DML30系エンジンとは? わかりやすく解説

DML30系エンジン

(DML30H から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 06:03 UTC 版)

DML30系エンジン(DML30けいエンジン)は、日本国有鉄道(→JRグループに継承)の気動車用として開発されたディーゼルエンジンである。 なお、日本貨物鉄道2017年平成29年)にJR貨物DD200形ディーゼル機関車おいて採用したFDML30Zエンジンは、コマツ製SAA12V140Eエンジンを国鉄時代の制式名称に当てはめた呼称であり、本稿で解説するものとはまったくの別物である。


注釈

  1. ^ クランクシャフトの形状と、対向するピストンのコネクティングロッドの組み付け方から、水平対向ではない。向かい合うシリンダーのクランクピンが共用ならV型、別々なら水平対向である。
  2. ^ DMH17系はターボ過給器が一般的ではなかった時代に設計されたため、後付でのターボ過給化が難しく、機関車用の縦型機関であるDMH17SBで300PSを実現したものの、気動車用横置き機関への適用は信頼性の面から困難であった。なお、これらDMH17系ターボ過給モデル各種での性能増加状況を考慮すると、本系列は各シリンダーの燃焼効率という観点においては、DMH17系と比較してさほど大きく変わっていないことが見て取れる。
  3. ^ 直列6気筒は一次振動二次振動共に内部で打ち消し合う。
  4. ^ DMF15系が自重2.5t前後とより気筒数が多く排気量も大きいDMH17系と比較して約1tの自重増となったのに対し、本系列はV型構成により自重が3.5t前後に収まっている。
  5. ^ 最高許容回転速度50,000rpm、機関定格点での回転速度41,600rpm、圧力比1.28。
  6. ^ これにより、各シリンダーの間隔を拡幅する必要が生じ、DML30HSE以前のモデルとの寸法面での互換性は失われた。
  7. ^ これらはいずれも2ストローク機関であり、掃気促進のため、ピストン頂部に突起を持つもので、燃焼室表面積も大きく、その後の4ストローク機関の直噴式とは燃焼室形状が大きく異なる。
  8. ^ 鹿児島本線山陽本線東海道本線東北本線経由の最短ルートの営業キロに基づく。これに日豊本線山陰本線北陸本線羽越本線常磐線奥羽本線などの別経由も考慮に入れると、更に長くなる。
  9. ^ とは言っても理論値で、実際には内燃動力車の場合途中で燃料補給は避けて通れず、気動車でこの距離を踏破することは考えにくい。が、国会で予算承認の必要な国鉄としては建前上でもそうとしておかなければならなかった。
  10. ^ さらにこの渦流式の概念はガソリンエンジンにも応用された。代表例がスズキ・F型エンジンである(ただし、DOHC型はヘッド形状の関係で除外される)。
  11. ^ そもそもDMH17の原型機の一つである三菱重工業8150は直噴式であった。また、本系列が設計されていた時期には既に気動車用として使用可能な直噴機関が量産製品として存在しており、例えば台湾鉄路管理局1967年に納入されたDR2700形東急車輛製造製)はカミンズの標準品の一つであるHR-6系エンジン(直列6気筒、直噴、排気量12.2l)のバリエーションモデルであるNHHRTO-6-B1(出力335PS)を搭載していた。
  12. ^ 他方、小型自動車用渦流式高速小型ディーゼルエンジンとしては1969年にトヨタ・B型エンジンを搭載する車種(最初の搭載は3代目トヨタ・ダイナ)が発売されており、トヨタ・B型は本エンジンとほぼ同時期に開発されていたことになる。
  13. ^ 変速段では連続定格 (1,600rpm) を上回る回転数 (2,000rpm) での機関動作を強いられるため、特に山岳線などの勾配区間での長時間にわたる変速段使用は、機関本体に好ましくない結果をもたらした。
  14. ^ キハ90系では屋根上に2列設置された放熱器の間に空冷ファンを追加し、キハ181系では運転台付のキハ181形で屋根上の大型ファンによる強制通風式冷却器を発電用機関室の側面に搭載、また中間の動力車では屋根上の自然放熱式冷却器に加え、床下に強制通風式の補助冷却器を新製時より搭載していた。これは設計を担当した車両設計事務所の公式見解として「補助」冷却器であるとされたが、実際にはこちらの床下冷却器を常用し、本来の自然放熱式冷却器は冷却水温が70℃を超えた場合にのみ冷却水を循環させ補助的に使用する、という設計サイドの見解とはまったく正反対の運用形態となっていた。このことから、常用冷却器とするには配管経路が長大すぎ、発熱に対する即応性に欠ける自然放熱式冷却器が運用サイドから信頼されていなかったことが見て取れる。なお、キハ91形の量産車というべきキハ65形では自重軽減の必要もあり、床下に強制通風式冷却器を搭載するのみとしている。
  15. ^ 実質的にはデチューンであった。
  16. ^ この対策は姉妹機種であるDMF15系にも適用された。もっともキハ66・67系ではこれらは根本的な解決策とはならず、後半はオーバーヒートトラブルが頻発、冷却系に強制循環ポンプを付加するなどの対策が採られた末、製造後20年を前に新型直噴機関への機関換装・発熱量減少に伴う屋根上冷却器撤去という形で抜本的な解決が図られる結果となった。
  17. ^ 坂上茂樹は自著『鉄道車輌工業と自動車工業』で予燃焼室時代のDML30系機関がたどった圧縮比低下変更について「(ディーゼル機関の)高効率の根拠である高い圧縮比を低出力・軽過給機関においてここまで引き下げたやり口は自虐行為に等しい。だが、そうせざるをえないほどの熱的および機械的負荷が存在した……、つまり基本設計が出鱈目であった」「機関の信頼性を高めるためディレーティング(定格切下げ)を行なうだけなら高回転域での燃料供給を控えれば済む。健全な機関にこれほどまで圧縮比を落とす荒療治の必要など生じはしない」と厳しい批判を下し、DML30系・DMF15系がたどった経緯を、国鉄技術陣とその麾下の主力エンジンメーカー(新潟鐵工、振興造機、ダイハツディーゼル、池貝製作所。坂上はこれらを「国鉄ディーゼル一家」と称した)が閉鎖的な体制で「真っ当な開発能力を喪失していたことの証左」と評している。
  18. ^ DMH17系エンジンと比較すると、燃焼音(キンキン、カリカリ、バリバリ音)、排気音(ドコドコ音)共に大きい。
  19. ^ いずれも国鉄分割民営化期以降の実施。
  20. ^ オイルショックによる電化の急速な進展もあって、1970年代以降は気動車の新製需要が激減しており、大出力機関の新規開発コストに見合うメリットが得られなかった。このため、国鉄気動車用エンジンは、国鉄分割民営化直前のキハ37形新潟鐵工所製舶用機関を手直ししたDMF13Sを採用するまで、10年近くに渡って技術的停滞の中に留め置かれることとなった。
  21. ^ 一方で6気筒版のDMF15系は、騒音と燃費に関する改善がそれほど進まぬまま、12系14系客車用発電セットや40系気動車の動力などとして、その後も相応数が製造されている。
  22. ^ 名古屋鉄道での社内名称は「NTA-855-R1」
  23. ^ 定期運用の終了はキハ181系は2010年10月、キハ8500系は同年5月。
  24. ^ 自動進段時のキハ181系の変直切替速度は85km/hであり、急勾配の板谷峠や、速度制限区間の多い中央西線に置いて、エンジンに過剰な負荷がかかっていることは明白である。一方、最急勾配こそ25‰と小さいが、寺前駅より終点の和田山駅まで勾配が連続し、蒸気機関車やキハ80系時代には難所だった播但線では、駅間最大速度が95km/hと直結段に入れられるため、エンジンの負荷は少なかった。

出典

  1. ^ 直噴化された一部の後期モデルを除く。
  2. ^ 日本の自動車ディーゼルエンジンの基礎を築いた設計者 伊藤正男 P87
  3. ^ 燃料協会誌 48 巻(1969年), 6 号 6.燃焼機器・熱機関 P484
  4. ^ 燃料協会誌 45 巻(1966年), 5 号 昭和40年度における重要な燃料関係事項 P339
  5. ^ 燃料協会誌 47 巻(1968年), 5 号 6.燃焼機器・熱機関 PP441-442
  6. ^ “JR北の特急出火、原因は設計ミス”. 産経新聞. (2014年7月6日). https://web.archive.org/web/20140606181536/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140606/dst14060620450010-n1.htm 2014年7月7日閲覧。 
  7. ^ ディーゼル 1970 4 株式会社 交友社 発行 PP52-58
  8. ^ ディーゼル 1970 1 株式会社 交友社 発行 P100
  9. ^ a b [1] (PDF) - 運輸安全委員会(2015年04月23日付)、2021年1月13日閲覧。
  10. ^ [2] (PDF) - 運輸安全委員会(2015年04月23日付)、2019年12月19日閲覧。


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