ホスフィン【phosphine】
ホスフィン
ホスフィン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/04 07:04 UTC 版)
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ホスフィン | |
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ホスファン(組織名) |
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別称
リン化水素
水素化リン |
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識別情報 | |
ECHA InfoCard | 100.029.328 |
CompTox Dashboard (EPA)
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特性 | |
化学式 | PH3 |
モル質量 | 34.00 g/mol |
外観 | 無色気体 |
密度 | 1.379 g/l, 気体 (25 ℃) |
融点 | -134 ℃ |
沸点 | -87.8 ℃ (185.2 K) |
水への溶解度 | 31.2 mg/100 ml (17 ℃) |
構造 | |
分子の形 | 三角錐形 |
双極子モーメント | 0.58 D |
危険性 | |
GHS表示: | |
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Danger | |
H220, H314, H330, H400 | |
P210, P260, P264, P271, P273, P280, P284, P301+330+331, P303+361+353, P304+340, P305+351+338, P310, P320, P321[1] | |
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |
引火点 | 可燃性気体 |
関連する物質 | |
その他の 陽イオン |
アンモニア アルシン スチビン ビスムチン |
関連物質 | トリメチルホスフィン トリフェニルホスフィン |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ホスフィン (英: phosphine) は、分子式 PH3 で表される、リンと水素による無機化合物。リン化水素(リンかすいそ、英: hydrogen phosphide)、水素化リン (英: phosphorus hydride)とも呼ばれる。IUPAC組織名はホスファン (英: phosphane) である。「ホスフィン」は、PH3 を母化合物とする有機化合物 R3P の総称でもある。半導体製造のドーピングガスの原料であり、ケイ素をn形にする場合や、InGaP(インジウムガリウムリン)などといった半導体を製造するときにも用いる。
常温では無色腐魚臭の可燃性気体で、常温の空気中で酸素と反応して自然発火する[2]。極めて毒性が強く(許容量 0.3 ppm)、吸入すると肺水腫や昏睡状態に陥り、死に至る。融点 -134 ℃、沸点 -87.8 ℃、密度 1.379 g/L (気体, 25 ℃)。日本ではその強い毒性から、毒物及び劇物取締法において、医薬用外毒物の指定を受けている。
ホスフィン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 01:51 UTC 版)
詳細は「ホスフィン」を参照 ホスフィン類 PR3の親化合物はホスフィン PH3 である。ホスフィン類の原子価は−3価であり(δ3λ3)、単純なアミンのリン類縁体である。トリフェニルホスフィンは有機化学でよく用いられる。 アミンと同様、ホスフィンは三角錐型の構造をとるが、結合角はアミンより小さい。トリメチルホスフィンの C−P−C 結合角は 98.6° であるが、メチル基を tert-ブチル基で置き換えると 109.7° まで増加する。 反転障壁はアミンよりもずっと大きい。そのため異なる3つの置換基を持つホスフィンは光学活性を持つ。一方アミンは容易に立体反転を起こすためラセミ体しか存在しない。 塩基性はアミンより低く、たとえばホスホニウムイオン PH4+ の pKa は −14 であるのに対してアンモニウムイオン NH4+ では 9.21、トリメチルホスホニウムの pKa 8.65 に対しトリメチルアンモニウムは 9.76 であり、トリフェニルホスホニウムの pKa 11.2 に対しトリフェニルアンモニウムは pKa 19 である。 アミンと同じく孤立電子対を持つが性質は異なる。例えばピロールの孤立電子対は非局在化によって C=C 結合を含む共役系を形成するため芳香族性を持つが、同様の構造を持つリン類縁体であるホスホールは、リン上の孤立電子対が非局在化しにくく、芳香族性は弱い。 反応性は求核性があるという点でアミンに類似し、一般式 R4P+ X− で表されるホスホニウム塩をつくる。この性質はアルコールをハロゲン化アルキルに変換するアッペル反応などで利用される。 アミンと異なり、ホスフィンは容易に酸化されてホスフィンオキシドになる。 以下にホスフィンの合成法を示す。 有機金属試薬(グリニャール試薬など)によるハロゲン化リンの求核置換反応。 R n PCl m + m R ′ M ⟶ R n R m ′ P + m MCl ( n + m = 3 ) {\displaystyle {\ce {R_{\mathit {n}}PCl_{\mathit {m}}\ +{\mathit {m}}\ R'M->R_{\mathit {n}}R'_{\mathit {m}}P\ +{\mathit {m}}\ MCl({\mathit {n}}+{\mathit {m}}=3)}}} 金属カリウムなどとホスフィンから合成した金属ホスフィドによる求核置換反応。ハロゲン化アルキルとナトリウムアミドの反応に対応する。 R 2 PM + R ′ Cl ⟶ R 2 R ′ P + MCl ( M = Li , Na , K ) {\displaystyle {\ce {R2PM\ + R'Cl -> R2R'P\ + MCl \ (M = Li, Na, K)}}} 強塩基存在下(ジメチルスルホキシド中水酸化カリウムなど)でのホスフィンのアルケン、アルキンへの求核付加反応。反応はマルコフニコフ則に従う。反応に用いるホスフィンは赤リンと水酸化カリウムから系中で発生させることもできる。一級ホスフィン (RPH2) および二級ホスフィン (R2PH) をアクリロニトリルなど電子不足のアルケンと反応させる場合には、塩基を必要としない。 R 2 PH + R ′ 2 C = CR ′ 2 ⟶ R 2 P − CR ′ 2 − CHR ′ 2 {\displaystyle {\ce {R2PH\ + R'2C=CR'2 -> R2P-CR'2-CHR'2}}} R 2 PH + R ′ C ≡ CR ′ ⟶ R 2 P − CR = CHR ′ {\displaystyle {\ce {R2PH\ +R'C\equiv CR'->R2P-CR=CHR'}}} アゾビスイソブチロニトリルや有機過酸化物を用いた、ホスフィンのアルキンへのラジカル付加反応。この反応ではアンチマルコフニコフ型の生成物が得られる。 クロロシランを用いたホスフィンオキシドの還元。 ホスフィンを用いた反応には以下のようなものがある。 ハロゲン化アルキルとの反応によるホスホニウム塩の生成。 還元剤としての利用。シュタウディンガー反応においてアジドをアミンに、光延反応においてアルコールをエステルに変換するのに使われる。これらの反応の過程で、ホスフィンは酸化されてホスフィンオキシドになる。 活性化されたカルボニル基を還元するのにも用いられ、例えば α-ケトエステルの α-ヒドロキシエステルへの還元が知られる。トリメチルホスフィン上の水素原子の移動を含む反応機構が提唱されている(トリフェニルホスフィンは反応しない)。 ジアザホスホレンのように、適切な置換基で修飾すると P−H 結合の極性が反転し(極性変換)、このようなホスフィンヒドリドはカルボニル基を還元する。ベンゾフェノンの例を以下に示す。
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