派生アイデア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/11 05:17 UTC 版)
月面での建造 月は地球に比べ重力が小さく、大気の影響も受けない。しかし、自転速度が遅く、公転と同期しているので、月と地球の引力の中心点(ラグランジュ点)にアンカーを置かなければならない。これは、建設地点・運用が大きく制限されることを意味する。また地表からラグランジュ点までの距離は最も近いL1でも56,000kmであり、地球-静止軌道間の36,000km以上である。 そして、月のような低重力・真空の環境下では、SSTOやマスドライバーなど他の低コストな打ち上げ手段も現実的な選択肢となりえることを考慮しなくてはならない。 火星での建造 アーサー・C・クラークは軌道エレベータを題材にしたSF小説『楽園の泉』において、火星での建設可能性について言及している。ここでは地上駅を赤道直下にある巨峰パヴォニス山に、終端に衛星ダイモスを用いるとしており、月同様に低重力や大気の影響を受けないために地球の1/10ほどのコストで建造できるとしている。また材料についてもダイモスに無尽蔵に存在する炭素を用いて超炭素繊維を現地生産するとしている。ダイモスより内側を回っているもうひとつの衛星フォボスとの衝突回避の手段についても示されている。 むしろ問題は火星に建設する必要性である。これも同作では、火星のテラフォーミングのために地表を温める反射鏡を火星で製造して(既に火星には多くの人々が定住しており、鏡の材料が地上でしか入手できない設定)宇宙に持ち上げるために使用するとされている。 地上からある程度の高さまで、ケーブルを2本ないしそれ以上に分岐させ、複数のアース・ポートを設けるというアイデアも提唱されている。様々な技術的問題点が指摘されたが、地球より重力が弱い月や火星になら建設できるかもしれない。それ以外にも、さまざまなアイデアを追加した変種が提唱されている。 宇宙のネックレス 赤道上に多数の軌道エレベータを建設し、それらを静止軌道よりも少し上の部分で互いにケーブルでつなぎ、力学的に安定させる方法。ケーブルは常に遠心力で円形に広がり各軌道エレベータを左右から引っ張るので、赤道上ならどこでも軌道エレベータを建設できる。1977年にソ連のG・ポリャーコフが提唱した。 スカイフック、テザー衛星 静止軌道よりも低軌道の地球周回軌道を使用するためのアイデア。軌道エレベータを固定せず、重心を中心として回転させる。地球と接地する部分との相対速度が0となるように回転速度を調整することで、地上からの物資や旅客の乗り移りを可能にする。低軌道におくことができるのでサイズが小さくて済み、そのぶん建造コストが安くなる。赤道上でなくても接地できるので自由度が高い。空気抵抗による恒常的な回転速度の低下と、軌道の低下、接地部分が大気に突入したときの断熱圧縮による発熱、衝撃波の発生をどのように防ぐかという問題がある。なお、空力加熱、空気抵抗に関してはテザーをどれだけ長くできるかによる。 詳細は「テザー推進#スカイフック」を参照 極超音速スカイフック 上記のスカイフックを改良したアイデアとして、1993年にロバート・ズブリンが提唱。ケーブルの下端が大気圏の上(高度100 km 付近)にあり、その地上との相対速度が極超音速(マッハ10 - 15)となる構造をしたもの。回転はせず、軌道エレベータの大気圏内部分を取り除いたような構造となる。スカイフックと比べ規模が小さく(静止トランスファ軌道 (GTO) に1.5tの打ち上げ能力を持たせた場合で、質量16.5t)、大気との衝突による問題も軽減されるため、カーボンナノチューブのような新技術を用いずともケブラー繊維などで建設が可能と言われている。ケーブル下端にはロケットやスペースプレーンでアクセスし、ペイロードを積み替える。 ORS(軌道リング) 1982年ポール・バーチは、スカイフックの欠点を受けて、オービタルリング(Orbital Ring Systems、ORS)という概念を発表した。これは、磁性流体などの流体を、地球を一周するチューブのようなものの中に封入して高速で移動させると、張力が発生して物をぶら下げることができるというもの。ここから地上に構造物を下ろすとそれが軌道エレベータになる。この場合、軌道エレベータの全長が、静止軌道を用いた場合よりもはるかに短くて済むという利点もある。 スペース・ファウンテン オービタルリングと同じ原理で、磁性流体が地上と宇宙を往復するようにチューブを配置し、軌道側のステーションは噴水の上に乗ったボールのように磁性流体に支えられて浮かぶ。 詳細は「スペースファウンテン」を参照 ロフストロムループ オービタルリングと似たような構造だが、全長は2000km高度は80kmほどで地球は一周させない。鎖の噴水現象のように循環するエネルギーによって高度を維持する構造になっている。 詳細は「ロフストロムループ」を参照
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