用語、レース上の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 18:22 UTC 版)
「NASCAR」の記事における「用語、レース上の特徴」の解説
コーション クラッシュなどの要因によってレース中のトラック上に危険な状態がある場合、黄色い旗が振られるとともに全区間追い越し禁止となり、ペースカーが導入され、ラップリーダー(その時点で1位の車)を先導する。 他カテゴリではフルコースコーションとも呼ばれるが、NASCARのレギュレーションではロードコースであっても特定区間のみのコーション(ローカルコーション)が存在しないため、単にコーションまたはイエローと呼ばれる。レースがあまりにも単調な場合、観客が落とした紙コップやスナック菓子の袋など些細な物でもコース清掃のためにコーションを発動する。これはリスタートの緊張感を含めたレースに変化を出すためである。逆にトップグループがアンダーグリーンピットし始めた場合では、相当鋭利でタイヤカットするような物が落ちなければ、混乱を避けるためにコーションを出さないという、レースの面白さを重視した出し方を行っている。 コンペディションコーション レースウィーク中に雨などのトラブルにより走行周回が稼げない場合、決勝の序盤20周前後に予めオフィシャルより提示されるコーション。ピットイン自体は任意であるが、タイヤの摩耗などを確認するため4本交換+シャーシーアジャストを行うのが通例。これもレース終盤の接戦を演出するための措置である。 ラッキードッグパス NASCARでは単独走行でタイムを稼ぐのは非常に難しいことから導入された救済措置。フリーパスとも呼ばれる。コーションが入る際、ラップダウン(周回遅れ)の最上位のマシンはリードラップ(トップと同一周回)の最下位へと戻される(ラップダウンの最上位が2周遅れの場合は1周遅れに戻る)。そのためラップリーダーの争いだけでなく、ラッキードッグパスを巡る争い、そしてラッキードッグパスを貰ってからの追い上げという3つの争いが激しくなり、エキサイティングなレース展開を更に盛り上げている。このルールを巧みに利用した例として、2009年第21戦ポコノがある。このレースで、トラブルを抱えたジミー・ジョンソンが3周遅れのほぼ最下位まで落ち込んだが、その後のラッキードッグパスを全て獲得し、最後のリスタートまでにリードラップに復帰し、結果13位に入った。 「ラッキードッグ」の名称はネーミングライツ(命名権)によるもので、かつて春のタラデガの冠スポンサーであったアメリカの家電量販店チェーン、アーロンズ(Aaron's)のマスコットキャラクターの名前である。 リスタート コーション中の作業が終了するとリスタートとなる。スタート/フィニッシュラインの手前に設けられたリスタートゾーンにリーダーが進入すると同時にグリーンフラッグが振られ、レース再開となる。ただし、リーダーがスタート/フィニッシュラインを超える前に前車を追い越したドライバーにはペナルティが課せられる。なお、リスタートゾーンにもネーミングライツが付けられており、2017年シーズンは春のタラデガの冠スポンサーでもあるアメリカの損害保険会社ガイコ(GEICO)が保有している コーション明けのリスタートは「アウトラインにトップと同一周回、インラインに周回遅れのマシン」という整列で行われる(ただし残り周回数が1桁の時には全員順位関係無しに1列で整列)。リスタート直後は混乱からクラッシュ→再度コーションが起きやすい事から、インラインで(見た目上の)トップを押さえたままコーションが発生すれば周回遅れを挽回することができ、逆転のチャンスが生まれることになり、上記のラッキードッグパス同様にエキサイティングなレースを演出している。 2009年第14戦ポコノよりルールが変更になり「アウトラインに奇数順位、インラインに偶数順位、並び順はラップリード車→ラップダウン車へどの周回数でも整列し、1位のドライバーはアウトライン/インラインの選択が可能」というスタイルに変更になった。これにより特にレース終盤での上位によるデッドヒートを演出されるようになった。 ピット関連 コーション中、ピットレーン開放直後の周回はリードラップ(リーダーと同一周回)、1周後にラップダウン(周回遅れ)のマシンが入れるようになるが、レース序盤でのコーションではラップダウンが少なくほぼ全車が入ることになり大混乱をきたす。そのためピットボックスへの入り方などドライバーサイド、ピットクルーの素早さなどクルーサイド両方の腕が要求される。また、コーションが出ないままでのピットイン(アンダーグリーンピット)ではピット作業のミスが大きな痛手となることから、さらにピットワークの重要さが増す。ピット戦略においても全てのタイヤを交換する「4タイヤチェンジ」、左右いずれかの2本を交換する「2タイヤチェンジ」、燃料補給のみ行う「スプラッシュ」など様々な作戦をとることができる。 ウェーブアラウンド 前述のとおり、コーション中のピットインは、まずリードラップが入り、次の周にラップダウンがピットインする。このとき、ラップダウンの車がピットに入らなかった場合、周回遅れにもかかわらず、ペースカーとリーダーの間にいることになる。これらの車をリスタートの1周前にペースカーを追い抜いて隊列の最後尾に誘導する措置をウェーブアラウンドという。これにより、隊列の最後尾にはなるものの、ほぼ1周分の遅れを取り戻すことになるが、ウェーブアラウンドを受けた車は当該コーション中にピットに入ることはできない。 なお、リーダー(先頭車両)がステイアウトした場合はウェーブアラウンドは発動せず、ラップダウン車はリードラップカーの後方へと後退させられる。 グリーン・ホワイト・チェッカー 残り周回数が少ない場合、レースアクシデントによりコーション中にフィニッシュとなるような事態となってもアンダーイエローフィニッシュとはせず「グリーンフラッグでレースリスタート→次の周回でホワイトフラッグが振られファイナルラップへ→チェッカーフラッグでフィニッシュ」となるようレース自体が延長される。最後の最後の差し合いを演出するための措置。2009年までは延長は1度だけであったが、2010年からホワイトフラッグが振られる前に再度コーションになった場合3回まで再延長されることとなった。またキャンピングワールド・トラックシリーズでは3回という制限無しに、ホワイトフラッグが振られるまで再延長される。 NASCARオーバータイム 前述のグリーン・ホワイト・チェッカーをさらに整理し、2016年シーズンより導入された延長ルール。3大シリーズすべてに適用される。 残り2周のリスタート後、アンダーグリーンで先頭車両がオーバータイムラインを通過(クリーンリスタート)すれば、グリーン・ホワイト・チェッカー成立となり、ファイナルラップにホワイトフラッグが振られてレースは残り1周で成立する。ただし、オーバータイムライン通過前にコーションが発生すれば、改めてリスタートが試みられる。回数の制限はない。 グリーン・ホワイト・チェッカーが成立した後にレースアクシデントが起これば、イエローチェッカーもしくはレッドチェッカーでレース終了となる。 オーバータイムラインの位置はトラックによって異なるが、概ねオーバルトラック半周後付近に設定されていた。 2018年からは全トラック一律でスタート/フィニッシュライン上にオーバータイムラインが設定されている。 ビッグ・ワン レース中に発生するクラッシュの中でも、特に多数のマシンが巻き込まれる多重クラッシュを指す名称。この場合クラッシュした複数のマシンによりコースが完全に塞がれてしまうことが多く、コーションではなくレッドフラッグ(レース中断)となることも少なくない。またフィニッシュ間際でビッグ・ワンが発生した場合は、前述のグリーン・ホワイト・チェッカーを適用せず、クラッシュ直後の黄旗提示時点での順位を最終順位とすることがある。 オーナーズチャンピオンシップ NASCAR三大シリーズ戦独自の選手権。モンスターエナジーカップのドライバーは、同じ週に開催される下位のXfinityやトラックシリーズに同時エントリーすることが多く、なかにはカイル・ブッシュの様に同一週の三大シリーズ戦全てで勝ってしまう猛者もいる。そうしたトップドライバーたちの参戦で若手ドライバーの活躍を妨げることがないよう2011年に設定された。車両の持ち主(オーナー)にドライバーと同じだけポイントが入る。この選手権設定と同時に、ドライバーはドライバーズタイトルを争うシリーズを三大シリーズから一つだけしか選べなくなった。
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