《知る》の謙譲語
「知る」の謙譲語表現
「知る」は「しる」と読み、「(ものごとの存在を)認める、気づく、把握する、記憶する」「(人と)つき合いがある、面識がある」などの意味を持つラ行五段活用の動詞です。「知る」の謙譲語は「存じる」ですが、現在の日本語では「存じる」の形で使うことはできません。「存じる」を使う際は、必ず丁寧語の助動詞「ます」と共に丁寧体で使います。従って、「知る」の謙譲語は「存じます」です。「存じます」を標準形に直した場合、「知ります」になります。しかし「知る」は、動作が一瞬で終わりその結果が残っていることを表す瞬間動詞です。瞬間動詞は、語尾が「~ている」という形になります。「知る」という動詞は、一瞬で「知って」「知っている」という結果が残っている状態です。つまり「知る」の謙譲語は、通常「存じています」という形で使います。また「存じ上げています」も「知る」の謙譲語です。
「知る」の謙譲語の最上級の表現
日本における最上級の敬語は、最高敬語という尊敬語です。最高敬語は天皇や皇族、王や王族に対してのみ使います。謙譲語には最高敬語はありませんが、天皇や皇族に対してはわざと1つの言葉に同種の敬語を重ねた二重敬語を使って敬意を表します。従って、「存じています」の最上級の表現は二重敬語となり「存じ奉る」です。構造としては「知る」の謙譲語「存じる」の連用形に、謙譲を表す助動詞の「奉る」がついています。「知る」の謙譲語のビジネスメール・手紙での例文
「知る」の謙譲語は「存じています」または「存じ上げています」であり、もともと丁寧体なのでビジネスメールや手紙でもこのままの形で使うことができます。「〇〇さんのことは存じています」「〇〇さんのことは存じ上げています」といった具合です。社内メールなら、このような使い方で問題はありません。しかし社外に送るメールを含む文章では、通常、話し言葉よりも改まった表現をします。そこで「います」をさらに丁寧にした、「おります」という助動詞を使います。たとえば、取り引き先に送るメールなら「○○様のことは、よく存じております」「◯◯様のことは、よく存じ上げております」となります。
「知る」を上司に伝える際の謙譲語表現
「知る」を上司に伝える際も、基本的には文章の場合と同じで「存じています」または「存じ上げています」を使います。上司との関係性によって、丁寧の度合いを変えることもできます。直属の上司で相手をよく知っている場合には、「◯◯さんのことは存じています」や「◯◯さんのことは存じ上げています」でもかまいません。あまり顔を合わせない地位の高い上司や、あまり知らない他部署の上司の場合は「◯◯さんのことは存じております」や「◯◯さんのことは存じ上げております」の方が無難でしょう。「知る」の謙譲語での誤用表現・注意事項
「存じています」も「存じ上げています」も「知る」の謙譲語ですが、謙譲語の種類が異なるので使うときには注意が必要です。「存じています」は丁重語と呼ばれる特殊な謙譲語で、フォーマルな場で聞き手や読み手を意識して使います。「存じています」は人だけでなくものや場所にも使えるので、ビジネスなどのフォーマルなシーンでは「存じています」を使う方が間違いが少なくなります。一方の「存じ上げています」は、人に対してのみ使える言葉です。「◯◯様のことは、よく存じ上げております」は正しい使い方ですが、「御社の場所は、よく存じ上げております」は間違っています。敬意を表している対象が、人ではないからです。
「存じ上げています」は「知る」の謙譲語「存じる」に、動詞の連用形のあとについて複合語を作る「上げる」という動詞がついた形です。「存じ上げる」になると、丁重語ではなく通常の謙譲語として扱われます。そのため敬意を表す対象は、人のみとなります。「御社の場所は、よく存じ上げております」が誤用になるのは、このような理由です。
「存じる」の表記については、「存知る」は当て字です。辞書によっては、間違いとしているものもあります。「存じる」と同じ意味のある「承知」という漢語表現と混同され、「存知」も漢語表現だと認識された結果ではないかと考えられています。
「知る」の謙譲語での言い換え表現
「知る」の通常の意味での言い換えは、「承知する」です。承知するの謙譲語は「承知しています」になります。「認める」という意味で使う場合の言い換えには、「受け入れる」「承諾する」「承認する」などがあります。謙譲語は「受け入れます」「承諾します」「承認します」です。「気づく」の言い換えとしては、「察する」「わかる」などが挙げられます。謙譲語は「お察しします」「ご理解しています」です。
「把握する」の言い換えは、「理解する」です。謙譲語は「ご理解しています」になります。「記憶する」の言い換えには、「覚える」があります。謙譲語は「覚えています」です。「つき合いがある」を言い換えると、「行き来する」になります。謙譲語は「行き来しています」です。「面識がある」の言い換えは、「見知っている」です。謙譲語は「見知っています」になります。
《知る》の謙譲語
知るの敬語表現
知るという言葉の基本的な意味としては、物事の存在や発生したことを確かにそのとおりだと認めるというものがあります。知るの謙譲語は、「存じる」・「存じ上げる」という言葉です。謙譲語は相手に対して遜った態度を取る時や、控えめな態度を取りたい場合に使う表現ですから、知ると言う動作を遜って使う時に、「存じる」・「存じ上げる」を使用します。「存じ上げる」は「存じる」という謙譲語に、さらに「上げる」を加えた言葉なので、「存じ上げる」を使う方がより敬意が強くなります。知るの謙譲語の使う場面は、自分の知るという動作を目上の方に伝えようとする時です。より丁寧に表現したいときは、「存じる」・「存じ上げる」という言葉の後ろに、「おります」という語尾をつけるのがいいでしょう。また目上の方であっても自分の身内に使う場合は、取引先や社外のお客様を立てるために謙譲語として、「存じる」・「存じ上げる」を使います。知るの敬語での誤用表現・注意事項
知るの謙譲語を使うときに注意しなければいけないのは、使いすぎを避けないといけないところです。この表現を使いすぎてしまうと場の雰囲気が堅苦しくなってしまうので、中々打ち解けることができなくなります。「存じます」と「存じ上げます」も間違いやすい表現ですから、意味の違いに考慮して使用してください。「存じます」は人以外のものに対して使い、「存じ上げます」は人に対して使うということを知っておけば相手に対して失礼にならないでしょう。「させていただきたく存じます」も使用時に注意が必要な表現です。「させていただきたく存じます」として「存じます」を使うときは、相手に許可を取った場合などに限ります。自分から申し出たときには「させていただきたく存じます」という表現は、避けたほうがいいでしょう。知るの敬語での言い換え表現
知るの謙譲語の言い換え表現は、「承知してます」・「心得ております」・「お察しします」・「所存です」の4つが主に使われています。相手に理解したことを伝えたいときには、「承知してます」を使用するといいでしょう。物事を把握して居る旨を相手に伝えたい場合は、「心得ております」がよく利用されます。同情している意思を相手に伝えたい時には、「お察しします」を使うと良いです。「所存です」は相手に決意や意思を伝えたい時に使われます。言い換え表現を選択することによって、表現がしつこくなることを回避できるのでとても便利です。表現が単調だと感じた場合に使用します。- 《知る》の謙譲語のページへのリンク