロビンとの別れが近づいていることを感じ取った森の仲間たちは、第10章において会議を開き、クリストファー・ロビンにあてた別れの挨拶として「決議文」を作って彼に渡し、そして彼がそれを読んでいる間に次々と立ち去っていく。残されたプーとクリストファー・ロビンは連れ立って魔法の場所である「ギャレオンくぼ地」に行き、そこでクリストファー・ロビンはプーに世の中の様々なことを話しあう。騎士の話に引かれたプーは、彼に頼んで自分を騎士に叙してもらう。それからクリストファー・ロビンはプーに、自分はもう「なにもしない」をすることができなくなってしまったと告げる。そしてこの場所で再会することを誓いあうと、ふたりはまたどこかへと出かけていく。 ままぐるみという設定で、挿絵でも体表が体毛ではなく布地のようにのっぺりと描かれている。 くまのプーさん(Winnie-the-Pooh) のんびりやのテディベア。好物はハチミツで、家にハチミツを入れた壺を溜め込んでおり、11時の「ちょっとひとくち」の時間を楽しみにしている。頭はあまり良くなく、字の読み書きもあまりできないが、詩をつくるのが好きで自作の詩をよく口ずさむ。 家の表札には「サンダースさん」と、以前住んでいたとされる人の名前が書かれている。サンダースが本名と書かれたものがあるが誤訳。 ピグレット(コブタ/コプタ、Piglet/Piglit) プーの親友で、体が小さくて気の弱い子豚。好物はドングリ。森のまんなかにあるブナの木の、そのまんなかにある家に住んでいる。家の近くに"TRESPASSERS WILL BE PROSECUTED"(直訳すると「侵入者は訴追される」で、「通り抜け禁止」の意)と書かれた立札から字が脱落して"TRESPASSERS W"となったものが立っており、ピグレット自身はこれが自分の祖父の名前"Trespassers William"(直訳すると「侵入者のウィリアム」、石井桃子による日本語訳では「トオリヌケ キンジロウ」)だと思っている。 イーヨー (Eeyore) 暗くてひねくれもののロバ。周りのものに処世訓をたれるのを好む。森のすみの湿っぽい場所にいたが、プーとピグレットによって新たに家が建て直されてからは「プー横丁」と名づけられた場所に住むようになる。アザミが好物。 ティガー(Tigger) ラビットの若手と親友で、ある日突然森にやってきた虎の子供。きかん気(はねっかえり)が強く森の仲間の一部から少し厄介がられている。体は大きいが実際はルーと同じくらい幼く、ルーといっしょにカンガに面倒を見られることになる。麦芽エキスが好物。 ラビット(Rabbit) ティガーの若手と親友で、砂地の土手の穴に住んでいる利口者のウサギ。計画をたてたり指図したりすることを好む。様々な種類の動物からなるたくさんの親戚がいる。 カンガ(Kanga) いつの間にか森に住みつくようになったカンガルーの母子。子供のルーはまだ幼く、やんちゃな性格。 ルー(Roo) 母親のカンガはのちにティガーの面倒もいっしょに見るようになる。 クリストファー・ロビン(Christopher Robin) 森のはずれの高台に住んでいる少年。字の読み書きができ、いつも名案を思いつくので森の仲間たちからたよりにされている。彼自身も特にプーのことを気にかけてよく面倒をみている。 オウル(フクロ/クフロ、Owl/Wol) 百エーカーの森に住んでいるフクロウ。難しい言葉を好んで話す。難しい字の読み書きが(ある程度)できるので森の仲間たちから尊敬されている。
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