等級と国際規格
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 08:45 UTC 版)
サフランには産地による等級のほか、クロシン(色)、ピクロクロシン(風味)ならびにサフラナール(香味・香り)の成分分析検査を受け国際標準化機構のISO 3632 認証を受ける制度があり、2010 – 2011年に規格が強化された。しかしながらパッケージに等級を示さない商品が多く取引され、イギリスの市場に出回るサフランはほぼISO認証を表示していないため、消費者が購入する場合に価格と品質を判断する情報が不足している。 雄蕊以外の植物の部位の含有率、異物の混入(英語)その他の条件はISO 3632認証取得のキーポイントである。規格を決定する国際標準化機構 ISO とは規格及び品質要件について管轄する国家機関の集まりで、ISO 3632 の対象はサフラン限定、規格は III 類 (最下級)、II 類、I 類 (最高級)の3つに分かれ以前は III 類 の下に IV 類 を設けた時期があった。サンプルを提出すると分光測色法を用いてクロシンとピクロクロシンの成分含有率を分析。サフラナールの場合は取り扱いがやや異なり規格別に閾値を設ける代わりに、規定値は20から50の範囲。 ISO の承認検査機関は世界中にあり、分光測色法を用いて報告書を作成する。吸光度はクロシン、ピクロクロシン、サフラナールの単位量あたりの濃度、すなわち色ごとの強さを示す。クロシンの吸光度は通常は80未満(IV 類)から200超(I 類)の範囲。最高品質のサフランとは、もっとも状態のよい花から収穫し選別した雄蕊で赤みがかった栗色、吸光度250超、IV 類 の実に3倍である。市場価格には ISO 認証が直接反映し、サルゴルとクーペはISO 3632 I 類、プシャールとマンチャの品質はおおむね II 類である。市場に出回るサフランの大部分はラベルに ISO 3632 認証や染色能力(クロシン含有量)を示していない。 現実には、ISO 規格の成分分析値を気にかけない生産者、流通業者、消費者は多い。科学分析ではなく、ベテランのワインの鑑定士のように味、香り、乾きすぎていないなど、サフランのサンプルの特徴は経験と知識に基づく判断に任せるべきだと考える人も少なくない。ISO 3632 認証および吸光度の表示があれば、消費者はわざわざブランドの異なるサフランを数種類買い求めて自分で判断するのではなく、一目で品質を確認できる。つきつめると、サフランの種類によって吸光度に大きな差があるという知識を得て、重さと価格ではなく、ISO 3632 認証と価格を比べて品質を見極めることができるのである。 サフランの品質や色と香りは一律ではない。貯蔵期間のほか、収穫物に含まれる赤い雌蕊と黄色に見える花柱の割合に左右される。赤い雌蕊に色と香りが濃縮することから、花柱の割合が多いほど1グラム単位の色と香りは薄い。イラン、スペインとカシミールには独自の等級制度があり、赤と黄色のバランスを目安に呼び名が決まっている。 イラン産等級呼称雄蕊の色特徴最高級 サルゴル 全量が赤色 sargol 上級 プシャル(プシャリ) 赤色に黄色が少量混じる pushal、pushali 中級 束 赤色に黄色の花柱が多く混入。小さな束にまとめて流通 bunch 下級 コンゲ 全量が黄色の花柱。香りはあるといってもかすかで、染色用 konge スペイン産等級呼称雄蕊の色特徴最高級 クーペ 香りと色が最も濃い。イラン産サルゴルに相当 coupé 上級 マンチャ イラン産プシャルに相当 mancha 中級 リオ 以下、等級が下がると香りと色が薄い rio 並 スタンダード 一般用 standard 下級 シエラ sierra ただし「スペイン産マンチャ級」とひとくちに言っても使い方が2種類あり、「一般用」を指す場合と「スペイン国内の特定の産地で取れた最高級」を意味する場合がある。純粋のスペイン国産サフランを「ラ・マンチャ」と呼び、パッケージには EU の原産地名称保護制度 (PDO)認証章を付けている。認証の獲得はスペインの生産者にとって、純粋のラ・マンチャ級のサフランを守ろうとした長年の努力の成果であり、イラン産の輸入品を産地偽装した「スペイン産マンチャ級サフラン」の普及への対抗策である。 収穫量の少ない国や地域では品質の等級を特に定めておらず、どれも同じ等級として流通する場合がある。ヨーロッパとニュージーランドの高級品を育てる生産者は特上品のみ出荷、手間をかけた分の経費を価格に反映させている。
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