用語の受容と反発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 06:14 UTC 版)
「分子ガストロノミー」の記事における「用語の受容と反発」の解説
分子ガストロノミーをよく引き合いに出される何人かのシェフや科学者は、一度はこの用語を使ったり、運動を受け入れたりしている。うち何人かは、エルヴェ・ティスと親交があったり直接共同作業を行った者もおり、自身の料理に対する「分子ガストロノミー」の用語の誤用に、一部とはいえ加担したかもしれない。例えば、エルヴェ・ティスとピエール・ガニェールは共同作業をしており、その結果をガニェールのウェブサイトで公開している。同様に レストラン「エル・ブジ」と「ファット・ダック」も、シェフと学術、食品産業が、料理の現代化に向けて継続的に協調するためのEU が助成するプロジェクト、ヨーロッパ研究プロジェクト INICON のパートナーに挙げられている。INICON プロジェクトはエルヴェ・ティスとの共同名義で、分子ガストロノミーのマニュアルを公開しており、ウェブサイトを通じて団体の成果を指す言葉として分子ガストロノミーの用語を頻繁に使っている。 ヘストン・ブルメンタール(英語版)はエルヴェ・ティスと協力関係を持ったことがあり、2001年に英国の新聞紙「ガーディアン」での連載第一回目のレシピ記事にティスが考案した「ショコラ・シャンティ」(チョコレートのホイップドクリーム)のレシピを書いた。2002年には、フランスにあるティスの研究室を訪れたおりに考案した、卵黄の代わりに卵白を使い砂糖は使わない「フォンダン・オ・ショコラ」のレシピを寄稿している。ブルメンタールが彼のレストラン「ファット・ダック」で進められていた研究を説明するのに分子ガストロノミーの用語を使っていたこともあった。さらに、2001年と2004年のエーリチェの国際分子ガストロノミー研究会の参加者でもある。2001年の会議は、現在彼がともに活動している科学者の多くと出会った場でもあった。 著名な調理サイエンスライターのハロルド・マギーは(クルティやティスと並ぶ)エーリチェの分子/物理ガストロノミー国際学会の創設主催者の一人であり、「エルヴェ・ティスと十年来の付き合いだ」という。主催者の立場からは離れたものの、1992年から2004年の全会議に出席した。かつて2004年の KVL 分子ガストロノミー研究会では、分子ガストロノミーを「おいしさの科学的研究」と定義し、大学教育における分子ガストロノミーの注力範囲について提案もしている。マギーの著書、On Food & Cooking(邦題『マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-』)では導入部の2ページ目と3ページ目に分子ガストロノミーについて触れている。 フェラン・アドリアは、ウェブサイトにある elBulli の歴史の2003年の章で公開した、"About Molecular Cuisine(分子料理について)" と題した文書において、2003年までは科学界との関わりは「散発的に起こる」ことだったと述べた。そしてそれが、2003年の共同科学研究にいたるまで「(elBulli の)創作が科学に端を発するものではありえない」根拠だと続ける。会議を通じて、2000年からハロルド・マギーとエルヴェ・ティスを知ってはいたという。2004年のオンラインQ&Aでは自身の仕事と分子ガストロノミーの違いを示した上で、分子ガストロノミー「運動」と彼がとらえたものがどれだけ長らえるだろうかを語った。 分子ガストロノミーを料理のスタイルだとは思っていません。フュージョンで何年も前に起きたのと同じく、あたりまえのことになってきているんです。分子料理などというものはありません。いくらかの科学者が料理界と協調する分子的ムーブメント、分子ガストロノミーがあるのです。明らかに料理に関する動きですが、料理そのものだとは思えません。20年もして振り返れば、概念に比べたらもっといくつもの、新たなテクニックこそが導入されたことに運動の価値を見いだすことでしょう。この動きが長続きしないという人は、なんでしたら電話やテレビやインターネットの例をご覧になればいいでしょう。科学は世界を変えたのです。」- フェラン・アドリア 2004 作る料理を「分子ガストロノミー」と誤った枠に据えられるのが蔓延したことに我慢できなかったためか、2006年には運動との関わりをよく取り上げられる何人かのシェフが、自身らの料理のアプローチはその単語と一線を画すとの共同声明を出した。一方で、他の現代的シェフには分子ガストロノミーを受け入れた者もいる。ニューヨークで "The Experimental Cuisine Collective(実験的料理集団)" として知られる団体が、エルヴェ・ティスを弁士とした月例の研究会を開いており、ティスの業績を資料ページに載せているウェブサイトには街に名だたるシェフがメンバとして名を連ねている。
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