JR貨物EH500形電気機関車 JR貨物EH500形電気機関車の概要

JR貨物EH500形電気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/30 03:54 UTC 版)

JR貨物EH500形電気機関車
EH500形77号機
(2020年12月14日 片岡駅 - 蒲須坂駅間)
基本情報
運用者 日本貨物鉄道
製造所 東芝
製造年 1997年 - 2013年
製造数 82両(2021年3月現在)
運用開始 2000年3月11日[1]
主要諸元
軸配置 (Bo - Bo) + (Bo - Bo)[2]
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V・交流20000V (50/60 Hz)
全長 25,000 mm(連結面間長)[2]
全幅 2,950mm[2]
車体幅 2,808 mm
全高 4,280 mm
車体高 3,650mm(試作車)[2]
3,711mm(量産車)[2]
運転整備重量 134.4t[2]
台車 ボルスタレス2軸ボギー
FD7A・FD7B・FD7C・FD7D(試作車)[3]
FD7F・FD7G・FD7H・FD7I(量産車)[2]
(いずれも第1エンド側よりの並び)
台車中心間距離 6,200 mm
固定軸距 2,500 mm
車輪径 1,120 mm
動力伝達方式 吊り掛け駆動方式
主電動機 FMT4形三相かご形誘導電動機
主電動機出力 565 kW
歯車比 5.13 (82/16)
制御方式 PWMコンバータ+IGBT素子VVVFインバータ制御
(1C2M)
制動装置 発電ブレーキ併用電気指令式自動空気ブレーキ
保安装置 ATS-SF(共通)
ATS-Ps(仙台車)
ATS-PF(仙台車)
ATS-DF(門司車)
最高運転速度 100 km/h
設計最高速度 120 km/h[2]
定格出力 4,000 kW(1時間定格)
4,520 kW(30分定格)
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公式な愛称EF210形の「ECO-POWER 桃太郎」と対をなす形で「ECO-POWER 金太郎」とされており、車体にロゴマークが描かれる。EF210と異なりマサカリを構えた金太郎のイラストまで入れられているが、その後EF210にも桃太郎のイラストがペイントされるようになった。「キンタ」「金太郎」とも呼ばれる。

概要

本形式は、日本国有鉄道(国鉄)時代に製造され、東海道本線で使用されたEH10形以来となる2車体連結・主電動機軸8軸使用のH級機である。

従来、首都圏 - 函館五稜郭間は、1000t貨物列車が運行され、 直流機(EF65単機) - 交流機(ED75:重連または単機)- 青函用交流機(ED79:重連)と機関車の付け替えがあり、到達時間にロスが生じていた。これを解消してJR貨物の保有機関車数を削減する目的とともに、東北地方ED75形電気機関車や、津軽海峡線ED79形電気機関車老朽取替え用として開発・製造された。その後、2016年3月の北海道新幹線延伸に伴い青函トンネルが新幹線対応の交流25,000Vに昇圧されたことから、同区間をEH800形に譲り運転区間は青森までに縮小された。

新世代の交直流電気機関車をめぐっては、1990年川崎重工業三菱電機EF500形電気機関車1992年日立製作所ED500形電気機関車を提案して試験を行ったが、JR貨物の要求と合致せず、東芝が当機で受注を獲得した。以後、東芝は当機を大量生産しただけでなく、当機をベースにEH200形直流電気機関車EH800形交流電気機関車を開発した。一方、川崎・三菱グループEF510形交直流電気機関車を開発するが、日立は電気機関車事業自体から撤退してゆくこととなった。

構造

ここでは量産車について述べる。901号機(試作機)については#試作機(901号機)を参照のこと。

車体

東北本線国見峠および十三本木峠の急勾配と、青函トンネルの連続勾配を走行するため、軸重を増大させずに高い粘着性を確保する必要があったことから、2車体永久固定方式のH型機関車となった[注 1]

走行機器

交流区間では交流20000Vを、直流区間では直流1,500Vを、主変圧器から主変換装置を介して、交流誘導電動機を駆動している。主変換装置1台で2台の主電動機を制御する1C2M方式を採用しており、これを4基搭載して台車単位での制御を可能としている[5]

主変圧器(FTM3)は送油風冷式を採用し、2,598kVAの容量を備える。1両あたり2基搭載する。

主変換装置は沸騰冷却強制風冷方式を採用し、IGBT素子を使用した3レベルPWM方式コンバータ+3レベルPWM方式インバータで構成されている。

補機類や計器類の電源を供給する補助電源装置は、容量150kVAの静止形インバータ(SIV)を搭載する。主変圧器の3次巻線を電源とし、交流100Vおよび直流100Vを供給する。なお、直流区間では、静止形インバータ内部のインバータ部から供給される三相交流440Vを降圧・整流することで補機類の電源としている。また、1両に2基の補助電源装置を搭載することで、運転中での冗長性を確保している[5]

主電動機(FMT4)は、1時間定格出力565kWのかご形三相誘導電動機である。ED75形やED79形で行われていた重連運用解消のために、短時間出力を4,520kWに設定しているが[5]、地上設備などとの兼ね合いから、通常は直流区間では3,400kW程度、交流区間では4,000kW程度で運用される。そのため、リミッタを搭載して運用されている。なお関門間での運用時には、1300t貨物列車の牽引が要求されたので、リミッタを取り外す必要があり、東北から関門への移動時には、ATS機器変更に合わせて、製造工場での変更作業が必要となった。

台車は、EF210形量産車と同形式の軸梁式ボルスタレス台車を装着する。台車形式は、1エンド側からFD7F、FD7G、FD7H、FD7Iである。ヨーダンパを備える。

集電装置は、PS22E形下枠交差式パンタグラフを2基搭載する。

制動方式は単機に発電ブレーキ併用電気指令式ブレーキ、編成に電磁自動空気ブレーキを採用しており、発電ブレーキを停止と抑速の際に使用する。

空気ブレーキなどで使用される圧縮空気を供給する電動空気圧縮機は、FMH3015-FTC2000形を2基搭載する。

電動機などの冷却に使用する電動送風機は、FMH3016A-FFK16形を搭載する。


注釈

  1. ^ 鉄道趣味誌では、2車体H型機とした理由に第二種鉄道事業者として線路保有会社に支払う線路使用料を軽減するため、という説を挙げている[4]設計当時のスキームでは線路使用料は機関車の台数分支払うことになっていた[要出典]ため、D形機による重連運用の場合は2両分支払うところをH形機とすれば支払いは1両分で済むことになる。しかし、当事者から契約書、規定等の公開はなされていないため、本当にH形機関車1両がD形機関車2両よりも線路使用料を安く済ませられるかは不明である。なお、先述の「鉄道ジャーナル」2018年10月号によると、JR北海道・JR東日本・JR西日本・JR九州はH形機を1両の機関車として扱っているとされている。

出典

  1. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2000年6月号「2000年春の新型車両ECO-POWER金太郎EH500形量産車が登場」pp.86 - 87。
  2. ^ a b c d e f g h 『鉄道ファン』2000年7月号、交友社、2000年、p.116
  3. ^ 『鉄道ファン』1998年6月号、交友社、1998年、p.73
  4. ^ 「鉄道ジャーナル」 2018年10月号(No.624) p.61
  5. ^ a b c 山本城二、櫻井公男、長瀬光範「近代的な物流を支える機関車及び貨物電車システム」 (PDF) 東芝レビューVOL.61(2006-09)
  6. ^ JR貨物時刻表 p.259,p.262
  7. ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「平成19年度の車両等の設備投資について」 (PDF)
  8. ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「平成20年度の車両等の設備投資について」 (PDF)
  9. ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「平成21年度の車両等の設備投資について」 (PDF)
  10. ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「平成22年度の機関車の新製について」 (PDF)
  11. ^ JR発足30周年記念「JR7社共同企画 スペシャルツアー」の発売についてJR貨物プレスリリース(2017年10月17日)
  12. ^ EH500-30がE26系をけん引して営業運転 - 鉄道ファン「鉄道ニュース」2017年12月5日、2017年12月23日閲覧
  13. ^ 編集部「NEWS PACK 2011年4月」『Rail Magazine』第28巻第9号 (No.334)、2011年7月、pp.150 - 151。 
  14. ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「ラッピング機関車の運行を開始」 (PDF)
  15. ^ EH500-65が九州へ鉄道ファンrailf.jp(2019年4月9日掲載)


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