21世紀:現代ロシア音楽
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「ロシアの音楽」の記事における「21世紀:現代ロシア音楽」の解説
「w:Russian pop」および「w:Russian rock」も参照 今日、ロシアのポップ・ミュージックは順調に発展し、MTVロシアやMuz-TV、ラジオ局などのポップ・ミュージック・メディアを通じてメインストリームとして成功を謳歌している。数々のポップ・アーティストが近年になって頭角を現し始めた。ロシアの2人組グループt.A.T.uは、今日における最も成功したロシアン・ポップバンドである。他に人気のあるアーティストとしては、ユーロビジョン・ソング・コンテスト2008で優勝したことで知られるジーマ・ビラーンを始め、フィリップ・キルコロフ、ヴィタス、アルスーらが有名である。音楽プロデューサーのイゴール・クルトイ、マキシム・ファデーフ、イワン・シャポヴァーロフ、イゴール・マトヴィエンコ、コンスタンティン・メラゼらは、ロシアのポップ・ミュージック市場の大部分のシェアを支配しており、ある点でソヴィエト時代のスタイルによるアーティスト・マネジメントを続けている。他方、ネオクラバーなど一部のインディペンデント系のグループは、このような時代遅れなソビエト式の音楽プロモーションを避けるために、より新時代的なプロモーション手段を駆使して活動を行っている。 ロックの音楽シーンは、欧米にも見られたように、単一のロックの潮流からいくつものサブジャンルへの細分化されながら進化していった。ポップ・ロック、オルタナティブ・ロックのジャンルでは、ムミー・トローリ、ゼンフィーラ、スプリーン、Bi-2、ズヴェリらが代表的である。また、パンク・ロック、スカ、グランジのジャンルでは、Korol i Shut、Pilot、レニングラード、Distemper、エリシウムらが代表的である。ヘヴィ・メタルのシーンの成長は目覚しく、カタルシス、エピデミア、シャドウホスト、メカニカル・ポエットなどといったパワー・メタル、プログレッシブ・メタルの音楽グループが次々と登場している。 ロック・ミュージックのメディアは、現代ロシアの時代に入り、普及した。最も著名なメディアとして、クラシック・ロックやポップ・パンクを推進する「ナッシュ・ラジオ」がある。この放送局が運営する『Chart Dozen』 (Чартова дюжина) は、ロシアの主要なロック・チャートとして知られ、同じくナッシュ・ラジオが運営する『Nashestvie』は毎年約10万人が訪れるロック・フェスティバルであり、「ロシアのウッドストック」の愛称で知られる。他のメディアとしては、オルタナティブ・ロックやハードコアを専門に扱うテレビ放送局「A-One」がある。A-Oneは、アマトリー、トラクター・ボウリング、スロットといったバンドのプロモーションを手掛けており、これら多くに「ロシア・オルタナティブ音楽賞」を授与している。その他の放送局に、ロシアや西洋の現代のポップやロックを放送する「ラジオ・マキシマム」がある。 その他の音楽スタイルでは、フォーク・ロック(代表的アーティストに、Melnitsa)、トリップ・ホップ(リンダ)、レゲエ(ジャー・ディヴィジョン)がある。ヒップホップ/ラップでは、バッドバランス、Kasta、Ligalize、Mnogotochieらが有名である。ラップコアと呼ばれる実験的な音楽シーンも、ドルフィン、Kirpichiを先導に出現している。 ロシア独特の音楽ジャンルも生まれた。犯罪者の歌、バルド、ロマンス音楽を混合させた「ロシアン・シャンソン」と呼ばれるジャンルであり、この新しい音楽のプロモーションを主に手がけたのがラジオ・シャンソンだったことからこの名で呼ばれる。ロシアン・シャンソンの主要アーティストに、Mikhail Krug、Mikhail Shufutinsky、アレクサンダー・ローゼンバウムらがいる。日常的な生活と社会についての歌詞を有し、しばしば犯罪地下社会をロマンティックなものとして扱うロシアン・シャンソンは、下流社会階級の成人男性を中心に人気を呼んでいる。 音楽産業が隆盛する現代ロシアであるが、電子音楽に関しては、他のジャンルに比べて発展が遅れている。これは主にプロモーションの欠如に起因するものである。一部のインディペンデント、アンダーグラウンドな場では、IDM、ダウンテンポ、ハウス、トランス、ダーク・サイトランス(トラッカー・ミュージックを含む)などを演奏したり、インターネット・ラジオを通じて自分達の音楽を放送するといった活動が行われている。このようなアーティストの例としては、パラセンス、ファンガス・ファンク、キンザザ、レスニコフ-16、Yolochnye、Messer Für Frau Müllerらがいる。中には数少ないもののメインストリーム・メディアへの進出に成功したアーティストも存在し、ソビエト時代の映画サウンドトラックをダンス・リミックスに取り込んだことで知られるPPKが代表的である。 今日のロシアにおけるクラシック音楽やコンサートホール音楽は、ロシア国内における商業的ポピュラー音楽の台頭や、ソビエト連邦崩壊後にそれらのプロモーションの担い手がいなくなったことなどを原因として、影に隠れてしまっているのが現状である。しかし数多くの作曲家が1950年代以降に生まれ、いくらかのインパクトを社会に与えている。著名な例にレオニード・デシャトニコフがおり、彼はボリショイ劇場が委嘱した新作オペラ(『ローゼンタールの子どもたち』)を作曲した数十年で初めての作曲家であり、彼の音楽はギドン・クレーメルやロマン・ミンツといった音楽家に擁護されている。また、グバイドゥーリナは、引き続き作曲活動によりロシア国外では高い評価を受け続けており、近年ではヴァイオリニストのアンネ=ゾフィー・ムターに献呈した『今この時の中で』(2007年)を作曲した。 2000年代前半、ロシアではミュージカルが流行した。当時、『ノートルダム・ド・パリ』、『ノルド=オスト』、『ロミオとジュリエット』、『ウィ・ウィル・ロック・ユー』はモスクワ市内の劇場で繰り返し上演された。しかし、この流行は2002年のモスクワ劇場占拠事件によって終焉してしまう。ロシアにミュージカル人気が再び訪れたのは、2000年代も終盤になってからだった。
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