連座制に関する判例
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連座制 〔最高裁昭和37年3月14日判決〕連座制適用による当選無効規定について日本国憲法第13条、日本国憲法第15条及び日本国憲法第31条に違反するという主張について「その犯罪行為は候補者の当選に相当な影響を与えるものと推測され、またその得票も必ずしも選挙人の自由な意思によるものとは言い難い、従ってその当選は公正な選挙の結果によるものとはいえない」とし、連座制適用による当選無効規定について合憲としている。 〔最高裁昭和40年2月26日判決〕連座制適用による当選無効規定について日本国憲法第14条及び日本国憲法第93条に違反するという主張について「選挙運動者の不法な選挙運動を抑止し、公職の選挙が選挙人の自由に表明する意思によって公明かつ適正に行われることを確保するため、きわめて効果的であるのみならず、買収等の悪質な運動方法によって選挙人の投票意思の決定を不純化してかちえた当選のごときは、これを保持させるべきではないことにかんがみれば、決して不合理な制度ではなく、なんら憲法の保障する選挙制度の本旨にもとるところはない」とし、連座制適用による当選無効規定について合憲としている。 〔最高裁平成7年7月18日判決〕連座制適用による立候補禁止規定について日本国憲法第15条、日本国憲法第31条、日本国憲法第93条に違反するという主張について、「民主主義の根幹をなす公職選挙の公明、適正はあくまでも厳粛に保持されなければならないという極めて重要な法益を実現するために定められたものであって、その目的は合理的であり、選挙運動において重要な地位を占めた者が選挙犯罪を犯し刑に処せられたことを理由として、公職の候補者等であった者の立候補の自由を所定の選挙及び期間に限って制限することは、立法目的を達成するために必要かつ合理的なものというべき」として、連座制適用による立候補禁止規定について合憲としている。 総括主宰者 〔最高裁昭和32年10月29日判決〕「文書、演説、ポスター、立看板等による具体的運動を自ら手を下してすることを要せず、これらの運動を全体として総括主宰した者」であれば、「選挙運動を総括主宰した者」と解するに支障はない。 〔最高裁昭和40年2月18日判決〕「選挙運動を総括主宰した者」とは、実質上選挙運動の中心的存在として、選挙運動に関する事務全体を掌握し指揮する立場にあったと解すべきである。 出納責任者 〔最高裁昭和41年6月23日判決〕「出納責任者」とは、公職選挙法180条の規定により出納責任者として選任届出された者をいうのであって、実際に出納責任者として同法に定める職務を行ったか否かには関係ないと解すべきである。 連座訴訟においては、実際に出納責任者が買収等を行ったかを証明する必要は無く、出納責任者が連座制の対象となる罪を犯したものとして刑に処せられたことが証明されれば足りる。 地域主宰者 〔最高裁昭和61年2月24日判決〕「当該地域における選挙運動を主宰した者」とは、立候補届出以後の当該地域における選挙運動を推進するについて、その地域の中心的存在としてこれを掌握指揮する立場にあつた者と解すべきである。また候補者又は総括主宰者が、全区域に共通する選挙運動の推進に関する事項全般にわたり、具体的かつ詳細な指示をしたような場合であっても、当該地域における選挙運動推進の中心的存在として、それらの者の指示を実施するための事務その他当該地域における選挙運動を推進するについての諸般の事務を掌握指揮した者は「当該地域における選挙運動を主宰した者」に該当する。 「地域における選挙運動を主宰すべき者として候補者又は総括主宰者から定められ」とは、公職の候補者の立候補届出により候補者又は総括主宰者としての地位を取得するに至った者から、明示的又は黙示的に当該地域における選挙運動を主宰すべき者として定められたことをいい、立候補届出後においてその旨が明示的に定められた場合はもとより、候補者又は総括主宰者としての地位を取得するに至った者と当該地域における選挙運動を主宰した者との立候補届出前後を通じての言動等に照らし、両者が意を通じ合い、互いにその地位役割を了解し、これに従って行動していたと認められる場合をも含む。 秘書 〔最高裁平成10年11月17日判決〕「秘書」に該当するというためには、単に当該候補者等の政治活動を補佐するというだけでは足りず、その重要部分を補佐しており、かつ、右補佐の対象が選挙運動とは区別される政治活動であることを要すると限定解釈するべきではない。 組織的選挙運動管理者等 〔仙台高裁平成8年7月8日判決〕「組織」とは、「特定の公職の候補者等の当選を得せしめる目的のもとにその選挙運動について指揮、監督、命令系統があり、選挙運動のために相互に役割分担がなされ、公職の候補者等が選挙犯罪を防止するために、相当な注意をすることが可能な統一的人的結合集団、連合集団であること」と解される。 「組織的選挙運動管理者等」とは、「当該選挙運動の計画の立案若しくは調整を行う者又は当該選挙運動に従事する者の指揮若しくは監督を行う者、その他当該選挙運動の管理を行う者」と解される。 「意思を通じて」とは「少なくとも公職の候補者等がある程度具体的に組織体を認識したうえで、当該組織体による選挙運動が行われることをその組織の総括者との間で相互に了解しあっていること」と解される。 〔最高裁判所平成9年3月13日判決〕「組織」とは、規模がある程度大きく、かつ一定の継続性を有するものに限られ、「組織的選挙運動管理者等」も、総括主宰者及び出納責任者に準ずる一定の重要な立場にあって、選挙運動全体の管理に携わる者に限られるというが、そのように限定的に解すべきでなく、また、「意思を通じ」についても、組織の具体的な構成、指揮命令系統、その組織により行われる選挙運動の内容等についてまで、認識、了解することを要するものとは解されない。 〔仙台高裁平成17年4月27日判決〕「組織」とは「特定の公職の侯補者等を当選させる目的をもって、複数の人が役割を分担し、相互の力を利用し合い、協力し合って活動する実態をもった人の集合体及びその連合体」をもって足り、必ずしも指揮命令監督系統等の存在は必要にならないと解される。 「組織的選挙運動管理者等」とは、「①選挙運動組織の一員として選挙運動全体の計画の立案又は調整を行う者を始め、ビラ配り、ポスター貼り、個人演説会、街頭演説等の計画を立てる者、その調整を行う者等で、いわば司令塔の役割を担う者」「②選挙運動組織の一員としてビラ配り、ポスター貼り、個人演説会、街頭演説等への動員、電話作戦等に当たる者の指揮監督をする者等で、いわば前線のリーダーの役割を担う者」「選挙運動組織の一員として、選挙運動の分野を問わず、①②以外の方法により選挙運動の管理を行う者、例えば選挙運動従事者への弁当の手配、車の手配、個人演説会場の確保を取り仕切る等選挙運動の中で後方支援活動の管理を行う者」をいい、候補者等が直轄する選挙対策本部に直接的に関与している必要はない。 「相当の注意」とは、「抽象的には、社会通念上それだけの注意があれば、組織的選挙運動管理者等が買収行為等の選挙犯罪を犯すことはないだろうと期待し得る程度の注意義務」をいい、具体的には「組織的選挙運動管理者等が買収等をしようとしても容易にできないだけの選挙組織上の仕組みを作り、維持することであり、具体的には、組織的選挙運動管理者等に役割ないし権限が過度に集中しないように留意し、選挙資金の管理及び出納が適正明確に行われるように十分に心掛け、その上で対象罰則違反の芽となるような事項についても、この防止を図るために候補者等を中心として常時相互に報告、連絡及び相談し合えるだけの態勢をとっていた場合等」と解される。
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