18世紀初頭日本における地誌編纂の思想とは? わかりやすく解説

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18世紀初頭日本における地誌編纂の思想

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/04 16:55 UTC 版)

五畿内志」の記事における「18世紀初頭日本における地誌編纂の思想」の解説

こうした背景のもとで、17世紀末から18世紀初にかけて地誌編纂思想いかなる展開を示したのか、2人儒学者著作通して見ることができる。 儒学者太宰春台は、享保14年1729年)の『経済録』巻四「地理」の中で「地理ヲ知ルハ天下ヲ治ル本也」と記して地誌地図統治に対してもつ重要性強調した。春台はさらに『大明一統志』をはじめとして中国では地誌編纂が行届いていることを賛嘆する一方で古風土記散逸以後地誌編纂不在ある日本の状況を嘆く。かかる状況のゆえに、江戸幕府開かれてから100年閲する今でも国境論争がしばしば起きているばかりか裁許難し現状指摘し地誌板行して流布させることを提案する。そして、元禄国絵図非公開となったことに触れつつ、地誌流布すれば裁許容易になるとし、「地志ハ天下ヲ治ル道具ニ非ズヤ」と主張した。ここで見られる春台の思想は、日本中国の歴史比較から、日本における地誌編纂欠如問題として摘出し地誌編纂統治必須であるばかりかさらには国家繁栄をももたらすとする点において、近世地誌嚆矢たる『会津風土記』(寛文6年1666年〉)において確立した思想踏襲されている。さらに注目すべきは、地誌編纂国境裁許との関係において、国絵図対比されつつ主張されている点である。春台が念頭においていた元禄国絵図は「公儀権力編成原理である国郡全国レベル一貫させたものと評価されていることを考えるならば、春台の主張は、地誌政治的機能への期待板行による普及の提唱である。 一方谷泰山は自著泰山集』の一節で、古風土記散逸をむしろ「神慮」と評したというのも、清が明を滅亡させた際に『大明一統志』を参照したように、地誌は「国之禍」であって、かかる地誌改め編纂することは否定されなければならないというのである泰山主張結論こそ春台と逆であるとはいえ注目すべきは、その主張明清交代という国際環境激変念頭に置いているという点である。前述のように、元禄国絵図作成が、明清交代とそれに伴う徳川綱吉政権国家意識表出としての意味を持つことを考えるならば、17世紀末における対外関係の変化18世紀初頭地誌編纂をめぐる思想議論の背景にあったと言うことができる。 こうした日本地理再認識は、別の形ではあるが、民間においても始まっていた。例えば、「流宣日本図」と通称される『日本海山潮陸図』(元禄4年1691年〉)の著者である絵師石川流宣は、他にも地理書出版して好評得ていた。また、日本全土網羅した最も初期の民撰地理書の『日本鹿子』(元禄4年1691年〉)には、流宣の『本朝通鑑綱目』の項目が採り入れられている。こうした日本全土網羅するという体裁地理書事例は他にも見られ17世紀以降には、民間においても「日本」という枠組み意識する地理再認識広がっていたと考えられている。同時期の畿内でも、民撰地誌刊行活発に行われていたが、それらの地誌令制国国郡単位として編纂されており、国郡制に即したかたちでの地理認識一般化したことを示しており、こうした地理認識への関心の上昇と軌を一にするように、知識人の間でも古風土記対す関心高まっていた。『五畿内志編纂企画した関祖衡もまた、そうした研究携わった一人であり、18世紀初頭多数出現した近世偽作古風土記真贋判定論争加わっていた。こうした点から言えば、『五畿内志編纂前提となる18世紀初頭における地誌編纂思想は、17世紀以来日本地理対す再認識踏まえたのだったのである

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