灯動共用変圧器とは? わかりやすく解説

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変圧器

(灯動共用変圧器 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/19 06:09 UTC 版)

発・変電所の大型変圧器
電柱に取り付けられた変圧器

変圧器(へんあつき、英語: transformer)あるいはトランスとは、電磁誘導を利用して、交流電源電圧を変化させる電力機器電子部品である[1]変成器(へんせいき)の一種。

変圧器を使用すると、電圧だけでなく電流も変化する。変圧器は静的な(可動部がない)機械であり、周波数を変えずに電力をある電気回路から別の電気回路に転送する[2]

交流電圧の変換(変圧)、インピーダンス整合平衡系-不平衡系の変換に利用する。

理論

原理

変圧の基本原理

変圧器は、磁気的に結合した(相互誘導)複数のコイルからなる。コイル内外に磁気回路をともなうものもある。コイルに使用する導線を巻線という。

特に2個のコイルから成るものにおいて、入力側のコイルを一次コイル、出力側のコイルを二次コイルという。一次コイルに交流電流を流し、変動磁場を発生させ、それを相互インダクタンスで結合された二次コイルに伝え、再び電流に変換し、出力する。

変圧器によって電圧を変更することを変圧(へんあつ)といい、電圧を上昇させることを昇圧(しょうあつ)、逆に下降させることを降圧(こうあつ)という。

一次側に入力されるエネルギと二次側から出力されるエネルギーは同じである。そのため、昇圧させれば電流は減る。

変圧器の特有の現象ではないが、エネルギー保存則の影響を受けるため、一次側に入力したエネルギは二次側から出力されるエネルギーと熱、音、漏洩した磁束と等しくなる。そのため実際には変換の際に損失があるため二次側でエネルギーが減少する。

変圧、巻数、変流の関係

一次コイルの電圧V1、巻数N1、電流I1をそれぞれ一次電圧、一次巻数、一次電流という。同様に二次コイルの電圧V2、巻数N2、電流I2をそれぞれ二次電圧、二次巻数、二次電流という。

またそれらの比V1/V2N1/N2I1/I2をそれぞれ変圧比(へんあつひ)、巻数比(まきすうひ)、変流比(へんりゅうひ)という。巻数比は変成比(へんせいひ)とも呼ばれる。

理想的な変圧器では巻数比と変圧比は等しく、さらに変圧比は変流比の逆数と等しい。すなわち、以下が成り立つ:

変圧器の内部

一次回路と二次回路を相互インダクタンスで結合する磁気回路として、通常は鉄心が用いられる。高周波用には鉄心を有しないものもある。

変圧器の鉄心には鉄損が少なく、飽和磁束密度・透磁率の大きい材料が適しており、ケイ素鋼板が多く用いられ、特定の方向に磁化し易い方向性鋼板が採用されることも多い。また、特に損失の低減を図る目的でアモルファス磁性材料が用いられることもある。

渦電流損を低減させるため、表面を絶縁処理した薄い鋼板を積層したものや、帯状に圧延した鋼板を巻いた巻鉄心などがある。


巻線には絶縁被覆を有する軟銅線が用いられる。断面形状は一般的なものでは丸形だが、大型用は導体断面積を大きくできる角形となっている。一般には一次巻線を巻いた上に二次巻線を重ねる積層巻が行われるが、特に、信号用・高周波用変成器のように一次・二次の密な結合が必要な場合は、一次・二次の巻線を1本ずつ交互に配置するバイファイラ巻なども行われる。

また、複数の二次電圧が必要な場合や電圧の調整が必要な場合は、巻線の途中からタップと呼ばれる端子が取り出される。

鉄心と巻線の配置は以下の2種類ある。

内鉄形
  • 鉄心の周りに低圧巻線、その周りに高圧巻線を配置する、同心円配置が多い。
  • 鉄心より巻線が多くなり、銅機械となる。
  • 絶縁のため高電圧に用いられる。
外鉄形
  • 巻線の周りに鉄心を配置したものである。
  • 鉄心の周りに低圧巻線・高圧巻線を交互に配置する、交互配置が多い。
  • 巻線より鉄心が多くなり、鉄機械となる。

絶縁物の種類

  • 油入変圧器 : シリコーン油・鉱油
  • モールド変圧器 : 合成樹脂モールド
  • ガス変圧器 : 六フッ化硫黄 (SF6) ガス

保安装置

変圧器の結線と種類

単相変圧器

単相交流を入出力とするものである。

三相変圧器

三相交流を入出力とするものである。

三相変圧器の結線
結線 線間電圧/相電圧 線電流/相電流 中性点接地 角変位 特徴・用途
Δ - Δ 1 √3倍 不可 低電圧の回路で用いられる。
Y - Y √3倍 1 一次、二次とも可能 鉄芯の磁気飽和による高調波電圧により誘導起電力が歪むため、Y - Y - Δ結線が用いられることが多い。
Y - Y - Δ √3倍 1 一次、二次とも可能 Δ結線の三次巻線に第三調波を流し誘導起電力を正弦波とする。
三次巻線が調相や計測用に用いられることもある。
Y - Δ 一次:√3倍
二次:1
一次:1
二次:√3倍
一次のみ可能 降圧に適しているため受電端に用いられる。
Δ - Y 一次:1
二次:√3倍
一次:√3倍
二次:1
二次のみ可能 昇圧に適しており、二次側の中性点接地が可能なため送電端に用いられる。
V - V 1 √3倍 不可 配電用柱上変圧器など。利用率が小さい。
Δ - Δ結線で1相が故障した場合の応急用にも用いられることがある。

異容量V結線

容量が異なる2台の変圧器をV-V結線し、三相負荷と単相負荷を同時に取り出す変圧器の結線方式。配電用柱上変圧器では、単相(電灯)と三相(動力)の需要家が混在する地点でよく使用される。小容量側の変圧器でV結線の三相負荷の一相へ、大容量側の変圧器でV結線のもう一相と単相負荷を兼用する。前者を専用変圧器、後者を共用相変圧器と呼ぶ。同じ目的に、単相変圧器と三相変圧器を1台にまとめた灯動共用変圧器を使うこともある。

相変換変圧器

三相交流から単相交流に変換する変圧器で、電気鉄道で交流電気車への電力供給や、三相交流電源を用いて単相電気炉や単相電動機を運転する場合などに採用される。

スコット結線変圧器

三相交流から90度の位相差の2組の単相交流を出力するもので、2つの巻線を持つ。

出力電圧を揃えるため、1つの巻線の巻数比をもう一方の巻線の巻数比の

可変単巻変圧器

巻線の一部を一次と二次側とで共用するものである。オートトランス、またはオートトランスフォーマー(en:autotransformer)、オートフォーマーともよばれている。共通部分を分路巻線(ぶんろまきせん)、そうでない部分を直列巻線(ちょくれつまきせん)という。

一次・二次電圧のうち高い方をVH・低い方をVLとした場合、一次・二次巻線を有する通常の変圧器に比べ、単巻変圧器は (VH-VL)/VH倍の容量で足りることとなり、メリットは変圧比 (VH/VL) が1に近いほど顕著となる。

  • 分路巻線に流れる電流は、一次側と二次側の差となるので巻数比が小さいほど細くできる。
  • 分路巻線は漏れ磁束が無く、漏れリアクタンスが小さく、電圧変動率も小さくなる。
  • 入力電圧と出力電圧との差の少ない用途に適する。
  • 一次側と二次側を電気的に絶縁できない。回路構築上、接地極に注意する必要がある。

このような特徴から、単巻変圧器は長距離配電線の電圧降下補償などに用いられている。なお、三相交流の場合、Δ - Δ接続の単巻変圧器は一次・二次間に位相差が生じるので注意が必要である。

可変単巻変圧器

単層絶縁巻線の露出面の一部の絶縁膜を剥がし、可動式摺動子を接触させ、単巻変圧器を可変電圧出力式とした製品があり、日本ではスライダックが古く[注釈 1]から著名な商標であったためその名で呼ばれることも多い[注釈 2]。最近は、重量や価格の点で半導体による電圧調整装置が用いられることも多いが、出力電圧が波形ひずみを殆ど含まないことは、単巻変圧器の大きな特長である。

磁気漏れ変圧器

磁気漏れ変圧器

磁気漏れ変圧器は一次・二次巻線を別々の区画に離して巻き、これに漏れ磁束のための磁気回路を設けたものである。負荷電流が増加しようとすると漏れ磁束の増加で電圧が低下し、負荷が変動しても電流が一定に保たれる。定電流変圧器とも呼ばれる[7]漏れインダクタンス短絡インダクタンス)の値が大きいトランスである。蛍光灯用磁気安定器・ネオン管用変圧器・アーク溶接用変圧器・電子レンジマグネトロン)安定用変圧器などに用いられる。

共振変圧器

テスラコイルの一次巻線側から観測した二次巻線上に発生する共振の様子(多数の共振が存在する)

共振変圧器は磁気漏れ変圧器の一種であり、二次巻線に並列に共振コンデンサを接続するかまたは二次巻線の分布容量によって、共振を起こさせるトランスである。磁気漏れ変圧器の二次側短絡インダクタンスと二次側共振容量とが直列共振回路を形成し、二次側の直列共振周波数(1')で一次側から駆動することにより、一次巻線で発生する磁束の位相と二次巻線で発生する磁束の位相が同期する磁界調相結合が起きて昇圧する。二次巻線の短絡インダクタンスをLscとし、二次側の共振容量をCsとすると、共振周波数ω2は、

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