被害者の人権侵害問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/20 02:04 UTC 版)
「密陽女子中学生集団性暴行事件」の記事における「被害者の人権侵害問題」の解説
蔚山南部警察署が捜査当初から被害者である女子中学生を保護していないことが判明した。被害者は捜査当初の7日午後、警察署の裏庭で加害者家族に囲まれ「このままですむと思うな」「体をお大事に」などと逆恨みで脅迫されていた。警察署では、担当を女性警官にして欲しいとの被害者の要求は無視され、対質調査で男性警官が立ち会う目の前で加害者から暴言を吐かれるなどした。更に警察官が被害者に対して「密陽の恥をさらした」などの暴言を吐いていたことが判明した。 さらに、容疑を確認させることを目的として、加害者である男子高校生を一列に並ばせ、女子中学生と直接向かい合わせて確認させたり、一人一人対面させては「入れたか、入れなかったか」と警察官が被害者の目の前で問いただし、被害者を保護するどころか報復の恐怖と羞恥心を与えていた。 12月13日、国家人権委員会は当事件の調査過程で露呈した警察官の人権侵害行為に対して職権調査を実施することとし、重ねて「性暴力被害者に対する不当な捜査と関連し、これまで29件の陳情があり、捜査機関に重ねて改善を勧告し、これに対する指針もまとめた」と強調している。しかし、「今回の女子中学生集団暴行事件の被害者の捜査をめぐる論争でも分かるように、実際の捜査過程ではまだ改善されていないため、勧告内容の履行状態を点検し、徹底した履行を促すため職権調査を決定した」と付け加えている。大韓民国女性部は記者会見を開き、被害者に対する警察の暴言、被害者保護を疎かにしたという警察の捜査過程など、真相究明することを明らかにした。また、今回の事件を機に人権侵害などの再発防止を各所管に要求し、警察と教育庁に対して性暴行事件処理と性教育など長期的な対策作りをメディアを通じて促した。地元の蔚山地域女性団体も「集団暴行事件特別対策委員会」を構成して蔚山南部警察署に対して抗議訪問し事件の真相究明を徹底的に調査するよう促す計画であった。 同13日に、蔚山南部警察署は被害者を卑下した発言などを認め、警察署長が謝罪した。翌14日には蔚山警察庁が、事件を担当した警察官らが被害者の人権を侵害したかどうかの問題と、十分な保護をしなかったという事実を確認し、警察署長を特命処分とした。これを受けて、填補措置が決定していた担当課長など、捜査責任を持つ幹部全員が問責人事処分(責任を取って辞職)となり、各メディアによる事件報道直後の8日午前5時頃、警察官4人が蔚山市内にあるカラオケボックスで酒を飲みながら、被害者実名を口にして「胸くそ悪い」と言うなど、卑下する発言をしていたという被害者側の主張がほぼ事実であることを確認し、関連の警察官を懲戒委員会で審議することを公表した。また蔚山警察庁は、捜査初期に被害者3人とも性的暴行を受けたと公表したが、確認した結果、妹は顔などを殴られただけで、性的暴行は受けていないと訂正し、全面的に再調査する意向を示した。これに続きハンナラ党とヨルリン・ウリ党は、相次いで真相調査団を蔚山に派遣して捜査活動を行った。 同13日、蔚山地方警察庁と密陽警察署は協力し、インターネット上に流布した被害者の個人情報及び偽の個人情報を流出させたネチズンの捜査に着手したと公表した。インターネット上の騒ぎは大きく、自分の写真が掲載されて被害に遭っているなどという通報が相次ぎ、写真を掲載した者または偽の写真を流布した者を厳重処罰する方針を示した。 12月16日、最高検察庁は蔚山地検に、蔚山南部警察署における人権侵害問題の調査を指示し、蔚山地検は特別捜査チームを結成して当事件を担当することになった。チーム長は「差別を前提とした調査ではなかったにしても、確認はしなければならないだろう」とし、警察官の人権侵害に関する調査は避けられないことを公表した。 こうしてうやむやになった人権侵害について、被害者の家族が人権侵害を主張して訴訟を起こし、裁判所は警察が被害者の住所、家族、学校など個人情報を流布させた違法行為について損害賠償の支払いを命じた。しかし、捜査過程における人権侵害については違法と見なす尺度が確定されず認められなかった。
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