術後の障害とは? わかりやすく解説

術後の障害

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 06:11 UTC 版)

胃切除術」の記事における「術後の障害」の解説

胃の機能失われることにより起こるさまざまな障害胃切除症候群として知られている。体調変化劇的で、驚く患者少なくない。これには単純に胃の大きさ小さくなる(「小胃症状」と呼ぶ)こととそれに伴う機能低下のみならず迷走神経切除内分泌機能低下による消化管の協調不全といった総合的な問題介在していると考えられている。さらに切除後の再建法式による影響報告されている。ビルロート II法、ルー・ワイ法では食物十二指腸通過せず、正常の通過経路とは異なってしまう。このため特に消化管ホルモン分泌調節異常をきたすという考え方である。 消化、吸収不良 胃酸消化酵素分泌減少消化機能低下よる。胃酸消化液としてのみならず、消化酵素活性化にも関与しているためである。また、手術による迷走神経切除原因となり消化管運動低下したり、消化管ホルモン分泌変化することも要因である。 ビタミンB6欠乏ナイアシン欠乏三大栄養素糖質蛋白質脂質)のうち、とくに脂肪吸収障害起こりやすい。再建方式で見るとビルロート II法で高率である。 さらに、消化不十分なままの食物小腸流れ込む下痢引き起こすダンピング症候群 (dumping syndrome) 食物が胃を経過せず急速に小腸送り込まれることが原因である。早期ダンピング症候群後期ダンピング症候群分類される早期ダンピング症候群では通常よりも濃い食物小腸流れ込み血糖急速な上昇引き起こす症状動悸立ちくらみ、めまい、悪心などである。後期ダンピング症候群は、急峻高血糖症(oxyhyperglycemi)に対しインスリン過剰に分泌されることが原因で、低血糖引き起こす症状発汗疲労感立ちくらみ、めまいなどである。90分ほどかけてゆっくりと食事をしたり、食事少量ずつ回数一日5回程度増やすことで改善できることもある。また、飴やチョコレートといった甘い物を持ち歩き低血糖症状が出た時に食べればよい。 後期ダンピング症候群胃の部分切除より全摘出のほうが発生率高くビルロート I法よりII法が、空腸間置法よりルー・ワイ法が発生率が高い。 逆流性食道炎 噴門機能低下することで胃液食道逆流し炎症引き起こす。胃を全摘出した場合胃液逆流はないが胆汁膵液逆流問題となる。 貧血 ビタミンB12吸収必要な内因子胃の壁細胞から分泌されている。胃を切除する内因子分泌減少するためビタミンB12吸収減少しその結果巨赤芽球性貧血引き起こす吸収には胃酸によるイオン化が必要であるが、胃酸分泌減少する吸収不足になり鉄欠乏性貧血生じる。 予防的にビタミンB12注射鉄剤経口投与が行われる。 ウェルニッケ脳症 ビタミンB6吸収障害 ペラグラ ナイアシン吸収障害 骨障害 カルシウム吸収障害起き、それを補うために骨からカルシウム溶け出す。そのため骨塩量低下をきたし骨粗鬆症につながる。カルシウム吸収は主に十二指腸上部空腸行われるため、ビルロート II法、ルーワイ法で骨障害起こりやすいと考えられる相反する報告見られる輸入脚症候群 ビルロート II法で手術行ったときに持ち上げた十二指腸部分輸入脚と呼ぶが、この部分は盲端となり食物流れなくなってしまう。するとここに溜まった胆汁逆流し嘔吐引き起こしたり、輸入脚の中で腸内細菌増えすぎて吸収前の栄養素消費した胆汁分解し栄養素吸収阻害する輸入脚症候群解消するために輸入脚と空腸側々吻合することをBraun吻合と呼ぶ。 胆石症 迷走神経切除することにより胆嚢運動低下し胆石生じことがあるので予防的に胆嚢摘出することがある残胃胃炎・残胃癌 残胃(切除しなかった部分の胃)に炎症生じてくるものである胃の粘膜萎縮したり(萎縮性胃炎)、粘膜組織腸のもののよう変化(=腸上皮化生)することが多い。時期手術後2 - 3週間で既に生じ始め術後2年頃でも生じることもある。原因として胆汁膵液を含む十二指腸液の胃への逆流有力視されている。ビルロート II法で多い。残胃胃炎注目されるのは萎縮性胃炎腸上皮化生癌の発生母地となると考えられいるからである。正常な胃よりも胃切除後の胃のほうが胃癌発生率が高いとする報告がある。 これらの障害原因で主に食事中心とした生活習慣変えないといけないこともある。具体例挙げる一回食事量減らし食事回数増やすまた、よく噛んでから飲みむようにする。胃の貯留機能低下するため。また、食物混和助けるためである。 食後すぐに寝転がらないようにする。逆流性食道炎予防になる。 栄養素バランスよく摂取する消化がよく、栄養価の高い食事を摂る消化酵素剤を食前食後分けて飲むと混和促進され吸収よくなる。なお、胃切除後に摂ってはいけない食べ物は特にない。 適度な運動手術後の生活に慣れてきたら少しずつ運動をするとよい。体力がつき、消化器運動活発にする。また、筋肉ブドウ糖貯蔵するのでダンピング症候群低血糖予防になる。骨にも負荷がかかるため骨粗鬆症予防にもなる。 体重減少体重手術前比べ間違いなく減少するといっていい。術後およそ1年から2年で最も減少する体重家庭手軽に量れるためついつい増減が気になってしまうかもしれないが、飲水発汗容易に変動するのであまり神経質になる要はない。また、同じ10kgの減少でも体格によって意味合い異なってくる。他の人と比較する場合ボディマス指数を基に考えるとよい。 また、ビルロート II法で術後障害発生が多いことが知られるにつれ改良法としてルー・ワイ法、空腸間置法が行われるようになった。さらに自動吻合器の改良空腸パウチ法が実用化され小胃症状改善期待される神経機能温存幽門機能温存パウチ作成QOL高め上で重要だとされている。 胃切除後の再建法比較切除範囲幽門胃切除全摘術式ビルロート I法ビルロート II法ルー・ワイ法空腸間置法(空腸パウチ法も含む)ダブルトラクト法手術単純 やや複雑 やや複雑 複雑 複雑 食物の生理的な流れ(特に十二指腸生理的生理的十二指腸通過しない生理的十二指腸通過しない 生理的生理的一部十二指腸通過する 消化管ホルモン分泌良好 低下しやすい 低下しやすい 良好 良好 消化、吸収不良ビルロートII法で多い ルー・ワイ法で多い ダンピング症候群ビルロートII法で多い ルー・ワイ法で多い 貧血ビルロートII法で多い 不明 骨障害ビルロートII法で多い ルー・ワイ法で多い 輸入脚症候群× 発生する 発生する × ×胃癌ビルロートII法で多い 不明

※この「術後の障害」の解説は、「胃切除術」の解説の一部です。
「術後の障害」を含む「胃切除術」の記事については、「胃切除術」の概要を参照ください。

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