有理数 用語法について

有理数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/05 06:59 UTC 版)

用語法について

rational number は原義として : λογος ( = : ratio、日: 比) の有る数という意味であり、a/bb に対して a の示す比の値(ab に占める割合)を意味する。それゆえ「有比数」とでも訳した方がよいのではというのがしばしば話のネタにされる[2][3][4][5][6]

数学の各所で、有理数体 Q を基礎とする(すなわち、Q 上定義される)概念に対して、「有理—」というような接頭辞を付けるということがしばしば行われる。例えば、有理数でもあるような代数的整数を「有理整数」(これはつまり、初等代数学で扱われる通常の整数のことにほかならない)という。あるいは、成分が有理数であるような行列を「有理行列」と言ったり、有理数係数の多項式を「有理多項式」と呼んだりする(「有理数体上の多項式」とも言う)。あるいは何らかの点集合で、成分が全て有理数であるような点を「有理点」と呼ぶ(代数群の有理点など)。

一方で、「有理—」という名称でありながら、前述のような意味ではないものもたくさんある。例えば、有理函数は基礎体が有理数体であるという意味ではなく、「多項式の比」になっているような函数という意味である。同様に、有理代数曲線は有理数係数の代数曲線という意味ではない。

演算

二つの有理数 a/b, c/da, b, c, d は整数で b, d はいずれも 0 でない)が等しいとは、整数の等式

が成り立つことを言い、このとき

と記す。加法 "+"、および乗法 "×" が

によって定まり、反数および逆数について

(ここでは b, c, d はいずれも 0 でない)が成り立つ(とくに集合として

が成り立つ)。またこれにより、減法 "−" および除法 "÷"が

と定まる。これらの四則演算によって、有理数の全体 Qと総称される代数系のもっとも身近な例のひとつとなる。

形式的な構成

各直線(の整数点)がそれぞれ一つの同値類(すなわち有理数)に対応する。どの直線も原点は含まないが、原点をはさんだ反対側は同じ同値類である(図では同じ色で塗ることでそれを表している)。

集合論の用語を用いて整数の全体 Z から形式的に有理数の全体 Q を構成することができる。まず整数の順序対 (a, b) で b が 0 でないようなものの全体 E = Z ×(Z − {0}) を考える。ここで E 上の関係 ∼ を

(a, b, c, dZ, b ≠ 0, d ≠ 0) によって定めると、関係 ∼ は同値関係となる。商集合 E/∼ を改めて Q と記して、Q における対 (a, b) の属する同値類を a/b と記すことにすると、このような表記は一意的ではなく、異なる代表元 (c, d) について

となる。このとき、Q における加法および乗法を上で述べたように

で定めると、この加法と乗法は剰余類同士の演算として矛盾なく定義されている。実際、E における加法および乗法を

と定めると、(a, b) ∼ (a′, b′), (c, d) ∼ (c′, d′) であるとき

が成り立つので、Q における加法および乗法は剰余類 a/b, c/d 各々の代表元 (a, b), (c, d) のとり方に依らない。(0, 1), (1, 1) の属する同値類 0/1, 1/1 が Q における零元および単位元となることが確かめられ、マイナス元逆元が上述のように得られるので、これで Q における上述のような四則が全て形式的に正当化される。また、写像 ι を

と定めると ι は単射で、E において (m, 1) + (n, 1) = (m + n, 1) および (m, 1) × (n, 1) = (mn, 1) が成り立つ(さらに ι(1) = 1/1 であるから ι は単位的環の準同型となる)から Z は ι によって演算まで込めて Q に埋め込まれる。そこで整数 m と剰余類 m/1 とを同一視して QZ を含むものと考える。

これは一般に整域商体としてほぼそのままに一般化される構成法であり、したがって「QZ の商体である」などということができる。


  1. ^ Jean C. Baudet (2005), Mathématique et Vérité. Une philosophie du nombre, Paris, éd. L'Harmattan, coll. « Ouverture philosophique », ISBN 978-2-296-39195-6, partie « Mais c'est quoi, un nombre ? », chap. « Les ensembles de nombres », note 11, p. 124 : « L'ensemble des nombres rationnels est généralement désigné par la lettre Q. [...] Notation proposée par Giuseppe Peano en 1895, de l'italien quoziente (quotient). »
  2. ^ 一松信『√2の数学 無理数を見直す』海鳴社、1990年 ISBN 978-4875250562
  3. ^ 志賀浩二『数の世界』岩波書店、1992年 ISBN 978-4001152722
  4. ^ 長岡亮介『本質の研究数学Ⅰ+A』旺文社、2004年 ISBN 978-4010332115
  5. ^ 吉田武『オイラーの贈物 人類の至宝e=-1を学ぶ』東海大学出版会、2010年 ISBN 978-4486018636
  6. ^ 吉田武『虚数の情緒 中学生からの全方位独学法』東海大学出版会、2000年 ISBN 978-4486014850


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