《知らない》の敬語
「知らない」の敬語表現
「知らない」の敬語は、丁寧語である「知りません」です。また、謙譲語の「存じません」も広く使われています。「知らない」の敬語の最上級の表現
「知らない」の敬語の最上級は「存じ上げません」です。これは「存じません」をより丁寧に言い換えた形です。相手の社会的地位が高かったり、強い敬意を込めるべき相手だったりする場合には、「存じ上げません」を使うようにしましょう。「知らない」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
顧客や取引先とのやり取りでは特に、「存じません」や「存じ上げません」を使うのが礼儀です。以下、「存じません」や「存じ上げません」を使った例文を挙げます。「先方から言われた商品を私は存じませんでした。次の商談までにリサーチしておくつもりです。以上、よろしくお願いいたします」「たいへん申し訳ないのですが、私は当時の担当者を存じ上げません。ご希望であれば別の人間をご紹介いたしますが、いかがでしょうか」
同僚への手紙、簡潔なメールでは「知りません」を使うことも可能です。「存じません」では堅苦しい印象になりそうなときは、「知りません」と書いても間違いにはなりません。ただ、目上の人に「知りません」と書くのは失礼になりかねないので、相手を選びましょう。以下、「知りません」を使った例文です。
「私は進捗をまったく知りませんでした。教えていただき感謝しています」「取り急ぎ返信ですが、私はトラブルの経緯を知りません。至急、電話で報告してください」
ビジネスメールや手紙では、クッション言葉を使うこともひとつの方法です。文章や会話が断定的にならないようにすれば、受け手が感じる印象もやわらぐでしょう。顧客や上司とのやりとりでは特に、表現をやわらげることが大切だといえます。以下、クッション言葉を使った、「知らない」の敬語表現の例です。
「たいへん申し訳ないのですが、私はその場所を存じません」「失礼ながら、私は課長を存じ上げませんでした。すみません。この機会に、二度と失礼がないよう努めます」
そのほか、ビジネスシーンでは何かを「知らない」原因が、自分自身にあるという伝え方をするのがマナーです。少しでも、「知らなくて当然」「言われなかったから知らなかった」などのニュアンスが含まれてしまうと、失礼にあたります。自分の非を強調するために使われるクッション言葉としては、「不勉強ながら」「お恥ずかしい話ですが」などが挙げられます。以下、例文です。
「不勉強ながら、送っていただいた内容を存じませんでした。お手数ですがもう一度、ご説明いただけますか」「お恥ずかしい話ですが、お客様の詳しい業務内容を存じませんでした。この機会に、教えていただければ幸いです」
「知らない」を上司に伝える際の敬語表現
上司に何かを「知らない」と伝える際には、「知りません」とはいいません。必ず「存じません」か「存じ上げません」を使うようにしましょう。「知りません」はややカジュアルな言い回しであり、強い敬意が含まれていないといえます。目上の相手に用いると、不愉快にさせるリスクがあります。「知らない」の敬語での誤用表現・注意事項
物や出来事を知らないときには「存じません」を使っても大きな問題にはなりません。ただし、人を知らないと伝える際には、できるだけ失礼にならないよう「存じ上げません」を用いるのがマナーです。また、「存じません」や「存じ上げません」は謙譲語なので、主語は自分か身内の人間です。つまり、身内以外や目上の人間を主語にするのは間違いです。「お客さまは暗証番号を存じ上げません」といった文章は、敬語の誤用になるので注意しましょう。主語が目上の人間であるときの敬語には、尊敬語の「ご存じない」を使います。たとえば、「お客様は暗証番号をご存じないでしょうか」とするのが正解です。さらに、「知らない」の敬語表現では前後の語句も意識しましょう。なぜなら敬語に直したとしても、何かを「知らない」と断言するのはかなり強い否定になってしまうからです。ビジネスシーンにおいては、「知らない」と言い切ってしまうことで商談が途切れてしまう可能性もあります。そうならないよう、「知らないけれども、こうした対応ならできる」という点を示しましょう。使用例としては、「私はその生産管理システムを存じません。ただ、弊社と長く取引をしている企業のシステムならご提案できます」といった形になります。
「知らない」の敬語での言い換え表現
「知らない」の敬語表現の代表的な類語には、「分かりかねます」「面識がございません」などが挙げられます。「知識がない」「互いに顔を見知っているのではない」という意味であり、「知らない」の敬語の言い換えに使うことも可能です。ただし、それぞれニュアンスが異なるので注意しましょう。まず、「分かりかねます」には「知っていれば教えられるのだが、あいにく知識を持っていない」との意味が含まれています。「知りません」や「存じません」よりも、相手にやや寄り添っている表現だといえるでしょう。「知らなくて申し訳ない」という気持ちを込めたい際に便利です。一方、「面識がございません」は「存じ上げません」とほとんど似た意味です。強いて違いを挙げるなら、「面識がございません」には「認識はしている」というニュアンスがあります。つまり、「その方と面識はございません」というときは、「会ったことがないだけで、誰なのかは分かっている」状態です。それに対し、「存じ上げません」は「誰なのかも知らない」との意味です。
《知らない》の敬語
「知らない」の敬語表現
「知らない」の敬語表現は、「ご存じない」になります。「知る」の敬語が、「ご存じである」「ご存じでいらっしゃる」になることから、この否定形になっています。「お知りにならない」という表現も誤りではありませんが、よりシンプルで伝わりやすいのは「ご存じない」という語です。相手が知っているかどうか質問する場面では、「ご存じありませんか」「ご存じないでしょうか」というように使います。しかし、敬うべき相手が、何かの情報を知らないということは、目下の者としては言いにくいことでもあります。そういうデリケートな場面では、「ご存じない」と断定するのではなく、「ご存じない方もいらっしゃるかもしれません」「ご存じかと思いますが」「ご存じかもしれませんが」といったように、相手が知っているかもしれないし、知らないかもしれないという曖昧さを残した婉曲的な表現にする方が、相手に失礼な印象を与えないでしょう。「知らない」の敬語での誤用表現・注意事項
「知らない」の敬語表現である「ご存じない」という言葉についてありがちな誤りは、本来敬語をつけるべきでない自分自身の行為に関してこの言葉を使ってしまうことです。例えば、「自分は知りません」ということを目上の人に伝える場合、尊敬語ではなく、謙譲語を使うことになり、「私は存じ上げません」と言うのが正しい言葉遣いです。しかし、丁寧に言おうとして、「私はご存じありません」と言ってしまうと、自分が知らないということを敬ってしまっているので、誤りです。慌てていると、うっかり言ってしまいがちな誤りですので、注意しましょう。また、社内の人間に、上司の状況について述べる場合、「田中部長は、ご存じないようです」というように使いますが、社外の方に、社内の人間について述べる場合は、それが目上の方であっても、「田中は、存じ上げないようです」と言うのが、適当です。「知らない」の敬語での言い換え表現
「知らない」を敬語で言い換える場合、最も適切なのは、「ご存じない」という語です。ですが、「あなたは、このことについてご存じないようだ」などと言われたら、むしろムッとしてしまう方も多いのではないでしょうか。このため、実際には「ない」ということを強調せず、「ご存じである」というポジティブな状態をベースに、「ご存じでしたら」「ご存じかもしれませんが」「皆様ご存じのように」などと表現するのが、ビジネスシーンでは無難です。また、「知らない」という言葉の類語として、「分からない」がありますが、「分からない」の敬語表現には、「ご理解いただけない」「お分かりいただけない」があります。この言葉も、敬語ではありますが、直接目上の方やお客様にぶつけると、場合によっては気分を悪くされる方もいますので、注意が必要です。疑問文にして投げかけたり、「万が一」「~ようでしたら」などの婉曲表現を用いるのがよいでしょう。- 《知らない》の敬語のページへのリンク