用語をめぐる問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/05 07:54 UTC 版)
このようにブレトワルダは明確な王の名は出ていながら、その定義に関しては曖昧なため、歴史家たちが実際とは違った意味をこの称号に含ませる事で語弊が生じている。従って『ブレトワルダ』という語は非常に取り扱いに問題のある言葉である。 しかしながら真相に近いところは異なり、ベーダの「イングランド教会史」を基にアングロサクソン年代記を書いた9世紀のウェセックスの年代記者たちは、自らの王のブリテン島全土の宗主たらんとする目的のために、この語を使ったわけではない。 定義がどうであれ、『ブレトワルダ』という言葉は群雄割拠であったこの時代にもブリテン島という地理概念が人々の心に残っていた証に過ぎず、恐らくはこの語はローマ帝国からの『ブリタンニア』という概念の名残にしか過ぎない。その証拠に七王国時代を通じてコインの刻印、勅書に刻まれる称号は Rex Britanniae(ブリテンの王)であったが、時代が変わりイングランドが統一されかけると Rex Angulsaxonum(アングロサクソンの王)へと変貌している。 時折、『ブレトワルダ』という用語が存在する事により、歴史家たちはブリテン島に覇を唱えた覇王の称号があったのかという幻想に駆られる事がある。この考えは、もしそうならイングランド王朝創設の源流を説明できるという意味で、非常に魅力的なものではあった。 しかしながら20世紀の後半にはこのような見解に果敢に挑む者が現れ、最近の解釈では、ブレトワルダの定義を厳密化する傾向にはない。今ではこの語を、9世紀の年代記の編纂者たちがどのようにそれまでの歴史を解釈し、自らの王をどのように組み込んだかを示す重要な指標としての観点から捉えている。
※この「用語をめぐる問題」の解説は、「ブレトワルダ」の解説の一部です。
「用語をめぐる問題」を含む「ブレトワルダ」の記事については、「ブレトワルダ」の概要を参照ください。
- 用語をめぐる問題のページへのリンク