「寮生追い出し」問題
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「京都大学吉田寮」の記事における「「寮生追い出し」問題」の解説
2017年12月19日、京都大学は公式ホームページおよび吉田寮に住んでいる学生の学校用メールアドレス、吉田寮自治会に対して、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」が決定されたと通知した。決定された理由として、現棟が築100年以上で老朽化が深刻で危険であること、計5回の入寮募集停止にもかかわらず募集を行い大学の定める総収容定員を超えたことが挙げられている。 以下は基本方針である。 平成30年1月以降、吉田寮への新規入寮は認めない。 平成30年9月末日までに、現在吉田寮に入舎している全ての学生は退舎しなければならない。 退舎にあたって、平成30年4月時点で本学正規学生の学籍を有する吉田寮生については、希望する者に本学が代替宿舎を用意し、その代替宿舎に現在の寄宿料で居住させる。ただし、代替宿舎での光熱水費については、使用者である寮生の負担とする。また、代替宿舎での居住の終期は、原則として、当該寮生の正規生としての学籍の修業年限(大学院生については標準修業年限)の終期とする。 吉田寮現棟の老朽化対策については、本学学生の福利厚生の一層の充実のために収容定員の増加を念頭に置きつつ、検討を進める。 一方、吉田寮自治会は反対し抗議声明をホームページに記載した。以下が抗議声明の概観である。 「基本方針」の策定は一方的であり、当事者との合意形成を無視している。 吉田寮自治会の入退寮者決定権を侵害している。 「基本方針」には多数の事実誤認が散見される。特に寮自治会と大学当局がこれまで現棟の補修について議論を積み重ねてきたことを無視している。 6月22日、奈倉道隆ら吉田寮出身者で組織される「21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会」が総長の山極寿一に2018年9月以降に吉田寮の旧棟を保存活用するよう求める要請書を提出した。京都大学は要請書に回答せず、7月27日、同会は改めて質問状を提出した。また同会の情報開示請求により、日本建築学会近畿支部の「京都大学吉田寮の保存活用に関する要望書」および建築史学会の「京都大学学生寄宿舎吉田寮の保存活用に関する要望書」について、京都大学が学内で議論を行わず、回答もしていないことが判明した。 6月29日、吉田寮自治会は大学当局に対して交渉を申し入れ、7月13日に吉田寮自治会と川添副学長はじめ大学当局の代表者が3年ぶりに「話し合い」をした。この話し合いは川添副学長の要求に寮生側が応える形で、非公開かつ少人数で実施された。この話し合いを通じて、大学当局と吉田寮自治会は以下について口頭で確認した。吉田寮自治会は文書での確認を要求したが、川添副学長は「口頭で十分」と同意しなかった。 過去の確約が存在しそれで合意がはかられていたことを前提とし、内容について今後話し合う。 現棟の老朽化対策について吉田寮自治会の改修案の3案を今後大学内で検討し、寮自治会にフィードバックする。 現棟の老朽化対策について、大学の専門家を交えた話し合いを吉田寮自治会とし得る。 現棟の耐震調査については、今後検討していく。 現棟の老朽化対策について、大学当局は吉田寮自治会と話し合いを継続していく。 西寮使用について、大学当局は吉田寮自治会と協議を継続していく。 8月3日、吉田寮自治会は記者会見を開き、交渉の様子を報告した。吉田寮自治会によると、吉田寮側は現状をできるだけ残した補修など三通りの補修案を提案、大学側は持ち帰って検討すると答えたものの、大学側の検討する対策案は示さなかった。また川添副学長は「これは交渉ではない」「君たちと合意形成をするつもりはない」「納得して出て行ってほしいが、納得しなくても出て行ってもらう」などと主張したほか、吉田寮自治会が杉万前副学長との確約「大学当局の募停は要請に過ぎず今後撤回に向けて話し合う」に基づき入寮募集を継続していることについて「けしからん」と寮生を怒鳴りつけ、「恫喝と取っていい」と述べた。寮生側は川添副学長の態度について「信頼関係を培うのは難しい」と懸念を示し、「今後も話し合いは続けたいが、大学当局の方針が絶対ではない。寮を実際に運営する側の声に耳を傾けてほしい」と主張した。 8月30日、吉田寮自治会は大学当局との2度目の話し合いをしたが、川添理事は今回も合意形成に応じることなく、「意見は聞いた」とだけ言い残して会場から退出した。9月4日、吉田寮自治会は川添理事に次回交渉の日程を提示するよう要求したが、川添理事は14日、「吉田寮自治会が同様の説明と質問を繰り返すだけで、今後話し合いが建設的なものになることを期待することは困難である」ことや「秋期入寮選考を行う旨を公表」したことを理由に吉田寮自治会との交渉を拒否した。一方、吉田寮自治会は「話し合いが建設的でない原因は大学当局にある」「入寮募集の停止は協議事項であり、当局が一方的に停止を決定してはならない」と主張して川添理事に抗議し、早急な話し合いの再開を要求した。 9月23日、吉田寮の有志らが寮の再生を考えるシンポジウム「市民と考える吉田寮再生100年プロジェクト」を吉田キャンパスで開催した。学生や地域住民ら150人が参加し、尾池和夫京都造形芸術大学長(もと京大総長)ら13名のコメンテーターが公募で寄せられた吉田寮再生のアイデアについて話し合った。 2019年4月26日、京大側は、退去要請に応じず吉田寮に住み続けている寮生20人に対し、不法占有であるとして明け渡しを求める訴訟を、同日付で京都地方裁判所に提起した。
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