発光路の強飯式とは何？わかりやすく解説 Weblio辞書

発光路の強飯式

名称：	発光路の強飯式
ふりがな：	ほっこうじのごうはんしき
種別1：	風俗習慣
保護団体名：	発光路妙見神社青年部
指定年月日：	1996.12.20(平成8.12.20)
都道府県(列記)：	栃木県
市区町村(列記)：	鹿沼市上粕尾字発光路
代表都道府県：	栃木県
備考：	１月３日
解説文：	この行事は、発光路妙見神社の祭り当番の受け渡しの儀式として行われるもので、氏子の扮した山伏と強力【ごうりき】が、新太夫【しんたゆう】・古太夫【ふるたゆう】の新旧の祭り当番をはじめ氏子の人びとに対して高盛飯を強いる行事である。　発光路は、栃木県の北西部、足尾山地の中を流れる粕尾【かすお】川沿いに位置する山村である。この地は古くから日光修験【につこうしゆげん】との関係が強く、横根山・地蔵岳と近接の古峯高原は、春峯修行の重要な巡路であった伝えられており、妙見神社はかつては権現様とも呼ばれ、文禄四年（一五九五）に日光より遷宮されたという伝承も残っている。発光路の強飯式はこうした日光修験の流れをくむもので、日光の輪王寺の強飯式や生岡【いくおか】神社の子供強飯式などと共通する内容をもっている。　行事は、正月三日の妙見神社の祭礼終了後に行われる。行事は地区公民館で行われている。行事に参加できるのは、戦後は地区内の氏子全戸であったが、昭和四十年代の末に神社の青年部が組織され、以後はこの青年部が行事を主催するようになった。現在の青年部は三二歳から四三歳までの男子が構成員となっている。　式は、妙見神社の祭礼の後、当番宿からヨビツカイという子どもたちが各戸を訪れ、当番宿への着座を求める。参加者一同が座に着くと、子どもの相伴で今回の当番である古太夫から次回の当番の新太夫へ神酒が注がれて当渡しが行われ、座に着いた一同がこの酒を分かち飲みすることで新旧当番の引き渡しが承認される。古太夫は烏帽子【えぼし】・直垂【ひたたれ】姿、新太夫は紋付き羽織姿である。　太鼓が三度打ち鳴らされると強飯式が開始され山伏と強力が登場する。太鼓の合図とともに縁先で謡がうたわれ、山伏のみが座敷に入り立ち姿で座に向かって故事来歴を述べる。強力は縁の上で立て膝中腰の姿で控えており、山伏の口上の後に山伏の声を受けて座敷に入る。強力は立て膝のまま座に進み、膝で床を激しく踏みならし、戸障子などを揺り動かしながら入座すると、手に持ったセメボウを声高らかに突き立て、さらに両手で目の上まで押し戴いて、山伏同様に来歴を述べる。　山伏は強力を従えて新太夫へと向かい、酒三三杯・湯五杯と飯七五膳を強いる口上を述べ、新太夫がこの強飯を受けた後、セメボウでその首根を押さえて祝う。座には新太夫のほかに、古太夫・脇太夫・遠客・新客・花婿などと氏子各戸一人が着座している。脇太夫は次の祭り当番、遠客はこの地方の名士などの遠来の客、新客は本戸以外の初めて座に着く者である。山伏と強力は、座に着いた全員に新太夫同様の口上をもって責める。このとき強力は、とくに新客と花婿に対しては、地域の習慣や氏子・村人としての心得などを申し渡し、その他の客に対しては神の名のもとに、それぞれの日常の行跡や態度を評価し感謝したり批判したりする。　一同に飯を強いた後、強力は最後に立ち上がり、謡に合わせて四股を踏みながら、山伏の回りを右回りに三回まわって式を終える。　強飯用の料理はかつては祭りの当番の家で調理されていたが、現在では青年がつくる。　発光路の強飯式は、祭り当番の受け渡し儀式とともに、望ましい村人としての資質を育てようとする性格もうかがわせる行事である。