電気モーターを利用した方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/23 12:32 UTC 版)
「鉄道模型」の記事における「電気モーターを利用した方式」の解説
電動模型は、家庭への配電と同時に始まった。当時の電池は高価な割りに性能が低かったからである。交流による家庭への配電が開始される前に一部の地域では直流で配電されていた。 当初採用されていた蒸気機関あるいはゼンマイ式の二線式軌道に集電用の第三軌条を付け加えることにより、電動化が実現された。二線式を採用するには車輪と車軸を絶縁しなければならないので、それまでに売った車両の改造をしなければならなかったが、実物に習い中央の第三軌条から集電すればそれまでの製品との不整合がなくなる。日本では実物に中央三線式の鉄道が存在しなかったため、このタイプの集電方式は玩具的であると嫌われたが、逆に欧米では本物と同じであるとして受け入れられてきた。 当初は直巻電動機を自作し変圧器または抵抗器で制御していた。抵抗器には食塩水を用いた物もあった。小型のモーターが模型用として発売された後は、モーターを納める動力車の大きさが決まってしまう事態が起きた。すなわち模型のサイズの小型化はモーターのサイズの小型化の歴史でもあった。界磁コイルを軸の延長上に移したり、両軸モーターを作り車軸や台車間に納めたり、この時期の工夫は目覚しい。 界磁が電磁石の直巻電動機は、交流でも直流でも回転し、実物同様、機関車、電車の駆動には適する特性を持っていた。起動時に電流の2乗に比例して起動トルクが発生し、回転が上がると同時に電流が減少する。速度に応じて徐々に電圧を上げれば実感的な運転ができるわけである。しかし、進行方向の逆転には界磁の極性を反転させねばならなかった。ライオネル、メルクリンらは、電流を瞬間的に遮断することにより作動する逆転リレーなどを開発し市販した。しかし分岐器を通過する際に誤動作することがあり、モーターの回転による遠心力を用いた誤動作防止装置が一部の愛好者によって開発された。 1930年代になると直流駆動への試みが始まった。一部の地域では直流で配電されていたが、大部分の地域では交流による配電だった。アメリカ合衆国ではモータリゼーションにより自動車用の小型の整流器が民生用として発売されたのを受け、界磁電流をセレン整流器で整流して走行電流の極性を反転して逆行させる工夫がなされた。また電圧は自動車用の12 Vを標準電圧として採用した。 1940年代になると永久磁石を界磁にしたマグネット・モーターが市販されるようになった。これは、小型軽量で消費電力も少なかったが、分巻特性を持ち、与えられた電圧と回転数が正比例する物であった。すると、抵抗による電流制御よりも電子部品による電圧制御によるコントロールが望ましくなる。これはトランジスタ・コントローラの発達を促し、レオスタットを駆逐した。 マグネット・モーターは、停止時に界磁が電機子を吸着して動き難くするコッギング(英語ではteethingと言う)が避けられず、機関車は手で押して動かすことは不可能であった。マグネット・モーターの軸を手で廻すと、あたかもサイコロを転がす如く、特定の位置で引っかかりを感じるが、直巻電動機を採用していたライオネル、メルクリンの機関車は、レールに手で押し付けて押せばモーターが回転する。また、最近ではコッギングがなくスムーズな走行でより大きなトルクが出せるコアレス・モーターやコッギングはあるが、より強いトルクが出せるブラシレスモーターも普及しつつある。 モーターから車輪までの動力伝達にはウォームギヤが多用される。スパーギヤ、ベベルギヤの使用は少ないが、一部高級機種ではウォームギアの1種であるコースティング・ギヤの使用も認められる。それは前者では一段(少ない部品で)で大きなギヤ比を実現でき、また、モーター軸と駆動軸が直交することが省スペース化とモーターの配置上で大変便利だからである。しかし制動装置の無い鉄道模型で使用されるウォームギヤは安全性の観点から逆駆動できない物が多いため、特殊なクラッチを用いて歯車の自動切り離しをする手法も現れた。しかしこの手法は一過性の物で、製品に反映される性格の仕様ではなかった。一方、コースティング・ギヤを使用した機種では逆駆動の問題は解決している。 マグネット・モーターの一種のコアレス・モーターは鉄心を持たないムービング・コイル型モーターで、それをスパーギヤで減速すると押して動く動力車ができる。しかし限られた空間に収められるギヤはギヤ比が1:4程度の物であり、あまりにも牽引力が弱く、最高速が速過ぎる物であった。1984年にコースティング・ギヤが開発され、高効率と静粛性を併せ持つ動力車が実現した。 これらの電動模型は同一線路上では全ての動力車が同一の動きをする。しかし、それでは不満足な愛好者は多重制御方式へと向かい、それはデジタルコマンドコントロールとして実現された。
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