TL年代測定による供給源の考察とは? わかりやすく解説

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TL年代測定(熱ルミネッセンス法)による供給源の考察

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 10:05 UTC 版)

岩神の飛石」の記事における「TL年代測定熱ルミネッセンス法)による供給源考察」の解説

立正大学地球環境科学部下岡順直は、岩神の飛石形成された年代調べるため「熱ルミネッセンス法」(以下、TL法と略す)による測定を、前橋市教育委員会による「岩神の飛石環境整備事業」の一環として行ったTL法とは鉱物加熱されることによって、それまで蓄積され放射線量が一旦リセット(タイムゼロイング)された後、そこから今日に至るまでに浴びた自然放射線量(蓄積線量)を、1年間被ばくする放射線量年間線量)で除算することで年代求め方法で、元々は遺跡発掘され土器など、考古学世界で1960年頃から使用されていた年代測定法であったが、1980年代から溶岩火山灰年代測定としても用いられ始めた下岡2003年平成15年)に、岩神の飛石から南南西方向にあたる高崎市烏川中州にある「聖石(ひじりいし)」と、少し下流架かる佐野橋南側河川敷にある溶解した紫色岩塊通称赤石」)についてTL法使用した年代測定行っており、これらの岩塊22,000年前から34,000年前という絶対年代得ていた。 高崎市聖石」と「赤石」のTL年代測定結果2003年試料蓄積線量(Gy)年間線量(mGy/年)TL年代(Ka)測定方法聖石(1)43.2±7.8 1.98±0.11 22±4.1 Poly-mineral 聖石(2)46.3±6.7 1.98±0.11 23±3.6 微粒子佐野橋赤石(1)74.1±19.6 2.17±0.11 34±9.2 Poly-mineral 佐野橋赤石(2)69.2±6.9 2.17±0.11 32±3.6 微粒子法 「岩神の飛石および類似する赤石」のTL法測定分析結果(2016年)試料名みかけの総被ばく線量(Gy)U(ppm)Th(ppm)K(wt%)年間線量(mGy/年)TL年代(Ka)岩神の飛石11 0.29±0.36 2.36±1.33 0.77±0.15 1.40±0.20 - とうけえ石4 0.43±0.24 0.45±1.84 0.33±0.15 0.76±0.21 - 坂東橋東岸の露頭103 0.23±0.24 2.08±1.87 0.87±0.15 1.44±0.21 - 佐久市赤岩弁天堂24.2±3.1 0.23±0.31 3.37±1.21 0.43±0.15 1.17±0.18 21±4 烏帽子岳山頂18 0.50±0.33 4.67±1.86 1.24±0.15 2.31±0.22 - 「岩神の飛石環境整備事業」の一環として採取され試料は、岩神の飛石類似する複数赤褐色岩石とともに群馬県立自然史博物館協力得てTL法による測定被ばく線量測定が行われた。 菅原採取した類似岩塊試料のうち、比較対象として適した4つ試料岩神の飛石含めると計5つ)の測定結果右記の表に示す。 測定され類似する岩塊は とうけえ石(中之条町指定天然記念物坂東橋東岸の露頭採取され赤褐色溶岩 佐久市赤岩弁天堂赤褐色烏帽子岳 (上田市・東御市)山頂赤褐色溶岩上の4つである(位置上記「#類似する複数の赤石セクション」の地図参照のこと) 測定結果、これらの試料には特徴的な挙動見られた。このうち坂東東岸露頭」のみが他とは明らかに異なる103Gyという線量値を示しており、岩神の飛石をはじめ、ここで比較した他の赤褐色岩塊試料被ばく線量は4Gyから24Gyと見積もられた。これは下岡2003年平成15年)に測定していた高崎市内の聖石」「佐野橋南の赤石」と矛盾する数値ではない。このように坂東東岸露頭」については赤城山起源考えられ、「岩神の飛石」を含むその他の岩塊試料被ばく線量同じよう挙動を示すことから、「岩神の飛石」は浅間山起源考えるのが妥当と判断された。 ただ、今回使用され試料はポリミネラル試料呼ばれる重合体(多鉱物試料)であり、TL測定ではルミネッセンス観察されやすい長石からの反応が主にあった想定されるため、試料TL強度には何らかの減衰生じた可能性があるという。そのためここで計測され蓄積線量下岡によって「みかけの総被ばく線量」と表現されている。TL発光強度相対的に高い長石からのTLには、異常減衰呼ばれる現象報告されており、他にも試料風化による影響など考慮しなければならなかった。 下岡再度岩神の飛石風化進んでいない、南側中央部分付近から80グラムほどの試料採取しその結果2019年令和元年)に報告した80グラム風化していない試料前回調査時と同様、立正大学地球環境科学部において処理と測定が行われた。最初に岩片表面太陽光曝されている個所除去フッ化物削ぎ落とし処理が暗室行われ最終的に75から150µm粒度抽出して測定試料とした。 TL法による測定同じく立正大学地球環境科学部設置されているTL/OSL測定装置NRL-99-OSTL2-KUが使用され測定試料へのGy付加照射粉砕した岩石片の年間線量測定された。さらに同科学部設置されているキャンベラモデル7229P-7500SのGe半導体検出器使い岩石中のウラントリウムカリウムから放出されるγ線計測し、その値を産業技術総合研究所提供する岩石標準試料」から作成した検量線用いて放射性元素濃度見積もった。そこから換算した結果岩神の飛石年間α線量、年間β線量、年間γ線量が計算された。 風化起こっていない、より新鮮な岩石採取したことで、安定したTL強度得られ異常な減衰影響をほとんど受けることのない、みかけの総被ばく線量ではない、測定結果得られたという。 「岩神の飛石」のTL年代測定結果(2019年)総被ばく線量(Gy)U(ppm)Th(ppm)K(wt%)年間線量(mGy/年)TL年代(Ka)71.6±16.8 0.79±0.21 3.04±1.00 1.18±0.15 2.16±0.17 33±8 風化していない試料使用した今回測定により、岩神の飛石被ばく線量から得られTL年代33±8Ka(33千年プラスマイナス8千年)と考えられた。これは前述前橋泥流高崎市聖石佐久市赤岩弁天堂」の年代よりも、やや古い時代であるが、その要因として、約24,000年前前橋泥流引き起こした浅間山山体崩壊では、それ以前噴出した噴火物も山体一部として崩壊、あるいは巻き込んで流下した可能性考えられる下岡現時点での結論として、約3万年前の浅間山浅間火山)の噴火活動によって噴出した溶岩固まって岩神の飛石」の原形となり、その数千年後の山体崩壊発生した前橋泥流によって、今日前橋市街地まで運搬され可能性が高いと考えた

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