LPHの誕生とLHA・LHDへの発展
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「強襲揚陸艦」の記事における「LPHの誕生とLHA・LHDへの発展」の解説
CH-53を搭載した「イオー・ジマ」 ウェルドックの門扉を開放した「ベロー・ウッド」 「ヘリコプター揚陸艦」も参照 ヘリコプターの発達を受けて、アメリカ海兵隊では水陸両用作戦でのヘリボーン戦術の活用について模索していた。海軍もその洋上拠点となるヘリ空母について検討しており、当初は攻撃輸送艦(APA)に航空母艦としての機能を組み合わせたものとして、APA-Mと仮称されていた。実験的に護衛空母「セティス・ベイ」を改装したのち、まずは1958年度から1966年度にかけ、ヘリコプター揚陸艦(LPH)としてイオー・ジマ級7隻が建造された。また、これと並行してヘリコプターの運用能力は妥協しつつ、上陸用舟艇の運用能力を強化したドック型輸送揚陸艦(LPD)の計画も進められ、1959年度よりローリー級の建造が開始された。 APA-M試案の段階では上陸用舟艇のためのウェルドックが設けられていたが、LPHとLPDを揚陸輸送艦 (LPA) と貨物揚陸艦(LKA)のように補完しあって運用させればよいと判断され、実際に建造されたイオー・ジマ級では削除された。だが、その後の再検討により、このままでは艦隊としての重装備の揚陸能力が不足することが判明したことから、イオー・ジマ級の最後2隻にウェルドックを追加することも検討されたものの、結局は最終7番艦にLCVP 2隻のためのボートダビットを追加するに留まった。 この情勢を踏まえ、海軍作戦部長から委託されて将来揚陸艦について研究していた海軍分析センター (CNA) では、LPHとLPDを統合した新型艦としてLHA (Landing helicopter assault) を検討するようになった。これに基づいて1969年度から建造されたのがタラワ級であり、LPHとLSDに加えてLKAや揚陸指揮艦(LCC)の各機能を兼備した充実した能力を備え、イオー・ジマ級よりもかなり大型化してエセックス級航空母艦を凌ぐ大型艦となった。 1960年代末から1970年代のアメリカ海軍は、STOVL方式の軽空母である制海艦(SCS)を検討していたが、強襲揚陸艦はそのための実験にも供された。まずは1972年から1974年にかけ、イオー・ジマ級の1隻である「グアム(英語版)」に海兵隊のAV-8A攻撃機と海軍のSH-3ヘリコプターを搭載してのSCSの評価試験が行われた。その後にSCS計画は頓挫したが、強襲揚陸艦をSCSとして用いるための研究は継続されており、1981年の演習ではタラワ級「ナッソー」に19機のAV-8Aを搭載しての運用試験が行われたほか、湾岸戦争の際には、同艦にAV-8B 20機を搭載して「ハリアー空母」としての作戦行動が実施された。 これらの実績を踏まえ、タラワ級に続くワスプ級では垂直/短距離離着陸機やLCAC-1級エア・クッション型揚陸艇の運用に合わせ、設計が改訂された。また、ウェルドックを廃止する代わりとして、さらに航空運用機能を強化した発展型としてアメリカ級も建造され、F-35Bを20機搭載しての「ライトニング空母」としての運用も検討されているものの、このような揚陸能力の弱体化は海兵隊には不評であり、3番艦以降ではウェルドックが復活することになった。 歴代強襲揚陸艦との比較LHA アメリカ級フライトILHA アメリカ級フライト0LHD ワスプ級8番艦LHD ワスプ級1-7番艦LHA タラワ級(最終状態)LPH イオー・ジマ級(最終状態)船体満載排水量50,000 t以上 45,570 t 41,335 t 40,650 t 39,300 t 18,300 t 全長257.3 m 254.2 m 180.4 m 最大幅32.3 m 42.7 m 38.4 m 31.7 m 機関方式CODLOG 蒸気タービン 出力70,000 hp 72,000 hp 77,000 hp 22,000 hp 速力22ノット 24ノット 23ノット 兵装砲熕- 25mm単装機関砲×2 - 3基 76mm連装砲×2基 ファランクス 20mmCIWS×2 - 3基 12.7mm連装機銃×3 - 8基 - ミサイルESSM 8連装発射機×2基 シースパロー 8連装発射機×2基 - シースパロー 8連装発射機×2基 RAM 21連装発射機×2基 航空運用機能搭載機数AV-8Bなら24機、F-35Bなら20機 AV-8Bなら20機 AV-8なら12機 MV-22Bなら42機 CH-46なら38機 CH-46なら20機 飛行甲板全通(STOVL対応) 航空燃料不明 3,813 t 1,960 t 約1,200 t 輸送揚陸機能舟艇LCACなら2隻 なし LCACなら3隻LCM(6)なら12隻 LCACなら1隻LCM(6)なら20隻 なし(7番艦のみLCVP×2隻) 上陸部隊1個大隊揚陸チーム (約1,900名) 同型艦数9隻予定 2隻 1隻 7隻(1隻退役) 5隻(退役) 7隻(退役)
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