活性の調節
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「サイクリン依存性キナーゼ」の記事における「活性の調節」の解説
CDKのレベルは細胞周期を通じて比較的一定であり、ほとんどの調節は翻訳後の段階で行われる。CDKの構造と機能に関する情報の大部分は、分裂酵母S. pombe(Cdc2)、出芽酵母S. cerevisiae(CDC28)、脊椎動物(CDC2またはCDK2)に基づいている。CDKの調節の4つの主要な機構は、サイクリンの結合、CDK活性化キナーゼ(英語版)(CAK)によるリン酸化、他のキナーゼによる阻害的なリン酸化、CDK阻害因子(英語版)(CKI)の結合である。
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活性の調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/12 17:28 UTC 版)
c-Rafの活性の調節は複雑である。c-RafはERK1/2経路の「ゲートキーパー」としての役割を持ち、その活性化は多数の阻害機構によって阻止され、通常は一段階で活性化されることはない。最も重要な調節機構は、N末端の自己阻害ブロックとキナーゼドメインとの直接的な物理的相互作用である。その結果、触媒部位が閉じられ、キナーゼ活性は完全に停止する。この「閉じた」状態は、Rafの自己阻害ドメインがキナーゼドメインと競合するパートナー(最も重要なものはGTP結合型のRas)と結合したときにのみ解除される。活性化された低分子量Gタンパク質はc-Rafの分子内相互作用を解除し、その結果としてc-Rafにはコンフォメーション変化が起こり、キナーゼの活性化と基質の結合に必要な「開いた」状態となる。 14-3-3タンパク質も自己阻害に寄与する。14-3-3は常に二量体を形成していることが知られており、二量体には2つの結合部位が存在する。二量体は「手錠」のように機能し、結合パートナーを一定の距離と配向に固定する。c-Rafの2つの14-3-3結合モチーフが正確に配置され、そこへ1つの14-3-3タンパク質二量体(14-3-3ζ(英語版)など)が結合した場合、c-Rafは自己阻害を促進し、自己阻害ドメインと触媒ドメインの解離を許容しないコンフォメーションへと固定される。このc-Rafの固定(他のRafやKSRでも起こる)は、14-3-3結合モチーフのリン酸化によって制御されている。リン酸化されていない14-3-3結合モチーフにはパートナーは結合せず、他のプロテインキナーゼによって保存されたセリン(Ser259とSer621)がリン酸化されている必要がある。このイベントへの関与が示唆されている最も重要なキナーゼはTAK1(英語版)(TGF-β activated kinase 1)であり、リン酸基の除去を行う酵素はプロテインホスファターゼ1とプロテインホスファターゼ2A複合体である。 Rafへの14-3-3の結合は必ずしも阻害的に働くわけではないことには注意が必要である。いったんRafが開いた構造となって二量体化すると、14-3-3は2つのキナーゼの間を橋渡しするようにトランスに結合し、二量体を離すためではなく、結合を強化するための「手錠」として機能する。c-Rafと14-3-3の結合にはさらに他の様式も存在するが、それらの役割はあまり解明されていない。 二量体化もc-Rafの活性の調節に重要な機構であり、Rafの活性化ループのリン酸化に必要である。通常は、「開いた」構造のキナーゼドメインのみが二量体化を行う。c-Rafのホモ二量体も他の因子とのヘテロ二量体も同様な振る舞いを示す。 c-Rafが十分な活性を持ち、活性化状態が安定化されるためには、さらにc-Rafの活性化ループのリン酸化が必要である。現在のところ、この役割を果たすことが知られている唯一のキナーゼはRafファミリーキナーゼ自身である。しかし、PAK1(英語版)など他の一部のキナーゼもc-Rafのキナーゼドメイン近傍の他の残基をリン酸化することができる。これらの副次的なキナーゼの正確な役割は未知である。c-Rafの場合、活性化ループの「トランスリン酸化」にはc-RafとKSR1の双方が必要である。二量体は背中合わせに結合した構造をしているため、このリン酸化はトランスにのみ起こる(ある二量体が他の二量体のリン酸化行い、4つのメンバーからなる一過的複合体が形成される)。キナーゼドメインの保存されたアルギニン残基とリジン残基との相互作用によって、リン酸化された活性化ループはコンフォメーションのシフトが起こってしっかりとした構造をとるようになり、脱リン酸化が起こるまでキナーゼドメインを完全に活性化された状態に固定する。また、リン酸化された活性化ループによってキナーゼは自己阻害ドメインの存在に対して非感受性となる。KSRの活性化ループにはリン酸化残基が存在しないため、この最終段階は起こらない。いったんc-Rafが完全に活性化されるとそれ以上の活性化は必要なく、活性化されたRafは自身の基質と結合できるようになる。大部分のプロテインキナーゼと同様に、c-Rafは複数の基質を持っている。BAD(英語版)、アデニル酸シクラーゼのいくつか、ミオシン軽鎖ホスファターゼ(英語版)(MYPT)、心筋トロポニンT(英語版)(TnTc)などがc-Rafによって直接リン酸化される。Rbタンパク質やCdc25(英語版)ホスファターゼも基質である可能性が示唆されている。 全てのRaf型酵素の最も重要な標的は、MEK1とMEK2である。c-RafとMEK1の酵素-基質複合体の構造は未解明であるが、KSR2-MEK1複合体の構造から正確なモデリングを行うことが可能である。この複合体では実際には触媒は行われないが、Rafの基質への結合様式はきわめて類似していると考えられている。主要な相互作用面は両者のキナーゼドメインのC末端ローブによってもたらされ、MEK1とMEK2に特有の大きく、ディスオーダーしたプロリンに富むループもRaf(とKSR)の配置に重要な役割を果たす。MEKはRafへの結合に伴って活性化ループの少なくとも2か所がリン酸化され、これによってMEKは活性化される。このキナーゼカスケードの標的はERK1(英語版)とERK2(英語版)であり、MEK1またはMEK2によって選択的に活性化される。ERKは細胞内に無数の基質を持ち、転写因子を活性化するために核内へ移行させることもできる。活性化されたERKは細胞生理の多能的なエフェクターであり、細胞分裂サイクル、細胞移動、アポトーシスの阻害、細胞分化に関与する遺伝子の発現制御に重要な役割を果たす。
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