代数的整数とは? わかりやすく解説

代数的整数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/27 16:20 UTC 版)

数論において代数的整数(だいすうてきせいすう、: algebraic integer)とは、ある整数係数モニック多項式となる複素数のことである。代数的整数の全体 A は加法と乗法について閉じており、ゆえに複素数環 C部分環をなす。この環 A有理整数ZC における整閉包となっている。

代数体 K の整数環 OKKA に等しく、また体 K の極大整環(: maximal order)となっている。全ての代数的整数はそれぞれ何らかの代数体の整数環に属している。x が代数的整数であることは、環 Z[x] がアーベル群として有限生成(即ち有限生成 Z-加群)であることと同値である。

定義

以下は α ∈ K が代数的整数であることの同値な定義である。ここで K代数体(有理数体 Q有限拡大)とする。原始元定理より、この K は適当な代数的数 θ ∈ C によって K = Q(θ) とすることもできる。

  • f (α) = 0 を満たすモニック多項式 f (x) ∈ Z[x] が存在する。
  • αQ 上の最小モニック多項式 f (x) ∈ Z[x] が存在する。
  • Z[α] が有限生成 Z-加群となる。
  • αMM を満たす有限生成 Z-部分加群 0 ≠ MC が存在する。

代数的整数は有限拡大 K / Q整元となっている。即ち代数的整数は環の拡大における整元の特別な場合である。

代数的整数をこのように定義する背景には次のような考え方がある[1]。まず、有理数に対する整数のように、代数的数全体の集合の中で「整数の集合」S が何らかの方法で定義できたとする。すると S は次の性質を持っているはずである。

(S1) S は加減算と乗算で閉じている。
(S2) S の元の任意の共役は S に含まれる。
(S3) 有理整数はすべて S に属し、S に含まれる有理数は有理整数のみである。
(S4) S は以上の性質を持つ集合の中でなるべく大きいものである。

このような性質を持つ集合 S は実は代数的整数の集合と一致する。実際、S の任意の元 α に対してその有理数体上の最小多項式 f を取ってみる。f の係数は α の共役達の基本対称式であるから、(S2)と(S1)よりこれは S に含まれる。f の係数は有理数であるから、(S3)よりこれらは有理整数である。よって f は有理整数係数のモニック多項式であるから α は代数的整数である。したがって S は代数的整数の集合に含まれる。代数的整数の集合は(S1)~(S3)を満たす集合であるので、(S4)により S は代数的整数の集合に一致する。

代数的整数となる例

  • 有理数のうち代数的整数となるのは有理整数に限る[2]。即ち QAZ に等しい。有理数 a/bba を割り切らなければ代数的整数とはならない(多項式 bxa の主係数が b であることに注意)。ほか、非負整数 n の平方根 n が有理整数となるのは n平方数のときに限り、それ以外のときは無理数となる。
  • d平方因子をもたない整数のとき、拡大 K = Q(d)二次体となる。ここで dモニック多項式 x2d の根であるから、K の代数的整数環 OKd をもつ。加えて dd ≡ 1 (mod 4) を満たすとき、元 1 + d/2 もまた代数的整数となる。これは、x = 1 + d/2 を根として持つ二次多項式 x2x + 1 − d/4定数項英語版が、d ≡ 1 (mod 4) のとき整数となるためである。OKd1 + d/2 よりそれぞれ生成される。詳細は en:Quadratic integer を参照。
  • 平方因子を持たない互いに素な整数 h, k に対し m = hk2 とし、さらに α = 3m とする。このとき体 F = Q(α) の整数環は以下の整数底を持つ[3]
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代数的整数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/18 04:29 UTC 版)

群環」の記事における「代数的整数」の解説

詳細は「整元」を参照 u ∈ K[G] の標準基底に関する座標成分全て上で整ならば、u は ℤ 上整である。 実際に標準基底としての G の元 δs は ℤ 上整であり、これらの生成する有限生成 ℤ-加群実際には ℤ-多元環を成す。 前節からの記号引き続き使用して、以下が成り立つ: u が K[G] の中心に属する元で、その座標成分が ℤ 上整ならば以下の K の元 λ i = 1 d i ∑ s ∈ G u s χ i ( s ) {\displaystyle \lambda _{i}={\frac {1}{d_{i}}}\sum _{s\in G}u_{s}\chi _{i}(s)} もまた ℤ 上整である。 実際上記の節によれば、この数は Si 上で相似比 ρi(u) である。先に掲げた命題によりこの相似比は ℤ 上の整元であり、相似拡大結合多元環の準同型となるから、もとの数もそうである。 K が標数 0 ならば以下の性質導かれる: 既約表現次数 di群の位数 g を割り切る

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「代数的整数」を含む「群環」の記事については、「群環」の概要を参照ください。

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