氷河作用の影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 04:36 UTC 版)
「氷河地形」も参照 最終氷期は8,000年以上前に終わった一方、その影響は今日においても感じることができる。たとえば、カナダ(北極諸島)、グリーンランド、ユーラシア大陸北部および南極大陸では、移動する氷が風景を切り開いた。迷子石、ティル(氷礫土)、ドラムリン(氷堆丘)、エスカー、フィヨルド(峡湾)、ケトル湖、モレーン(氷堆石)、カール(圏谷)、ホルン(氷食尖峰)などは、氷河が残した典型的な特徴である。 氷床は非常に重いので、地球の地殻とマントルを変形させた。氷床が解けた後、氷に覆われていた陸地は隆起(英語版)した。地球のマントルの粘度が高いために、隆起過程を制御するマントルの岩石の流れはかなり遅く、今日の隆起地域の中心付近では約1 cm/年の割合である。 氷河発達期には、海から海水が取水されて[訳語疑問点]高緯度地域で氷を形成することで全球の海水準は約110メートル下がり、大陸棚が露出して大陸間に陸橋が形成され、動物が移動するようになった。氷河後退期には、氷が解けることで水が海へ還り、海水準は上昇した。このプロセスは海岸線や水和系[訳語疑問点]の急変を引き起こし、新たに海中に沈んだ陸地、海上に現れた陸地、湖の塩化を引き起こす氷ダム(英語版)の決壊、新しい氷ダムが作り出す広大な淡水地域、そして地域的な気象パターンの全般的な変化のような、規模は大きいが一時的な結果を生む。また、一時的な氷河の再発達を引き起こすことさえある。この種の急速に変化する陸地、氷、海水、淡水の混沌としたパターンは、現在の海岸線が有史以前の過去数千年間でしか達成[訳語疑問点]されていない最終氷期最盛期の終わり頃の北アメリカ大陸中央部の大部分のほか、バルト地方やスカンディナヴィア地方がもっともなモデルとして提案されている。また、スカンディナビア地方に面する海面上昇の影響により、かつて、現在の北海の大部分の下に存在し、ブリテン諸島とヨーロッパ大陸をつないでいた広大な大陸の平原が海に沈んだ。 地表の氷が解けてできた水の再分配とマントルの岩石の流れは、地球の慣性モーメントの分布の変化だけでなく、重力場をも変化させた。慣性モーメントに対するこれらの変化は、地球の自転の角速度、軸、ぐらつきをもたらしている。 再分配された表面質量はリソスフェアに荷重をかけて屈曲させ、地球内部に応力を加える。氷河の存在は一般的に断層の運動を下方に押しつけた。しかし、氷河後退期には断層は地震を誘発する加速すべりを経験する。氷縁付近で誘発された地震は、今度は氷山からの氷塊の分離を加速させるかもしれず、ハインリッヒ・イベントを説明するかもしれない。より多くの氷塊が氷縁付近で分離されるほど、より多くの大陸プレート内地震が誘発され、この正のフィードバックは氷床の急速な崩壊を説明するかもしれない。 ヨーロッパでは、氷河の侵食作用と、氷河の重さによるアイソスタシーに伴う沈降によりバルト海が形成された。なお、氷河時代以前は、現在のバルト海の辺りは全土が陸地で、降水はエリダヌス川(英語版)によって排水された。
※この「氷河作用の影響」の解説は、「氷河時代」の解説の一部です。
「氷河作用の影響」を含む「氷河時代」の記事については、「氷河時代」の概要を参照ください。
- 氷河作用の影響のページへのリンク