《知らなかった》の敬語
「知らなかった」の敬語表現
「知らなかった」は「知らない」の過去形です。尊敬語は「ご存知なかった」丁寧語は「知りませんでした」、謙譲語は「存じ上げなかった」または「存じませんでした」となります。「存じませんでした」は謙譲語の丁重語で、改まった場で場や聴衆を意識して使います。現在の日本語では普通体の「存じなかった」を使うことはできないので、丁寧体で使うのが基本です。「知らなかった」の敬語の最上級の表現
敬語の最上級の表現は、天皇や皇族などに対してのみ使う最高敬語です。しかし「知らなかった」には最高敬語としての特別な言葉はないため、わざと同じ種類の敬語を2つ重ねて二重敬語を使います。従って「知らなかった」の最上級の尊敬語は、二重敬語の「ご存知になられなかった」です。謙譲語の最上級の表現も、二重敬語の「存じ上げ奉らなかった」または「存じ奉りませんでした」となります。「知らなかった」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
ビジネスメールなどで「知らなかった」を使う場合で、自分より目上の相手が知らなかったときは尊敬語の「ご存知なかった」を使います。たとえば「昨日の会合について◯◯部長はご存知なかったようなので、概要をメールでお送りいたしました。◯◯部長にお伝えください」などのように使います。自分が知らなかったときは謙譲語の「存じ上げなかった」を使って、「御社の◯◯部長のお顔を存じ上げなかったので、昨日はご挨拶できずに申し訳ございませんでした」といった使い方をします。丁重語はフォーマルな場の読み手も意識するので、「当方のメールの設定ミスで、昨日の会合について存じませんでした。出席できず申し訳ございません」のように書くことが可能です。ただし相手が同僚や部下の場合は、堅苦しくなり過ぎないように丁寧語の「知りませんでした」を使うこともできます。その場合は「メールの設定ミスで、昨日の会合について知りませんでした。申し訳ありませんが、概要をメールで知らせていただけないでしょうか」などのようになります。
「知らなかった」を上司に伝える際の敬語表現
自分より目上の人が知らなかったことを上司に伝える場合にも、基本的にはメールなどの場合と同じく尊敬語の「ご存知なかった」を用います。「◯◯部長が新規取引先の担当者の名前をご存知なかったので、メモ用紙に書いてお渡ししました」のようになります。自分が知らなかったときに使うのは、やはり謙譲語の「存じ上げなかった」です。「この案件に◯◯部長が関わっていらっしゃることを存じ上げなかったため、ご連絡いたしませんでした。申し訳ございません」などのように使います。敬意の対象となる人がいない場合や会議の席などで周りに他の社員がいる場合などには、「今回の打ち合わせにはアンケートの集計結果だけでなく、回収したアンケート用紙も必要だということを存じませんでした」などのように丁重語の「存じませんでした」を使います。「知らなかった」の敬語での誤用表現・注意事項
「存じ上げなかった」と「存じませんでした」はどちらも謙譲語ですが、先に述べた通り謙譲語の種類が異なります。「存じ上げなかった」は一般的な謙譲語なので、敬意を表する特定の相手がいる場合にしか使えません。それに対して「存じませんでした」はフォーマルな場で不特定多数の聴衆を意識しているので、使う側がフォーマルな場だと感じれば使うことができます。従って「私は御社の場所を存じ上げませんでした」は誤用表現となります。「私は御社の場所を存じませんでした」が正しい表現です。「私は御社の◯◯様を存じ上げませんでした」と「私は御社の◯◯様を存じませんでした」は、どちらも正しい表現になります。この場合の「存じ上げませんでした」は「存じ上げなかった」の丁寧体です。もともと「知らない」は「知っている」の否定形で、ネガティブな印象のある表現です。敬語を使ったとしても、ただ単に「ご存知なかった」「存じ上げなかった」「存じませんでした」と言ったのでは、相手をバカにしたり責任を押し付けようとしているように聞こえてしまうことがあります。そのため「知らなかった」を使う場合には注意が必要です。尊敬語だったとしても、本人に向かって「◯◯部長がデータの移し替えの方法をご存知なかったので、私がやっておきました」などと言うと失礼になります。「◯◯部長のお顔を存じ上げなかったので、昨日はご挨拶できませんでした」とだけ言ってしまうと、それが事実だったとしても言い訳に聞こえます。このような場合は「失礼ながら」などの言葉を頭に付けて、クッションにすると柔らかい表現になります。
「知らなかった」の敬語での言い換え表現
「知らなかった」の言い換え表現には「心当たりがなかった」「わからなかった」などがあります。「心当たりがなかった」の尊敬語は「お心当たりがなかった」です。丁寧語は「心当たりがありませんでした」謙譲語は「知らなかった」と同じ、「存じ上げなかった」「存じませんでした」となります。「わからなかった」の尊敬語は「おわかりにならなかった」、丁寧語は「わかりませんでした」です。「わからなかった」の謙譲語も、「存じ上げなかった」「存じませんでした」となります。
- 《知らなかった》の敬語のページへのリンク