EUの拡大
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/21 08:26 UTC 版)
今日ドイツの有権者の間では、追放者連盟の目標を支持する空気はあまりない。政府においては、キリスト教民主同盟も社会民主党も、中央ヨーロッパや東ヨーロッパとの関係改善を志向している。これが放逐ドイツ人の利益と対立する場合もある。ドイツ東方の国境線の問題や放逐ドイツ人の帰還の問題は、ドイツ政府、憲法改正、領土の確定によって終了している。 しかし欧州連合 (EU) の拡大によって、放逐ドイツ人の諸団体は、現在ポーランドやチェコの領土となっている旧ドイツ地域における個人財産権が認められるのではないかという望みを持つようになった。これらの団体は、ポーランドとチェコは人権を尊重すべきだと主張し、欧州連合への加盟が承認される前に追放の被害者となったドイツ人への補償をすべきだと訴えていた。 また、2002年に当時のハンガリー首相オルバーン・ヴィクトルは、チェコとスロヴァキアは欧州連合へ加盟する前にベネシュ布告を廃止すべきだと述べた。ベネシュ布告によってチェコスロヴァキアに住んでいた多くのハンガリー人も財産を没収された。オルバーンの要求はバイエルン州政府、バイエルン州首相エドムント・シュトイバー、オーストリア首相ヴォルフガング・シュッセルに支持された。2003年、リヒテンシュタインはヨーロッパ共通経済空間 (CEES) 拡大に調印しなかった。チェコがベネシュ布告の撤廃を拒否しており、昔リヒテンシュタイン家がボヘミアに持っていて戦後チェコスロヴァキア政府に没収された財産に対する補償を拒否していたからである。これらベネシュ布告撤廃要求運動は実を結ばなかった。 2004年にチェコ、スロヴァキア、ポーランドがEUに正式加盟した。EUは過去でなく未来志向のアプローチを奨励している。 こういった財産補償要求は関係各国の国会で全て満場一致で拒絶され、この一連の出来事でドイツ、ポーランド、チェコの間に互いへの不信感が生まれた。放逐ドイツ人たちは没収された財産を示し、人権について主張した。ポーランドはドイツ人に対して、ポーランドが第二次世界大戦でナチス・ドイツにより受けた被害の直接補償を一切受けていない事実に注意を喚起させた。最新の算定では、ポーランド一国だけに限定しても、ドイツが支払うべき賠償金の総額は6400億米ドル相当(70兆円以上)になるとされている。ポーランドはさらに、ドイツ人追放や国境線変更はポーランド政府の決定で行われたものでなくポツダム協定によって強制されたものである事実を示した。付け加えると、ポーランドの共産主義政権による個人財産の没収措置はドイツ人だけに適用されたのではなく、民族的背景に関係なく全ての人々に対して実施されたのであった。旧ドイツ領であった地域に現在住んでいるポーランドの人々の大半が、彼ら自身ほかの土地から追放された人々やその子孫であるという事実が、状況をさらに複雑にしている。これらの人々は、ソ連に編入された地域から国外追放され、故郷を追われる際に財産をあとに残してきた。仮に放逐ドイツ人に財産を取り戻す機会があるとしても、放逐ポーランド人にはそのような望みは全くないのである。1939年のポーランド侵攻以後、新たなドイツ人植民者がポーランドに渡っている事実と、ドイツの法律がこれらの植民者を含めて難民として扱っていることが、ポーランドとの問題にさらなる論議を巻き起こしている。 追放者連盟はポーランドとチェコには厳しい要求を繰り返しているのに対し、ロシアやカリーニングラード州に関しては沈黙している。 2000年、追放者連盟は放逐されたドイツ人を記念する「反国外追放センター」(Zentrum gegen Vertreibungen)の建設運動を開始した。この運動の主導者は当時のエーリカ・シュタインバッハ(ドイツ語版)議長とペーター・グロッツ(ドイツ語版)である。 2003年にキールの日刊紙「Kieler Nachrichten(ドイツ語版)」に掲載された、ドイツ人ジャーナリストのガブリエーレ・レッサー(英語版)が書いた記事が、追放者連盟を中傷する内容を含んでいるとして、訴訟が起きた。この裁判はおおむね、追放者連盟側の勝訴となった。記事は撤回され、「Kieler Nachrichten」紙は追放者連盟に謝罪した。レッサーはベルリンの日刊紙「Die Tageszeitung」に論評記事を書き、追放者連盟が推進している「反国外追放センター」の建設に反対し、ドイツ・ポーランド関係に有害な影響を与えているとして、シュタインバッハ議長を非難している。 一方2004年、シュタインバッハ議長はベルリンで会見し、ドイツが法的解決を行うなら追放者連盟は過去の財産に対する補償要求を放棄し、財産返還や補償を求める訴訟を起こすことができないような法律改正を当時の社会民主党政権に要求すると発言した。その後キリスト教民主同盟と社会民主党が主導する連立政権が発足したが、2008年5月現在法改正は行われていない。。ドイツキリスト教民主同盟の連邦議会議員であるシュタインバッハは、1998年から2014年11月まで追放者連盟の議長を務めたが、その前後を含めて追放者問題に参画し続けている。
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