食品のアク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 04:45 UTC 版)
食品のアク(英語:scum、ドイツ語:Abschaum)は食物に含まれるえぐ味、渋味、苦味など不快で不要とされる成分の総称である。アクの成分には無機質のものと有機物のものとがあり、このうち無機質のものとしてはカリウム、マグネシウム、カルシウムなどがある。また有機物のものとしてはシュウ酸、ポリフェノール、配糖体、サポニンなどがある。 同じ「アク」という言葉を使っても後述するように、植物性食品と食肉や魚介類といった動物性食品のアクは別物で、アクとみなされる成分も食品により様々である。野菜や山菜のアクは、人間の味覚にとって不快だったり、健康に有害だったりする成分である。鍋料理などで問題にされる動物性食品のアクは、血液などに含まれる蛋白質が加熱により固まり、煮汁の表面に茶色や灰色の泡となって浮き出たものである。澄んだ味にするため極力取り除く場合と、コクや複雑な味わいを楽しむため残す場合があり、個人の好みや料理の種類、文化により異なる。 アクを全部取り去ってしまうと風味が損なってしまう場合もある。野菜や山菜のアクも適度な量でありさえすれば食材の個性的な味覚の一部と判断されており、除去しすぎると特有の風味を失うことになり、アク抜きの適度な加減が必要となる。しかし、アルカロイドが問題となる場合や栄養素の吸収を阻害する成分である場合などには十分にアク抜きをすべきということになる。例えば、ホウレンソウなどに含まれているシュウ酸は、苦み、えぐみをもたらす。唾液中のカルシウムイオンと結合しシュウ酸カルシウムとなり、口の粘膜を刺激する。更にカルシウムの吸収を阻害し、さらにシュウ酸カルシウムが体内に蓄積して結石の原因となる。食用油で炒めると油の膜でえぐ味は感じられなくなり、茹でると茹で汁にシュウ酸が溶け出して大部分が除去できる。近年は品種改良により、シュウ酸が少なく生食可能なホウレンソウも栽培されている。 ワラビなどの山菜に含まれるチアミナーゼは味をそこなうだけでなく、ビタミンB1を分解する作用があるため、多く摂取すると脚気を引き起こす。山菜には人間にとって有害なアルカロイド類が含まれ、アク抜きせず食べ過ぎると吐き気を催す。また、植物にとっては重要な栄養物質であるが、人間のような動物には代謝できない亜硝酸塩は体内で発ガン性物質に変化するという研究結果もある。一方、大豆などに含まれるサポニン類は発ガンを抑制する効果があるという報告もあり、全てのアク成分が体に良くないというわけではない。ゴボウなどの不味成分といわれるタンニンに代表されるポリフェノール類(ゴボウを水にさらすと水が赤茶色に変色するのはタンニンの流失による。)も、近年は抗酸化作用が注目されている。
※この「食品のアク」の解説は、「灰汁」の解説の一部です。
「食品のアク」を含む「灰汁」の記事については、「灰汁」の概要を参照ください。
- 食品のアクのページへのリンク