騒音規制
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「日本におけるオートバイ」の記事における「騒音規制」の解説
日本では騒音規制法、道路運送車両法の保安基準によってオートバイの騒音が規制されている。具体的な数値に基づく規制が行われたのは1971年からで、欧州の規制値を参考に軽二輪(126~250cc)の定常騒音が74db、加速騒音が84db。小型二輪(251cc~)の加速騒音は軽二輪と同等で、加速騒音は86dbとなった。この値は1970年時点で販売されていたオートバイでは、大半がクリアできない基準であり、マフラーの吸音材の量を増やすなどして対応が行われた。 その後も、基準は段階的に厳しく、測定方法もシビアなものになっていった。現時点では具体的な許容限度や測定方法は環境省や国土交通省からの告示によって示されている。一つは国土交通省による型式認定を受けて発売される新車に適用される「自動車騒音の大きさの許容限度」(平成28年3月18日 環境庁告示第27号)で、規制の施行年度から「平成28年騒音規制」などと呼ばれており、もう一つは使用過程車(購入後の車両)に適用される「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示の一部を改正する告示」(平成20年12月26日 国土交通省告示第1532号)によるもので、平成22年度4月以降に製造される車両に適用されることから「平成22年騒音規制」(以下、平成22年規制)などと呼ばれる。 日本のオートバイにおける騒音規制による数値は世界一厳しいものである。従前の規制であり平成12年2月21日に環境庁より告示されていた「平成10年規制」「平成13年規制」(以下、平成10・13年規制)においては、試験方法の違いから一概に比較することはできないが、具体的に新車の加速騒音規制値を欧州と比較すると原付一種で4デシベル、自動二輪で4 - 7デシベル厳しく、このことから国産車の国内販売すら妨げられ、国外でしか販売されない車両が多く存在した。 ただ平成10・13年規制においては輸入車および使用過程車は加速騒音規制値などが適用除外となっていたため、改造マフラーなどによる騒音問題の観点から、これらの車両にも平成10・13年規制同様の数値を全面適用させようとする動きがあったが、輸入車種の減少を懸念したライダー及び二輪業界から反論があったため、輸入車と使用過程車の規制値は欧州基準が準用され、またマフラーを確認なしに新規装着することが不可となるかたちで決着し、2010年4月より施行されたのが平成22年規制である。 平成22年規制では加速騒音規制値の上限が82dB(原動機付自転車は79dB)に設定され、マフラーを交換する場合は基準を満たしているか確認を受けることになる。なおマフラーについては性能確認や欧州基準適合などのマークがあれば基準を満たした扱いを受けるが、マークがないものについても公的機関で構造確認と共に騒音検査を受け加速騒音規制の基準を満たしていれば使用できる。ただしこの規制の強化にあたり、日本国外のメーカーから車両を輸入する正規ディーラーが、最大出力を減少させた車両や、ロングマフラー化した車両を『日本仕様』として発売するケースが増えることになった。 平成22年規制に至るまでに行われた実証実験の中で、平成10・13年規制における加速騒音の規制値そのものが厳しいものであることが確認されており、これ以上の騒音対策が物理的に難しいことに加え、日本の型式認定を受ける新車にのみ騒音規制に対応させることが国内販売におけるコスト増加の原因になることから、騒音規制も排出ガス規制同様に国際基準への移行を求める声が日本国内のメーカーから高まった。これらの声を受け、環境省の諮問機関で審議が行われた結果、オートバイの加速騒音規制については国際連合欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラムの ECE R41-04 を準拠とした規制値と騒音測定方法に変更されることになり、2013年1月に関係法令の改正により施行され、2014年より発売となる型式認定の新車から平成26年規制として適用されている。 平成26年規制の加速騒音については排気量ではなくパワーマスレシオ(Power to Mass Ratio 以下PMR)を算出した数値によって規制値が分けられることになり、PMRが50を越える高出力車両については広範囲の速度で騒音を測定する「追加騒音規定」が導入された。これにより欧州仕様が発売されている日本メーカーの日本国外専用車両は日本でも発売しやすくなり、規制の範囲内でより適正なエンジン出力のセッティングも行えるようになった。ただし第一種原動機付自転車の一部は対象外となっている。なお、この規制は型式認定車両だけでなく非型式指定車(並行輸入車)などにも適用され、それらの車両は2017年から適用されている。 2016年10月1日からは平成28年騒音規制が適用され、近接騒音の規制についても欧州の ECE R41-04 を準拠とすることになり、それまで排気量クラスごとに騒音数値の上限が設定されていた「絶対値」規制から、各車種ごとに数値を設定する「相対値」規制に変更され、これにより型式認定申請時または初回の車両登録時に近接騒音の測定を行い、以降はその測定値からの著しい増加を認めないことになった。これにより平成28年騒音規制適用車から加速騒音など他の騒音規制の数値に抵触しない範囲まで近接騒音の数値が上げられることになったが、その代わり登録時の数値から騒音を大きくさせないよう求められることになった。 なお輸入車および継続生産車への平成28年騒音規制適用は2021年からとなっている。また改造マフラーなどに適用される平成22年規制は現状のまま維持されている。
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