社会への負担
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 04:26 UTC 版)
「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」の記事における「社会への負担」の解説
イギリスの有権者が懸念しているのは医療・福祉の負担、賃金や住宅などに関してである。態度を決めていない有権者の3分の1はEU残留支持をためらう理由として移民についての懸念をあげている。 英国国民統計局(ONS)によると、2014年の人口統計では、1年以上英国に滞在しているポーランド国籍保有者は85万3,000人と2位のインド(36万5,000人)を大きく引き離す。比較的貧しい東部ポーランドからの移住者が特に多い。在英ポーランド人が英国に居住しない子供のための社会保障を享受していることは、2国間の国際問題となり、2月の欧州理事会で合意したEU改革案で、EU域内からの移民への社会保障給付の制限を認めることにつながった。 けれども国民年金番号登録者の数をみれば、2010年代のEU以外からの移民の年金登録者は減りつづけているがEUからの移民の年金登録者は増加傾向である。2014年時点でも約60万人のEUからの移民が年金登録を完了させているのに対し、EU以外からの移民はその3分の1にも満たない。EUからの移民はEU以外からの移民に比べてイギリスの年金システムに組み込まれやすいことがわかる。またEU移民数とその年金登録者数の大きな乖離も問題である。2015年度は約26万のEU移民がイギリスに移り住んだがその国民年金番号の登録者は63万人であり、移民の数とその年金登録者数とで大きな不整合がみられる。ジョン・ウィッティングデールはこの不整合を指摘し、その件について議論する必要があると述べた。ウィッティングデールは、EUの拡大の結果としてEU移民が増加し住宅・医療・教育といったイギリスの公的サービスに圧力がかかっているとし、何十万という更なる移民がイギリスに移住することは大きな懸念事項だと述べた。 イギリスに移り住む移民の数(千人) .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{} EU加盟国からの移民 EU以外からの移民 国民年金番号の登録者数(千人、毎年12月時点での統計) EU加盟国からの移民 EU以外からの移民 カンタベリー大主教は、イギリス国民は移民の数増大によって仕事や住居、公的医療保険制度に影響が及ぶことを恐れる権利があると述べた。大主教は2015年欧州難民危機に関して、人道的観点から20000人以上の難民を引き受けるよう唱えていた。だが移民・難民危機を懸念するイングランド国教会の見解を反映させる形で大主教は声明を出した。大主教は、イギリス国民は正しい援助で移民・難民危機に見事に対処できることを顕示していると述べた上で、イギリスには受け入れ上限があるため増え続ける移民を恐れることは正当化されると示唆した。 司法大臣マイケル・ゴーブは、もしイギリスがEUに残留すれば約500万人もの移民が2030年までにイギリスに流入することになると警告した。ゴーブは、2020年までに年間40万人以上の移民がイギリスに流入し、公的サービスに負荷をかけることになるとし、現行の医療サービスを維持するには追加的に約15000人の医者と43000人の看護師が必要になり、国民保健サービスは2030年までに93億ポンドのコスト増となると述べた。「彼ら移民がイギリスに向かうのは、無料の公的医療サービスが充実しているだけでなく最低賃金も高いからです。もしEUに残留すれば国民保健サービスは(移民増加によって)さらなる圧力に晒されるでしょう。バーミンガム4つ分の人口となる新規移民の面倒をみるために国民保健サービスを使うという考えは明らかに持続不可能です。この大規模なスケールの人の自由移動は国民保健サービスに大きな圧力をかけることになります。」 キャメロン首相は2015年の総選挙のマニフェストで移民の数を10万人未満に抑えると述べた。だがキャメロン首相の側近であるSteve Hiltonによれば、2011年の段階で政府高官らはイギリスがEUに加盟している限りその移民数ターゲットを達成することはできないとキャメロン首相にはっきり言っていたのだという。 労働党党首ジェレミー・コービンは、イギリスがEUに加盟している限りイギリスに流入する移民の数に上限は無いとしながらも、怒るべき対象は政府による緊縮財政政策であって移民ではないと述べる。 イギリスのインフラストラクチャー(の使用)が上限まできていることは疑いがない。中学・高校の6分の1が定員超となっており、2020年までに30万の学校の追加的な建設が必要な事態となっている。 また、イギリス政府が移民の正確な数を公表していないのではないかとする意見もある。政府の資料では過去5年間でEUからイギリスに来た移民は100万人ということになっているが、国民年金には約225万人が加入していた。この不整合について政府が説明を拒んでいたが、国家統計局が移民統計の再調査をすると発表した。
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